水と油だったのが

「こいつ野良か」
「そうみたいね」
「じゃあ保護しないとね」
「すぐにね」
「ああ、保護してな」
　そしてとだ、ひとみはさらに言った。
「飼い主探さないとな」
「このままだと保健所だし」
「それじゃあね」
「何とかしてあげないとね」
「そういえばな」
　ひとみはこうも言った。
「実家の父ちゃんと母ちゃん犬飼いたいって言ってたな」
「栃木の？」
「ご両親が？」
「そう言ってたな、けれど栃木だからな」　
　その実家はというのだ。
「神戸からだとな」
「遠いわね」
「どうして引き取ってもらうか」
「引き取ってもらうにしても」
「それが問題ね」
「どうしたものかな」
「それなら」
　ここでだ、不意にだった。
　アハトが来てだ、こう言った。
「暫く部で預かって育ててその間にここまで来て引き取ってもらうか実家に帰る時に連れて帰ったらいいわ」
「えっ、先輩」
「そうすればいいから」
　こうひとみに行くだった。
「だから大丈夫よ」
「そうなのかよ」
「連れて帰る時はボックスがあるから」
「ああ、犬用の」
「それがあるから」
　だからだというのだ。
「大丈夫よ」
「そうなんだな」
「問題は貴女の実家に行くまでどう育てるか」
　アハトはさらに言ってきた、クールな口調で。
「そのことがね」
「問題か」
「そう」
　それまでがというのだ。
「むしろ」
「そうなんだな」
「ご飯をあげて」
　そしてというのだ。
「蚤とか病気とか」
「そういうのもか」
「診てもらわないと」
「確か獣医さんってな」
　ひとみは病気の話を聞いて言った。
「高いよな」
「大丈夫」
「大丈夫なのかよ」
「そちらは学園の中の動物園の獣医さんかドリトル先生に診てもらえるから」
「ドリトル先生？大学の」
「そう」
　その人だというのだ。
「その人に診てもらえるから」
「それでか」
「そう、だから」
　それでというのだ。
「お金の心配はいらないから」
「学園の中に動物園とかあってよかったな」
「本当に。じゃあ」
「ああ、こいつはな」
「どちらかで診てもらって」
　動物園の獣医か大学のドリトル先生にというのだ。