戦国異伝供書
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第九十九話 厳島の合戦その七
陶は中々見付からなかった、それで兵達も焦りだしたがその中で元就のところにある報が来た。その報はというと。
「陶殿の傍の者がか」
「はい、その御仁がです」
桂が元就に言ってきた。
「我等に捕まりまして」
「それでか」
「命を助けて欲しいと」
「最早欲しいのは陶殿の首だけ」
元就は桂に答えた。
「兵は今は捕虜とするがな」
「それでもですな」
「そうじゃ、戦の後は毛利の兵となる」
今は陶家の兵でもというのだ。
「だからな」
「これ以上はですな」
「無駄な殺生はせぬ」
「だからですか」
「その者の命は奪わぬ」
こう言うのだった。
「だから安心せよとな」
「その様にですな」
「その者に告げよ、そしてな」
「さらにですか」
「うむ、それでその者は何と言っておる」
「はい、会われますか」
「わしに合いたいと言っておるか」
元就の眉が動いた、そしてだった。
すぐにだ、こう言った。
「陶殿のことじゃな」
「あの御仁の」
「そう言うからには陶殿はもう腹を切られたな」
「我等の手にかかるよりはですか」
「そうされたか、それでその首のことか」
「そうなのですか」
「わかった、会ってな」
その傍にいた者にというのだ。
「そしてじゃ」
「そのうえで、ですか」
「会ってじゃ」
そしてというのだ。
「その者の話を聞こう」
「それでは」
「わしの前に通せ」
こうしてだった、元就は陶の傍で仕えていたその者と会って話を聞いた、すると元就の察した通りで。
腹を切り首を埋めさせた陶のその首を掘り出させて首実験をした、そしてその首を自ら打ってからこう言った。
「逆臣はこうなるもの」
「ですな、主に謀反を起こして死なせては」
「その果ては碌なものではない」
「こうなりますな」
「左様、覚えておくのじゃ」
息子達にも話した。
「これが逆臣の果てじゃ」
「とくと心に刻みます」
「今その首を見て」
「そのうえで」
「しかとな、だがこれでな」
元就はこうも言った。
「陶家は滅んだ」
「はい、確かに」
「陶殿が討たれました故」
「そうなりました」
「しかも兵がない」
陶家にはというのだ。
「ではな」
「周防と長門は我等のものとなる」
「そうなりますな」
「これより」
「大内殿の仇を取ったと宣言し」
そしてというのだ。
「それでじゃ」
「それで、ですな」
「周防と長門に兵を進める」
「そうしますな」
「そうせよ、あと捕虜にした者達は周防と長門が手に入ればな」
その時にというのだ。
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