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戦国異伝供書

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第百話 両翼を奪いその九

「織田家とはことを構えぬ」
「そうしますか」
「織田家とは」
「その様にしますか」
「山陽と山陰を制すればな」
 その時点でというのだ。
「よいしな」
「九州にも攻め入りませぬし」
「四国もそうしませぬな」
「ならですな」
「東にも進まぬ」
 そちらにもというのだ。
「だから織田家ともじゃ」
「父上、それがしが思いまするに」
 ここで隆元が言ってきた。
「九州の博多は」
「商いが盛んだからであるな」
「手に入れるべきともです」
「いや、あそこを攻めるとな」70
 どうなるかとだ、元就は隆元に答えて話した。
「大友家とことを構える」
「今は大友家の領地なので」
「尼子家を倒しても大友家とことを構えるとな」
「厄介な敵となりますか」
「大友家は九州で最も勢力が強い」
 元就は大友家のこのことを指摘した。
「その大友家と揉めると織田家もどう動く」
「大友家と手を結んで、ですか」
「そして攻めてくる」
 そうしてくるというのだ。
「だからな」
「それで、ですか」
「博多は攻めぬ」
 決してというのだ。
「その様にする」
「そうですか」
「博多は豊かじゃ、しかしその豊かな街を得て大友家と戦い織田家にも攻められるとなると」 
 元就の頭の中には既に天下の地図が浮かんでいた、そこで備前や伯耆から織田家が攻めてきて九州で大友家が攻めてくることを感じて言った。
「当家はどうなる」
「織田家に大友家となりますと」
「敵わぬな」
「流石に」
「だからな」
 それでというのだ。
「博多は本音では欲しいが」
「攻めませぬか」
「そうする」
「左様でありますか」
「うむ、九州には手を出さぬ」
 決して、というのだ。
「その様にする」
「では我等は尼子を滅ぼせば」
「攻めぬ、国をじっくりと治める」
 元春にも答えた。
「その様にする」
「これまでとは違い」
「そうじゃ、自分からは攻めず治めることにな」
「軸を置きますか」
「そう考えておる、だからな」
 それでというのだ。
「お主達も頼むぞ」
「その様に、ですな」
「家をまとめていくのじゃ」
「わかり申した」
「そしてな」
 元就はさらに話した。
「お主達それぞれの奥方は大事にしておるな」
「父上の様にですか」
「そうされているか」
「そのことは」
「忘れるでない、政や戦のことだけでなくな」
 それに加えてというのだ。
「家のこともじゃ」
「忘れずにですな」
「しかとしていき」
「大事にすることですな」
「うむ、妻や子との間がよいものであれば」
 それでというのだ。
「違うからな」
「確かに。父上と母上を見ていますと」
 隆景が言ってきた。 
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