ミンツチカムイ
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第一章
ミンツチカムイ
アイヌの人達に伝わる古い話、ユーカリと言われるものの一つであろうか。
江戸時代アイヌの人達は松前藩を通じて本土と交易を行っていた、その為本土と蝦夷を船が行き来していた。
その中でアイヌの長老の一人、シャクインが港に来た船を見て血相を変えて言った。
「これはまずいぞ」
「どうしたんだ?」
「何があったんだ?」
「船の中に厄介なのがいた」
こうアイヌの者達に言うのだった。
「これがな」
「厄介なもの?」
「それは何だ」
「一体何だ」
「疱瘡神だ」
これが船の中にいたというのだ。
「流行り病をもたらす性質の悪い神様だ」
「悪い神様か」
「カムイの中でもか」
「そんな神様が来たのか」
「ああ、だからな」
それでというのだ。
「これはまずいぞ」
「流行り病をもたらすのか」
「確かにそれはまずいな」
「何とかしないとな」
「ああ、駄目だな」
「だからな」
シャクインはアイヌの者達に言った。
「ここはわし等も対するぞ」
「対するか」
「それで疱瘡神をどうにかするか」
「そうするんだな」
「ああ、疱瘡神をやっつけてな」
そしてというのだ。
「難儀を逃れるぞ」
「そうしないとな」
「流行り病なんて迷惑だ」
「日本からものが来るのはいいが」
「そんなものはいるか」
「流行り病なんてな」
「そうだろ、だからまずは蓬を集めるんだ」
シャクインはアイヌの者達に言った、白い髭は長く濃く神も伸ばしていて入れ墨が入っている肌も皺が多い。
「いいな」
「蓬?」
「蓬か」
「それをか」
「ああ、それを集めてだ」
そしてというのだ。
「人形を作るんだ」
「蓬でか」
「それを作るのか」
「そうするのか」
「ああ、そしてだ」
そのうえでというのだ。
「カムイにお願いをするぞ」
「疱瘡神をやっつけてくれ」
「そうするか」
「ここは」
「そうだ、悪いカムイにはいいカムイだな」
こうもだ、シャクインは話した。
「だからだ」
「よし、毒には毒ともいうな」
「そうも言うしな」
「それでだな」
「ここは」
「そうだ、いいカムイにお願いをするぞ」
こう言ってだ、そのうえでだった。
シャクインは自分が率先して蓬を集めてそうして人形を作っていった、それを見てアイヌの者達もだった。
蓬を集めて人形を作りカムイ達に疱瘡神を倒してくれる様に願った、すると。
人形達は動きだし船から下りて港をから広まろうとしている疱瘡神に襲い掛かった、シャクインとアイヌ達はその光景を見て言った。
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