一人旅の女
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第四章
「夜遅くに女の人が一人で来て」
「泊めてくれとかかな」
「おかしいとね」
「普通はわかるな」
「そもそも女の人の一人旅をね」
「することもな」
このこともというのだ。
「おかしいな」
「まずないわね」
「危なくてな」
「そう考えると」
「夜に一晩泊めてくれなんて言って来る美人さんはな」
「美人だと余計に目立って」
女の一人旅でしかも夜に歩いているなぞというのだ。
「何されるかわからないから」
「全くだな」
「もうね」
「考少し考えただけでおかしいな」
「泊めるなんて」
「あからさまに危ないな」
「本当にね、けれど泊めなければいいから」
それでとだ、美香子は言った。
「今度からもね」
「泊めないということでな」
「ええ、夜に奇麗な人が一晩と言っても」
「それだけで本当に胡散臭いな」
こうした話をしてだった、そのうえで。
二人は晩飯を食べてから一緒に寝た、この日は銭湯にも行かなかった。それで次の日に。
磯部は松村に仕事がはじまる前に昨夜の話をした、松村は彼からその話を聞くと眉を顰めさせて言った。
「本当に出た話ははじめて聞いたな」
「そうでしたか」
「俺もな、けれど泊めなくてよかったな」
「そうですよね」
「泊めていたらな」
その時はどうなっていたかとだ、松村は磯部に話した。
「もうな」
「それで俺は、ですね」
「連れて行かれていたぞ」
「そうでしたね」
「あからさまにおかしいからな」
夜に奇麗な女が一晩泊めてくれと言って来ることはだ。
「だからな」
「それならですね」
「もう最初から泊めないことだ」
「本当にそうしないと駄目ですね」
「ああ、おかしいとわかってることは最初から避けないとな」
それこそというのだ。
「駄目だな」
「本当にそうですね」
「それは何でもだな、じゃあ今日もな」
「一日頑張りますか」
「今日も忙しいぞ」
松村は磯部に笑って話した。
「うちも」
「日本全体がですね」
「だからな、やっていくぞ」
「わかりました、それじゃあ」
「頑張っていこうな」
松村は磯部に笑って話した、そうして二人で朝礼の場所に向かった。その朝礼が終わってから今日の仕事に入って頑張った。高度成長期の千葉県の話である。
一人旅の女 完
2020・2・23
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