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左耳がなくなっても

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第二章

「子猫は皆です」
「助かりますか」
「そうなんですか」
「確かに火傷していますが」 
 それでもというのだ。
「どの子も軽傷ですぐに救助されたので」
「そうですか」
「皆無事ですか」
「ですが母猫は」
 獣医は二人に眉を曇らせて話した。
「まだ生きていますが」
「それでもですか」
「もう」
「正直危ないです」
 獣医は二人に話した。
「身体のかなりの部分に酷い火傷を負っていまして」
「子猫達を助けてですね」
 浜野が十位に言った。
「その時に」
「おそらく。左耳は焼けてなくなっていて」
 獣医もこのことを話した。
「両目も鼻も口も火傷をしていて」
「危ないですか」
「非常に。ですが全力を尽くしますので」
 だからだというのだ。
「ですから」
「何とかですか」
「後はあの娘の頑張り次第です」
 こう言うのだった、それでだった。
 浜野も掛布もだった、母猫の頑張りに期待した。そしてだった。
 暫くして獣医が見舞いに来た二人に話した。
「驚くべきことにどんどんです」
「火傷がですか」
「回復していますか」
「はい、どうも元々生命力が強い娘らしくて」
 それでというのだ。
「回復が凄くて手当をしたら」
「尚更ですか」
「回復が速くて」
「もう目は開いて」
 そしてというのだ。
「鼻と口もです」
「大丈夫ですか」
「回復していっていますか」
「左耳はなくなっているのでどうにもならないですが」
 それでもというのだ。
「他の部分はです
「そうですか、それじゃあ」
「もうですね」
「大丈夫です、子猫達もすっかり元気になりました」
 獣医は彼等の話もした。
「全てお二人の救助が速かったお陰です」
「それは何よりです、じゃあ」
 浜野は獣医の言葉を聞いて言った。
「猫達は退院したらうちで引き取ります」
「飼われるんですか」
「首輪をしていないところを見ると野良ですし」
 野良猫が廃家で暮らしていただろうと見ているのだ。
「それならです」
「引き取られてですか」
「俺が飼います」
「そうして頂けますか」
「うちは今ペットいませんし」
 それにというのだ。
「両親と暮らしていますが」
「ご両親もですか」
「猫が好きですから」
「では」
「親に話して」
 そしてというのだ。
「六匹共飼います」
「そうしてくれるなら」
 獣医も笑顔で話した。
「有り難いです」
「はい」
 浜野は獣医のその言葉に応えた、そうしてだった。 
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