戦国異伝供書
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第九十八話 三本の矢その八
「そこにじゃ」
「陶殿を誘い込みますか」
「大軍と共にな」
合わせてというのだ。
「そうしてあの島でな」
「倒すのですな」
「そうする、ではその手筈をこれよりはじめる」
息子達だけでなく家臣達にも話した。
「よいな」
「わかり申した」
「それではですな」
「これよりですな」
「用意に入りますな」
「左様、この戦で負ければ後はない」
毛利家がとだ、元就は強い声で話した。
「陶家と尼子家に挟み撃ちにされてじゃ」
「そうしてですな」
「当家は滅びる」
「そうなりますな」
「しかし勝てば周防と長門が手に入り」
そしてというのだ。
「そのうえで石見もさらに手に入れられる」
「だからですな」
「ここは、ですな」
「これまで以上に本腰を入れ」
「そうして用意をしますな」
「その様にする」
元就は告げた、そうしてだった。92
早速厳島において宮尾城を築かせた、だが。
そこで元就は陶家の動きを聞いて言った。
「ふむ、やはりな」
「陶家と尼子家が手を結びましたが」
「父上は落ち着いておられますな」
「宿敵であった両家がそうしても」
「そうしてくると思っておった」
元就は落ち着いた声で息子達に答えた。
「既にな」
「そうなのですか」
「だから落ち着いておられますか」
「両家がそうしても」
「手を結んだ理由はわかっておる」
元就は落ち着いた声のまま答えた、息子達に対するそれはこれ以上はないまでにそうなったものでそのまま息子達に話した。
「当家に対する為じゃ」
「毛利は両家にとって共通の敵」
「だからですな」
「手を結んだのですな」
「一時にしてもな」
それでもというのだ。
「そうしたのじゃ」
「当家にあたる為に」
「うむ」
隆元にも答えた。
「そうじゃ」
「やはりそうですか」
「今尼子家にとって第一の敵は当家じゃ」
「はい、それはです」
「お主もわかるな」
「尼子家は前は備中や美作にも領地を持っていました」
隆元は父に答えた。
「それ等の国は完全に掌握していませんでしたが」
「それでもな」
「はい、それ等の国々に領地を持っていました」
「そうであったが今はじゃ」
「我等が領地にしています」
「新宮党を粛清させて弱体化させてな」
尼子家をそうさせてからのことだった、元就はお家騒動とその粛清を起こさせた尼子家の隙を衝き彼等についた国人達をこちらに引き込んだり攻めたりして領地にしていったのだ。そうして備前から備中、美作、備前を領地にしたのだ。
「そうしたからな」
「当家を恨んでいますな」
「まさに」
その通りだというのだ。
「だからだ」
「それで、ですな」
「今の尼子家にとってはな」
「当家が第一の敵ですな」
「左様じゃ」
まさにというのだ。
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