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第一章

                特技を見付けて
 久我山真美は黒髪を肩まで伸ばして穏やかな顔立ちである、子供の頃からだった。
 双子の姉成績優秀でスポーツも出来て明るいはっきりした目で奇麗な唇の早希と比べられていた。それは家では特に顕著で。
 父の安吾、黒髪でやや細い目の中年男の彼も母の実咲黒髪を後ろで束ねた中年女の二人はいつも早希ばかり可愛がってだった。
 成績は悪くスポーツも不得意で地味で友達のいない真美は無視していた。
「早希はまた満点か」
「やったわね」
「本当に頑張ってる」
「これは将来有望ね」
 いつも早希を可愛がっていた、だが。
 真美は無視していた、たまにかける言葉も。
「真美は本当に駄目だな」
「取り柄ないのかしらね」
「早希はいいのにな」
「真美はどうでもいい娘ね」
「真美って取り柄あるの?」
 早希もこう言うのだった。
「正直何もないでしょ」
「それは・・・・・・」
「まあ私はこれからどんどん努力してよくなるけれど」
 双子の妹をあからさまに見下して言った。
「あんたはずっとそのままね」
「・・・・・・・・・」
「真美の行ける高校なんてないだろ」
 父は真美をつまらないものを見る目で見て話した。
「どうせ名前が書ければ通る高校位だな」
「そうした学校も県内にあるから」
 母も同じ口調だった。
「だからね」
「高校は行けるか」
「だから問題ないわ」
「高校さえ出ていたらな」
「そうそう、後は何とでもなるわ」
「それよりも早希だな」
 父は母に言った。
「県内トップの公立受けるんだよ」
「昔一中だったね」
「それは凄いな、頑張ってもらおうな」
「受験もね」
「高校から離れるからもう比べられなくていいわね」
 早希はまた真美に言った。
「あんた頭悪いしスポーツ駄目だし友達いないし私とずっと比べられていたでしょ」
「うん・・・・・・」
「その私と別になってよかったでしょ」
 こう言うのだった。
「よかったわね」
「それは」
「よかったわね、まあ高校出ても適当に暮らしなさいね」
 妹をあからさまに馬鹿にしていた、そして実際にだった。
 早希は県内トップの公立高校に進学しそこでも成績優秀だった、だが真美は下から数えた方が早い公立高校でも地味だった、そして。
 両親は真美が寮のある料理の専門学校に行きたいと言ってもこう言った。
「ああ、そうか」
「じゃあ行けばいいわよ」
「お前頭悪いからな」
「手に職あった方がいいしね」 
 こう言ってだった、真美がそちらに行ってもいいとした。
 そしてだ、早希については。
「国立なんて凄いな」
「七帝大の一つなんてね」
「これは本当に将来が楽しみだな」
「キャリア官僚か一流企業の総合職ね」
「これからも頑張るからね」 
 早希もこう言ってだ、両親の期待に応えていた。そして真美はというと。
 専門学校で料理を学び寮ではいつも自炊してその腕を磨いていた、すると。
 学校の先生も同級生達も口々に言った。
「久我山さん凄いわね」
「どんなお料理も完ぺきに作るし」
「食べる人の体調や好みも考えて作るし」
「手際も滅茶苦茶よくて」
「才能あるわね」
「お料理の才能あるわよ」
「まさか」
 真美も驚いて言った。 
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