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リュカ伝の外伝

作者:あちゃ
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天使とラブソングを……?(第1幕)

 
前書き
サブタイトルを見て貰えば解ると思いますけど、
あの有名映画のオマージュです。
今話はまだサブタイトル以外で連想させる要素はないですけどね。 

 
(サンタローズ)
フレイSIDE

「はぁ~~~……」
「如何したの、お母さん?」
日曜の夕食時……母の深い溜息に、姉が疑問を投げかける。

「う~ん……ちょっと……教会の方が……」
「教会、潰れそうなの?」
父の伝で毎日外国に働きに行っている姉は、この村の現状を知らない。もっとも父親以外の事には興味が無いのかもしれないが。

「王家から補助金が出てるから、潰れるって事は無いけど……」
「この国の王家って事は……ヘンリー様?」
ここはグランバニアではなくラインハットだ……当然だろう。

お父さんから聞いたのだが『村が滅びる原因を作った張本人だから、その負い目で多額の金を出してるんだろ。金で何でも片付くと思うなよ(笑)』と言っていた。
最後の一言がお父さんらしい。

因みにお母さんの悩みは単純だ。
ここ暫く前から教会に来る信者の数が激減してるのだ。
負い目なのか凄く立派な教会なのに、来る信者の数は片手で数えられる程度だ……時にはスライムの手でも数えられる。

「そーなんだぁ。困ったわね……? あれ、困るのコレって? お金の心配は無いのだから別によくない?」
「お金の問題じゃなくて、神様を敬ってない人が多数いる事に憂いを感じてるの!」
因みに神様を敬ってない人間の一人が貴女の娘で私の姉でもある女よ。

「敬うって言っても相手はヒゲメガネのオッサンよ。敬い様が……」
「そんなの直接会った事のある一部の人たちだけしか知らないでしょ! リュー君みたいに神をも凌駕する存在だったら敬わなくても良いけど、普通の人は弱いのよ。心の支えが必要になるの!」

それは解る気がする。
人には何らかの心の支えが必要だ。
自分の力が及ばない事態に心が壊れない様に……

「じゃぁ明日お父さんに相談してみるよ!」
「またそれ……ダメよリュー君に頼っちゃ!」
「何でよぉ~!?」
「だってリュー君は外国の王様なのよ!」

そう……私たちのお父さんはグランバニアの王様なのだ。
そんな外国のトップが、気分次第でラインハットの片田舎とは言え勝手に都市改革を行っては問題だ。内政干渉と言われるだろう。

勿論、両国の仲は良好で、国王同士も親友だから現状で問題だと声を荒げる者は皆無だろうが、未来においては別になる。
両国関係に亀裂が入り、過去の内政干渉を理由に戦争になるかもしれない。

この事は既にマーサ様に相談して結論が出ている。
サンチョさんも言っていたが、下手に相談したらお父さんは絶対に手を出してくるから、相談してもダメなのだ。
その事を天災的ファザコンの姉に懇切丁寧に説明する母は大変そうだ。

お母さんとしては毎週日曜に行われる礼拝だけでもお姉ちゃんに手伝わせたかったのだ。
と言うのも、この女の変態性を知らない村の男共だけでも礼拝に来させたかったから……
因みに、父に会うという目的の為だけに休日もグランバニアに行く姉の変態性は、この村では極少数しか知られてない。無駄な美貌だけが先行している!

さっさとウルフさん辺りと結婚すれば良いのに……

フレイSIDE END



(グランバニア城:外務大臣執務室)
ティミーSIDE

「……って状況なんだって! 何か良い方法は無いかな?」
「良い方法と言われてもねぇ……」
月曜の朝……出仕と同時に相談という愚痴を聞かされる。

この手の問題毎は、やはり父さんに相談するのが一番なのだろうが、内政干渉云々で出来ない。となれば次に頼りになるのはウルフ君だろうが、彼女が彼に相談を持ちかけるなんてあり得ない。と言う訳で消去法で僕に相談(愚痴)してるんだろうけど……

「やっぱりシスター・フレアが言った通り、リュリュが手伝った方が良いんじゃないの?」
「え~~~やだよぉ~~~……せっかくの休みなのに、時間を無駄にしたくない」
何所までも自分の変態的欲望に忠実なんだろう。

「じゃぁ僕には如何する事も……」
「……ちっ、仕えねぇ(小声)」
ウルフ君と口論(一方的)をしてる所為で最近口が悪くなってきた……自分の為に聞こえない振りをする。

「僕には思いつかないけど、君のお姉ちゃんなら悪知恵が働くし、何とかしてくれるんじゃないの?」
「ポピーちゃん? そうか! 他国の王族だから相談しちゃダメだって思っちゃたわ!」
「サンタローズから見たら自国だよ」
「そうだよね~、なんか混乱しちゃうぅ(笑)」

混乱するのも解らなくもないが、何だか不安になっている。
以前はこんな彼女が可愛く感じていたが……
結婚って凄いな。

「じゃぁ私、今日は早退って事で……」
「待ちなさい。一分一秒を争う事柄でもないだろう! 仕事が終わってからにしなさい」
何でこうも自分の欲求に正直なんだ!?

「え~~~~……」
不満の声と共に、頬をプクッと膨らませるリュリュ。
以前は可愛いと思っていたのに、今では心を苛つかせる。何故だろうか?







(ラインハット城:王家プライベートエリア)

「……と言う訳で、如何すれば良いかな?」
「アンタが裸で踊れば客は集まるわ」
心配になったので、僕も一緒にポピーのとこまで来たが、相談を聞いた第一声が凄い。

「な、なによぅ皆して! 私を客寄せパンダにしないでよぉ!」
「だって効果絶大じゃない!」
そうだな……僕も毎週通うな。

「じゃぁポピーちゃんも一緒に踊ってよ!」
「人妻に何させようとしてんのよ!」
「人妻好きだって居るでしょ!」
「そんなふざけた性癖の奴は打ち首獄門よ!」

「おいおい……論点がズレてきてるぞ」
堪らず、この人妻の旦那が話の軌道修正をする。
この人妻の旦那をするのは大変だろうな。

「そうね……ちょっとズレちゃったわね。でもね、私苦手なのよねぇ……」
重労働のツッコミを親友に任せた所為か、ポピーは僕に視線を向けながら何かを訴えようとしてきた。
さて……僕に堪えられるだろうか?

「何が苦手なんだい?」
「母の胎内に居た時に、相方に人助けの精神を全て奪われちゃったの。人を困らせる事なら大得意なのになぁ」

旦那の問いに、人妻好きなら堪らないであろう可愛さで視線をねじ込んでくる。
それに釣られ、この室内の全員の視線が僕に突き刺さる。
絶対僕の所為では無いのに……

「……………」
僕は少しだけ笑みを作り、恭しく皆にお辞儀をしてみせた。
コレでも僕はウルフ君に鍛えられてるのだよ。

「「「ちっ」」」
全員、僕が狼狽えながら言い訳をするのを期待したのだろう。
綺麗にハモって舌打ちをする。

「……冗談は兎も角、我が国の事なのだし真剣に考えようか」
唯一純粋なラインハット人のコリンズが、真面な意見で場を仕切る。
傍から見てるとツッコミ役って重要だね。

「気に入らないわね……」
人を困らせる達人が、何やら不満を言い出した。
「面倒事って意味では、私も気に入らないけど……一体何が?」
その面倒事を我らに持ちかけた張本人が問う。

「こんなに面倒で重要な事に私たちが貴重な時間を費やしてるのに、あの若造がノホホンと参加してない事よ!」
「いや……あの若造はいいよぉ。絶対に協力しないし、逆にムカつく事を言ってくるだろうし」
固有名詞を言わなくても話が通じるって凄いな。

「言うほど時間を費やしてはいないが?」
「量ではなく質の事を言ってるの!」
今日は楽だ。全てコリンズが担ってくれる。

「ムカつく事は全世界が認めてるけど、あの若造は有能よ。どうせ口先だけで嫌味を言ってくる事しか出来ないのだから、存分に利用するべきよ! その方が早く終わりそうだし……」
あの若造と対等に口論できるポピーだから行き着く結論だな……最後に本音が漏れてるが。

「じゃぁここで雁首並べてても仕方ない……あの若造の所に行って相談しようじゃないか。でも相談を切り出すのはポピーに任せたい。我々じゃ太刀打ちできないからね……人を困らせる達人なら人を腹立たせる達人の若造くらい如何(どう)とでもなるだろ?」

「あら、私が達人なら向こうは名人よお兄ちゃま。勝てるか如何(どう)か(笑)」
「力量の差は人妻の魅力で乗り切ってくれ。……あぁ相談を持ちかけるのは明日の終業前にしよう。今から行くと残業してる他の職員達に多大な迷惑がかかるから」

「あら……達人の私からしたら最適なんだけど?」
「訂正しよう……君も名人クラスだ」

ティミーSIDE END



 
 

 
後書き
次回、あの若造登場。
そしてまさかの状況に! 
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