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NARUTO 桃風伝小話集

作者:人魚
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その13

 
前書き
護衛任務再びだってばねの中の、再不斬さん戦直前か、一日前くらいの木の葉の里でのお話です。 

 
「あれ?ナルトちゃん?」

畑で野菜の世話をしていた私に、後ろから声がかけられた。

私を『ちゃん』付けで呼ぶのは、いまではたった一人です。
そうじゃなくっても、この声にはとっても聞き覚えがあります。
声の主に思い当たった私は満面の笑みを浮かべて振り返った。

「ヒナタ!」

思わず不思議そうに立ち尽くしてしていたヒナタの所に、収穫していた野菜を放り出して駆け寄った。

ヒナタが私の家に来てくれるなんて、嬉しい。

でも、ちょっと不思議でもあります。
だって、カカシ隊第七班は、昨日、任務で波の国に向けて木の葉の里を出発したのです。

つまり、里人にとって、私はここに居ないはずなんです。
なのにヒナタは私の家にやって来ました。

何でだろう?

疑問に思った私はヒナタに聞いてみた。

「どうしたの、ヒナタ。何か用?」
「何か用…って、どうしてナルトちゃんがここにいるの!?任務で波の国に向かったはずでしょ!?」

私の問いかけに、とてもオロオロとしたヒナタが逆に問いかけて来ました。

「ナルトちゃん、サスケ君にだけ危険な任務に行かせたの!?」

必死な表情で私に問いかけてくるヒナタに、私は微笑みかけました。

「まさか!ちゃんと私も出発したよ?」
「え…?ナルトちゃん、どういう事なのか、良く分からないよ…?サスケ君達と一緒に波の国に出発してて、どうしてナルトちゃんがここにいるの…?」

疑問を通り越して、恐怖に顔を歪めるヒナタに、私は慌てて説明を始めた。

「私、分身なの!一週間以上も波の国にいかなきゃならないでしょ?だから、畑の世話するのに、私が残ったの。混乱させてごめんね、ヒナタ」
「分身…?でも、分身の術は…」

私の説明にヒナタは落ち着きを取り戻したみたいだけれど、まだ怪訝な表情を浮かべていた。

アカデミーの卒業条件の一つである分身の術は、ヒナタが疑問に思った通り、実体はない。
見せ掛けだけの術だ。
だから、分身の術で作った分身では畑の世話は出来ないんです。

…そう言えばヒナタは、私が多重影分身を使えるようになった事は知らないんだっけ。

そして、その応用で、私が影分身の術を使えるようになってる事も知りません。
それを思い出した私は、ヒナタにそっと囁きました。

「ヒナタ、影分身の術って知ってる?」
「う、うん」

ヒナタは私の問いかけに怪訝な表情のまま頷いた。

流石に日向宗家の一員であるヒナタが知らない訳はないでしょう。
すぐにヒナタは私の言いたい事を掴んだようで、驚きの声をあげた。

「え!?じ、じゃあ、もしかしてナルトちゃん、あの術使えるようになったの!?」

忍びは自分の手の内を明かしてはならないのが鉄則ですけど、ヒナタはちょっとだけ特別です。
だから少しだけ教えてあげました。

「うん。秘密だよ?」

驚きで、大きめの声をあげたヒナタに、私は声を潜めて笑いかけました。
声を潜めた私に、はっとしたヒナタが慌てて自分の口元を押さえます。

そんなヒナタが微笑ましくなりながら、私は笑顔になりました。

「それより、ヒナタはどうしてここに来たの?私が居ないこと、知ってるはずなのに」

疑問に思った事を問いかけると、途端にヒナタは慌てたように落ち着きを無くしました。

「あの、それは、えっと…」

もじもじとしながら、はっきりしない態度を続けるヒナタを嫌う人は多い。
私だって、ちょっぴり苛立たない訳じゃない。
でも、ヒナタは、とっても優しい気持ちを持ってる素敵な子だって、私は知っている。

「あのね、ナルトちゃんが波の国に出発したって、わたし、今日聞いて」
「うん」
「それで、その。波の国に行くなんて、一週間以上かかる任務でしょう?」
「うん。多分ね」
「だからね、ナルトちゃんの畑、誰も手入れ出来ないと思って、わたしじゃ役に立たないかも知れないけど、せめて草刈りや水まきくらいなら出来るんじゃないかなって。頼まれてたわけじゃないから、迷惑かもしれないけど……」

ナルトちゃんの変わりに。

そんな副声音が聞こえて来そうなヒナタの理由に、私は胸が熱くなった。
私の為に、何かをしようとしてくれるヒナタに、言い尽くせ無い程の感謝の気持ちが込み上げて来る。

嬉しくて、誇らしくて、黙ってなんていられない!

「ヒナタ大好き!ありがとう!!」
「えっ!?きゃあ!」

思いっきり満面の笑顔で私はヒナタに抱き付いた。

ヒナタは優しい。
私が優しい気持ちを返すと、それ以上の気持ちを私にくれる。
胸が痛くなるくらい、少し怖くなるくらい。

だって、私はまだ、この里に対する復讐を諦めてないのに。

「ナ、ナルトちゃん?」

力一杯ヒナタに抱き付いて動かなくなった私に、ヒナタが気遣いの声をかけてくれる。
ふと頭を過ぎった嫌な考えは追い出して、私はヒナタに笑いかけた。

「ちょうどお昼にしようと思ってた所だったってばね!ヒナタも食べていって?」
「う、うん」

にこにこと笑いかける私に、戸惑っていたヒナタは、漸く笑顔を返してくれた。
ヒナタの笑顔が見れたのが嬉しくて、私は更に笑顔になる。
私が分身なのが惜しいくらい、独り占めにしておきたい出来事です。

うきうきとしながら、私は収穫した野菜を入れた籠を持ち上げました。

この野菜達を使って、美味しい物をヒナタに食べてもらおう。

自然とそう気持ちが固まっていきます。
ヒナタの好きな物と嫌いな物を考えているうちに思いつきました。

収穫してきた籠の中には、結構立派なかぼちゃが一つ。
ヒナタの好物はぜんざいです。
そしてかぼちゃって、甘く煮付けて食べると美味しいですよね。
つまり、甘味に向いている。
作ったことはないので、かなり冒険になるとは思いますけれど。

「ねえ、ヒナタ。かぼちゃでぜんざい作ったら美味しいと思う?」

私の言葉に、ヒナタは雷に打たれたように立ちすくみました。

そして、ビックリするほどの勢いで私に詰め寄ってきました。

「うん!ナルトちゃん!きっと美味しいよ!!かぼちゃのぜんざいって、とってもおいしそうだと思う!!!!」

頬を紅潮させて、きらきらと瞳を輝かせるヒナタはとってもかわいいです。

そして、やっぱりヒナタもそう思うんだ。

自分の思い付きに心が浮き立っていきます。

「じゃあ、作ってみようかな…?」
「本当!?」

私のつぶやきにヒナタが期待の眼差しを向けてきます。
そして私の胸にも、新しい甘い物に対する期待感のようなものが心に浮かんでいきます。
出来上がるだろうかぼちゃぜんざいの味が、口の中に広がります。
白玉粉と小豆もあったはずです。

かぼちゃの風味が残る甘さのとろりとした餡に絡む白玉や、甘く煮付けた小豆の味が口の中に広がり、思わず唾を飲み込みました。

「うちに白玉粉と小豆もあったはずだから、それも入れてみるね」

私の提案を聞いたヒナタが、さらに案を出してきました。

「ね、ねぇ、ナルトちゃん。そこに、生クリームとミントを添えて、シナモンパウダーをかけるとか、どう?」

ヒナタの提案に、今度は私の方が衝撃を受けて立ちすくみました。

かぼちゃプリンに添えられたミントと生クリームは必須です。
彩もさることながら、味的にも。

「ヒナタ天才!それ、きっとおいしいよ!でもさ、ぜんざいは温かくないとおいしくないから、生クリームはきっと溶けちゃうと思うな。あ!そうだ!かぼちゃの餡を作るときに泡立ててない生クリームを混ぜちゃえばいいよ!きっと口当たりが滑らかになると思う!あ、でも、今日、うちに生クリームはないや」

思い付きを口にしながら、思いついた事を試せない事に落胆した私に、ヒナタは提案してきた。

「あ、あのね。ナルトちゃん。それなら、生クリームの代わりに、牛乳だったらどう?きっと、そんなに風味は変わらないと思うの」

ヒナタの言葉に私は天啓を受けたような衝撃を感じました。

そうです。
生クリームは牛乳からできているんです。
牛乳を使った料理に生クリームを代用するのは、コクや風味の上では格上の料理になるのです。
けれど、生クリームのかわりに牛乳を使ったとしても、味的には問題なんかこれっぽっちもありません。

「さっすがヒナタ!それ、いいよ!」

思わず興奮してしまいます。

「そ、そう?」
「うん!そうだよね。かぼちゃのぜんざいって、温かいかぼちゃプリンって考えればいいんだよね!そしたら、ミルクとミントも合うし、シナモンもあうよね。あ!じゃあ、甘く似たリンゴを浮かべるとかはどうかな!?」
「それ、すごく美味しそう!でも、ナルトちゃん。今はまだリンゴの季節じゃないよ?」

ヒナタの疑問に、私はほくほくした笑顔でヒナタに言いました。

「うん!でも、去年作ったリンゴのジャムがちょっと残ってるの。それを今日作ったぜんざいに乗せてみて美味しかったら、今年とれたリンゴを煮てコンポートにしてさ、かぼちゃのぜんざいに添えてみるよ!」

私の言葉にヒナタは表情を輝かせます。

「そうだね!試してみなくちゃわからないもの!美味しい物を作るのには試してみなくちゃ分からないよね!」
「そうだよね!」

意見の一致を見た私達は、ぜんざいにするかぼちゃの餡の甘さはどの程度がよいのか。
加える牛乳の割合やそこにバニラエッセンスを混ぜてみてはどうか。
または、添えるリンゴの甘さはどのくらいがよいのか。
リンゴを煮付ける時、シナモンも加えてしまえば良いのではないのか。
餡やリンゴの煮付けに使う砂糖の種類は、上白糖が良いのか、黒糖がよいのか、はたまた蜂蜜やオリゴ糖が良いのか等々を熱心に語りながら私の家に向かっていきました。 
 

 
後書き
本編はものそい詰まっているのに、こんなほのぼの更新してしまってごめんなさいw
女の子はスイーツが大好きだと思います。
というか、スイーツが嫌いな人ってそんなにいないと思います。
周りの目やイメージとかで忌避してる男の人もいるとは思いますが!
甘すぎる物が嫌いな人も、果物の甘さが嫌いという人はあんまり見かけませんものね!
かくいう私も、○崎や不○家やコー○ー○ーナーのケーキは甘ったるすぎて気持ち悪いと思っても、美味しくないとは思いません。
甘すぎるとは思いますが、美味しくないわけではありません。
食べ終わった後、砂糖の味が強すぎて、ちょっと不満が残るだけですよ。
でも、嫌いではありません。
むしろ好き。

 
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