山爺の声
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第四章
池田はあやかしが前に来たところで自分から言った。
「大声の出し合いをしたいか」
「おう、わしはそれが好きでな」
あやかしは皺がれているが大声で応えた。
「人が山に入るとな」
「そうか、では受けて立とう」
池田は山爺に答えた。
「これよりな」
「そうしてくれるか」
「うむ、しかしな」
「しかし?」
「道具を使ってよいか」
こう山爺に言うのだった。
「そうしてよいか」
「道具か」
「そちらもな」
「何かわからぬがよいぞ」
山爺は池田に笑って返した。
「別にな」
「そうか、ならな」
「うむ、それでどういった道具だ。太鼓か何かか」
「これじゃ」
池田は自分の手にある鉄砲を出した、そうして山爺に話した。
「これを使う」
「何じゃそれは」
「鉄砲という、これの音でお主の大声に対したい」
「何か変わったものじゃのう」
山爺は池田が手に持っているそれを見て首を傾げさせた。
「はじめた見たわ」
「本来は相手を撃つものであるがな」
「何っ、弓矢みたいなものか」
「しかしこの度は相手は撃たぬ」
池田はこのことは約束した。
「だからな」
「安心していいか」
「左様、そのことは約束する」
「そうしてか」
「お主と勝負をしたい」
「わかった、ではな」
あやかしもいいとした、こうしてだった。
山爺から大声を出した、その大声を聞いて池田達は思わず耳を塞ぎそうになった、それで供の者達が言った。
「いや、これは」
「凄まじいですな」
「この大声ならです」
「気を失うのも道理ですな」
「そうなることも」
「これでは」
「しかも声の出し合いの勝負であるからな」
池田もその声を聞いてから言う。
「耳を塞ぐことはな」
「負けですからな」
「何よりもその証ですからな」
「塞ぐ訳にはいきませぬな」
「全くじゃ、そこが辛いところじゃ」
実にというのだ。
「どうもな、しかしな」
「それでもですな」
「あれの音程ではないですな」
「それではですな」
「うむ、我等の番であるからな」
それでとだ、池田は言ってだった。
供の者達にこう命じた。
「鉄砲に弾を込めよ」
「わかり申した」
「ではこれよりですな」
「鉄砲を使いますな」
「そうするとしよう」
池田も自分が持っている鉄砲に弾を込めた、そして。
空に向けて鉄砲を放った、それも供の者達もそうした。すると。
鉄砲が放った轟音に山爺は思わず跳び上がった、そして目を剥いて言った。
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