ヘルメスの知恵
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第三章
「肴の肉も持って来た、パンもな」
「食いものもですか」
「うむ、だからな」
それでというのだ。
「楽しんでくれ」
「そこまで言われるなら」
アルゴスも頷いた、そしてだった。
彼は葡萄酒を飲みパンや肉も楽しんだ、パンや肉があると酒は余計に進んだ。割っていない酒を飲むのは不作法だと思ったが。
喉の渇きと酒の美味さには負けた、そしてだった。
全ての壺の酒を飲み終えたその時には。
アルゴスはすっかり酔い潰れた、ヘルメスはそれを見て。
にやりと笑い正体はイオである牛を連れてその場を去った、そうしてゼウスの前に戻ってこう言った。
「見事です」
「イオを助け出してくれたか」
「この通り」
その牛を指し示して話した。
「無事に」
「それは何よりだ、よくやってくれた」
「実はアルゴスに酒を飲ませました」
「それで酔い潰してか」
「その隙に連れて来ました」
「考えたな」
「はい、ふと閃きまして」
それでというのだ。
「息子のパンがデュオニュソスのところに行くと聞いて」
「酒を使うことをか」
「はい、そしてです」
「アルゴスに飲ませたか」
「それも割っていない酒を」
それをというのだ。
「そうしました」
「割っていない酒は強いからな」
「それをしこたま飲ませました、酒やパンも用意して」
「肴をか」
「そして断ろうとしましたが」
そのアルゴスがというのだ。
「神の贈りものと言って」
「無理にじゃな」
「飲ませました」
「あ奴は真面目であるからな」
「神の言うことには逆らえないので」
「押し通したか」
「そうしました、そしてです」
無事にというのだ。
「助け出せました」
「それは何よりであるな」
「はい、ただもうです」
「二度はであるな」
「使えませぬ」
今回の策はとだ、ヘルメスはゼウスに話した。
「アルゴスも愚かではないので」
「次は断るな」
「はい、ですから」
それでというのだ。
「今度はそうはいきませぬ」
「そうだな」
「ですからどうかです」
「次はだな」
「こうした厄介なことにならぬ様に」
ヘルメスはゼウスに頼み込む様に話した。
「お願いします」
「そう言うか」
「まことに今回はどうしたものかと思いましたので」
まさに館を出るその時までというのだ。
「どうか」
「では要領よくいく」
浮気は止めないというのだ。
「そうする」
「では」
そしてヘルメスも止めなかった、彼も女が好きなのは同じだからだ。
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