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陶芸と猫

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第一章

                陶芸と猫
 小柳聖子は二十七歳のOLで独身だ、黒髪を後ろで括っていて細い眉と丸い目に細面の黄色い肌という顔立ちで背は一六三センチですらりとしている、趣味は日課でもあるランニングに陶芸である。特に陶芸は本職とどちらがメインかわからない位だ。
 その彼女がある日会社から帰ってランニングを終えてシャワーを浴びてすっきりしていると実家の母親の沙也加に携帯から言われた。
「あんた猫欲しくない?」
「猫?」
「そう、あんたのアパート猫飼っていいわよね」
「まあね。けれどいきなりどうしたの?」
「お隣の中森さんのお家のメリーちゃんが子猫産んでね」
「それで貰い手探してるの」
「そう、四匹生まれてうちで三匹引き取ったけれど」
 それでもというのだ。
「残り一匹の子はあんたにどうかってね」
「思ってなの」
「声かけたの、あんたが駄目ならうちで引き取るわ」
 その最後の子もというのだ。
「そうするけれど」
「そうなの、私トラ猫が好きだけれど」
 これは阪神ファンだからだ、聖子は子供の頃からの阪神ファンでありそれ猫もトラ猫が好きなのである。
「どうかしら」
「トラ猫よ、茶色でお腹が白くて太ってるわ」
「太ってるの」
「赤ちゃんだけれどね」
 それでもというのだ。
「四匹の中で一番太ってるの」
「そうなのね、じゃね」
「ええ、引き取ってくれるわね」
「トラ猫だっていうし」
 それならというのだ。
「私もいいわ」
「じゃあね」
「引き取らせてもらうわ」
 こう母に答えてだった、聖子はその週の日曜日に隣の県の実家に帰ってそうして母からその猫を引き取った、すると。
 その猫は母の言う通りの外見の雄猫だった、聖子が手を出すと犬の様にお手をしてきた。そのことに強いインパクトを受けて。
 聖子はその猫を気に入って彼を家に連れて行く為に猫用のボックスに入れた、すると娘に自分の遺伝を受け継がせた様な顔で今は黒髪を伸ばしている母がこう言った。
「可愛がってね」
「そうするわね」
「気に入ったみたいだしね」
「トラ猫だしね」
 自分の好きな猫でとだ、娘は母に話した。
「それにね」
「それに?」
「私にお手してくれたし」
「その癖も兄弟皆そうするのよ」
「癖なのね」
「みたいね、兄弟共通の」
「そうなのね、じゃあこの子うちで育てるから」
 娘は母に強い声で約束した。
「大事にね」
「そうしてね、猫というか生きものは幸せを招いてくれるから」
「だから猫ちゃん三匹引き取ったのね」
「もうメアリーいるけれどね」
 庭の方を見た、家の愛犬の雌のコリー犬だ。
「そうしたの」
「もっと幸せになれるから」
「そうしたの、だからあんたもね」
「幸せになのね」
「なりなさいね」
 母として娘に言った、そして娘もその言葉を受けてだった。
 猫を家に連れて行って共に暮らしはじめた、猫は茶色だったのでチャマと名付け首輪に貝殻の形の鈴を付けた。
 チャマは普通にやんちゃで普通によく食べて普通によく寝た、聖子はそのチャマとの生活を楽しんでいるうちに。 
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