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おっちょこちょいのかよちゃん

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68 消えぬ憂鬱感

 
前書き
《前回》
 かよ子はまる子、たまえ、とし子、笹山、大野、杉山、そして藤木と共に高校の文化祭へと行く。だが、藤木は本心では笹山と二人で行きたかったのだが、大人数で行く事になり、笹山が振り向いてくれず不安になるのだった!! 

 
 森の石松は三保の松原にいた。
(今の所は何者も攻めて来てはおらぬが・・・はて)
 その時、何者かが石松を呼ぶ。
「貴方がイシマツですね」
 石松は西洋人の女性がいるのに気づいた。
「そう言えばお主は・・・」
「私はエレーヌと申します。私は一度でいいからこの極東・ジャポンのシズオカ・シミズに行きたかったのです。ですが、今、別の世に行く事でその夢を叶いに来たのです」
「そうであった。お主は西洋の地にいて、何れはこの日本に行きたがっていたと申したな」
()い」
 フランス語では「はひふへほ」の発音が存在しない。その為、今、エレーヌは「はい」と答えたつもりだが、「は」が「あ」になってしまったのである。
「どうだ、この清水は。素晴らしいであろう」
「ええ。ですが、この地に敵が攻めてくると聞いて()ローレンスから貴方の増援を頼まれました」
「なぬ!?また新たな敵が来たのか!?」
「ええ」
「了解した。我々で探し出して協力を申し出よう!」

 かよ子は校内に入ると、校内は露店があって賑わっていた。
「これが文化祭か、なんか夏祭りみたいだブー」
「ああ、すげえな」
「なんか食べようか?」
 かよ子が尋ねる。
「おいおい、山田。もう食うのか。小杉みてえだな」
「あ、そうだった。私、おっちょこちょいだな・・・」
 確かにまだ10時頃だった。昼食にしてはまだ早すぎた。
「それじゃ、校舎の中の展示とか楽しもうよ」
 かよ子の母が提案する。
「う、うん」
 皆は校内に入る。そこで長山の家族と合流した。
「あ、長山君!!」
「やあ、皆、折角だから一緒に周ろうか」
「ああ、そうだな」

 三河口は料理に回っていた。唐揚げを揚げる。焼き鳥を焼く側も順調き焼けていた。
「ミカワ、そのくらい揚げたなら十分だよ」
 濃藤に言われて三河口は我に返る。
「え?ああ」
 唐揚げは大部揚げられていた。だが、まだ開会から時間も間もない為か買いに来た人もまだおらず、揚がった唐揚げが溜まっていた。中川瞳も労ろうとする。
「三河口君、少し休みなよ」
「うん、そうするよ」
 三河口は料理の手を止めた。
(まあ、まだ昼には早いし、すぐには来ないか・・・)
 そして二人の三年生の女子二名が買いに来た。二人共唐揚げを買ったのだった。そして別のクラスの男子が焼き鳥を買った。
「買ってくれた人がようやく出てきたな」
「でも、まだ校内の生徒だ。沢山の人に来てもらわないとな」
 クラスメイト達の会話の中、三河口は何らかの胸騒ぎを感じ取っていた。
(これは一体、何なのか・・・)

 かよ子達がまず最初に入ったのは美術部の展示がある美術室だった。
「うわあ、いろんな絵があるねえ!アタシもこんな絵描いてみたいなあ~」
 まる子は感激だった。絵画には名画の写し描き、様々な風景の写生のもの、アニメや漫画のキャラクターの写し描きや、オリジナルの絵もあった。
「どれもすげえ描けてるなあ」
「さくらさんならきっと描けるんじゃないかしら?」
「よおし、アタシ、高校生になったらこの美術部に入るよお!」
「ま、まるちゃん、まずは中学を出なくちゃ・・・」
 かよ子は突っ込んだ。
「ああ、そうだったねえ~」
 皆は笑った。そして次の展示へと向かう。次に興味を持ったのは三年生の教室にて展示されている漫画研究会の展示だった。
 展示された漫画を読んでみると、どれも面白い。
「おお、この漫画面白れえな!」
「ああ!」
 大野と杉山は男子生徒が描いたSF短編の漫画に興味を持った。
「ねえ、ねえ、大野くうん、私もこんな漫画面白いと思うわあ」
 冬田が見ていたのは恋愛漫画だった。
「私も大野君とこんな恋出来たらいいわねえ」
「は、はあ・・・」
 大野は反応に困った。その一方で、藤木は笹山が自分に顔を向きもする事なく文化祭を楽しんでいる事に自分が寂しく、そして虚しく感じた。
(ああ、何でこうなんだろ・・・?笹山さんは僕なんかやっぱりどうでもいいのかな・・・?)
 藤木はこの文化祭を憂鬱に思う。もう帰ってしまおうかと思った。
(こうなったら、トイレに行くふりをして、行っちゃおう・・・)
 藤木はそーっとするようにその場を離れる。
「あれ、藤木、どこ行くの?」
 まる子に気付かれた。
「あ、いや、トイレだよ!」
 藤木は誤魔化した。
「あら、場所分かる?」
 かよ子の母が聞いた。
「はい、大丈夫です」
「でも、迷子になったりすると大変だわ。誰かがついていってあげないと」
「い、いえ、大丈夫です!」
 藤木はその場から離れた。しかし、かよ子にはどうも怪しく見えた。
「ちょっと待って、私、追いかける!」
「あ、かよ子!」
「山田あ!!」
 かよ子は藤木を追いかけた。藤木はトイレの方に向かっていない。階段を降りようとしていた。
「藤木君、待ってよ!」
「や、山田、何だよ?」
「トイレってのは嘘でしょ?本当は笹山さんが自分に振り向いてくれなくて寂しくて帰ろうとしてたんでしょ?」
「・・・え、あ、いや、そんな事ないさ!」
「でも、トイレはそっちじゃないよ。向こうだよ」
「え?ああ、ごめん、間違えたよ」
(なんだよ、止めないでくれよ・・・)
 藤木はかよ子がうっとおしく思いながらトイレの方へ向かった。
「山田あ!」
「かよちゃん!」
 皆がかよ子の方へ向かう。
「どうしたんだよ?」
「あ、藤木君がなぜか階段を降りようとしてたからトイレの方を案内してたんだ」
「お、かよちゃんやるねえ」
「う、うん・・・」
(違うな、そうじゃねえ・・・)
 杉山は推測した。かよ子は絶対に藤木が帰ろうとしていたのを止めようとしていた、と。
「山田」
 杉山が聞く。
「え?」
「藤木は、やっぱり笹山が好きなのか?」
「う・・・、実は、そうなんだ・・・」
「なんか、そんな気が俺もしてたよ。あいつ、昨日笹山と話してすげえ嬉しがってたし、今日も俺達との会話が楽しくなさそうで、笹山の方をチラチラ見てたからな」
「杉山君・・・。気づいてたんだ」
「ああ」
「私、ちょっと笹山さんにお願いしてみようかな?」
「何をだよ?」
「もうちょっと藤木君の方に振り向いて欲しいって」
 かよ子は藤木の想い人に話しかけてみる。
「あ、あの、さ、笹山さん・・・」
「え?なあに?」
「もう少し藤木君にも、振り向いて挙げて・・・。藤木君、笹山さんと文化祭に行くのを楽しみにしてたんだよ。でも、なかなか笹山さんに話しかけられなくて寂しく感じてるんだよ」
「でも、藤木君は他にも大野君とか杉山君とか、長山君とかの男子もいるし・・・」
「そういう問題じゃないんだよ。藤木君は笹山さんと本当は一緒に楽しみたいんだよ!だから、もう少し藤木君を気にかけて・・・!!」
「う、うん・・・」
 笹山はなぜかよ子は自分に藤木と深く関わるよう要求するのか、その理由も意図も解らなかった。

 一人の大学生が清水駅を降り、ある高校へと向かった。 
 

 
後書き
次回は・・・
「空回りは続く」
 すみ子達組織「義元」や三河口の叔母とその夫も高校を訪れ、文化祭を楽しむことになる。一方、校内を周っているかよ子達は杉山達がゲームを楽しもうとする。藤木も笹山にいいところを見せようとするのだが・・・。 
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