ギャルの林檎
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第三章
「小悪魔な感じするな」
「お家は臨済宗よ」
禅宗の一派である。
「キリスト教とは関係ないわよ」
「それでもだよ、まあ皆も忙しい時にお菓子あるといいしな」
それを食べて気分転換になると思ってだ、或人は言ってだった。
二人で林檎だけでなく菓子も買いに行って皆と忙しい時に食べた、そうして舞台の準備をしていった。
だが或人はその中で朋美を見て言った。
「お前林檎買ったけれどな」
「二つね」
「その林檎食わないのかよ」
「林檎って日持ちするでしょ」
朋美は或人に笑って返した。
「そうでしょ」
「ある程度はな」
「そうでしょ、だからね」
それでというのだ。
「今は食べないの」
「そうするのかよ」
「そう、まあ文化祭が終わるまでもちそうだし」
その林檎はというのだ。
「二つ共ね、だからね」
「今は食わないんだな」
「そうするわ」
こう或人に答えた、それもくすりと笑って。
「終わってからね」
「食うのかよ」
「そうするわ」
「本当にお前芝居間違えてるだろ」
或人は自分達のクラスが行うそれのことから言った。
「白雪姫とな」
「最初は勘違いしてたけれどね」
「林檎買おうって言った時だな」
「そうなったけれど」
それでもとだ、朋美はさらに言った。
「まあそれでもね」
「いいのかよ」
「そうでしょ、林檎は美味しいし身体にいいし」
ここでだ、朋美は或人にこんなことも言った。
「知恵も授けてくれるし」
「それ何だよ」
「聖書でしょ」
「ああ、アダムとイブか」
「そう言うでしょ」
「あれな、林檎食って知恵をつけてな」
「人間楽園追い出されたのよね」
この話をするのだった。
「それでね」
「食うと頭よくなるのか」
「そうだしそこからアダムとイブは一緒にずっと夫婦で暮らしたし」
「そう思うと罪深い果物かな」
「蛇、悪魔に唆されたっていうけれど」
朋美は或人にここでこう言った。
「っていうかね」
「っていうかって?」
「そんなの最初から楽園に置く方が悪いでしょ」
こう或人に言うのだった。
「悪魔に見付かって手の届く範囲にそんなの置く方が」
「それ俺も思うけれどな」
「っていうか人間が頭よくなったら駄目なの?」
「それもおかしいよな」
「あたしそれ凄く疑問だけれど」
「それがキリスト教の教えだろ、あほになれとも言うだろ」
「あほになったら駄目でしょ」
「人に合う方、それがあほなんだよ」
或人は朋美に少しむっとした顔になって返した。
「つまりな」
「そうなの」
「ああ、だからな」
それでというのだ。
「あほでもいいだろ、まああほになっても勉強しないとやっぱり駄目だよな」
「岩木っち大学行くつもり?」
「八条大な」
自分達が通っている高校の上の大学にというのだ、同じ学園の大学である。
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