英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~
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第95話
2月6日、同日AM9:30―――
エリンの里を去ったレボリューションはリウイ達を本陣に送り届けた後、早速連合から出されている細かな要請を手分けしてこなした。そしてその翌日、連合から重要な要請を発注されたリィンは”艦長”であるレンと部隊長クラスの面々を集めてブリーフィングを行っていた。
~レヴォリューション・ブリーフィングルーム~
「さて……こうしてみんなに集まってもらったのは言うまでもない――――――連合”本陣”より、重要な要請が”灰獅子隊”に発注された。」
「やれやれ……”灰獅子隊”が本格的に始動して、僅か2日でそんな重要な要請が出るとか、セシリア教官達も人使いが荒いねぇ。」
「フフ、逆に考えれば、教官達がそれだけ私達に期待している証拠でもありますよ。」
仲間達を見回して答えたリィンの話を聞いて疲れた表情で溜息を吐いたフォルデにステラは苦笑しながら指摘した。
「ま、”本陣”直々からの重要な要請とは言っても灰獅子隊として実行した”最初の作戦”の”続き”のようなものだから、”最初の作戦”よりは楽だと思うから安心していいと思うわよ。」
「”最初の作戦の続き”というと……」
「”黒の工房本拠地襲撃作戦”だな。」
「”黒の工房”に関する”続き”という事は、もしかして”本拠地以外の拠点”の襲撃ですか?」
苦笑しながら答えたレンの話を聞いたイングリットとドゥドゥーは数日前の出来事を思い返し、リシテアはリィン達に確認した。
「ああ、みんなも知っているように以前黒の工房の本拠地を襲撃した際にレン皇女殿下とティオのハッキングによって黒の工房の本拠地にある情報は全て入手して、その情報の中には当然”黒の工房の本拠地以外の拠点”についての情報もあった。」
「で、その本拠地以外の拠点を全てレン達が”潰す”事で、完全に”黒の工房としての機能”を失わせて、エレボニア帝国が黒の工房――――――要するに”裏の協力者達による技術提供”を受けられないようにするって事よ。」
「なるほどね……エレボニア帝国軍に直接的に被害を与える訳ではないけど、間接的には致命的な被害を与える事になるから、結構重要な要請よね。」
「ああ。敵の技術力を低下させることは今後の戦争での連合にとって有利に働く上、自分達の拠点が全て潰された事で”裏”の勢力である”黒の工房”の関係者達が”表”の技術機関等に潜り込んで協力するような事があれば、彼らの動向を掴みやすくなるだろうね。」
「それに”本拠地”を僕達が叩き潰したのだから、残りの拠点も僕達の手で引導を渡して”止め”を刺してやるのが”筋”だね。」
リィンとレンの説明を聞いたドロテアとフェルディナント、ローレンツはそれぞれ納得した表情を浮かべた。
「ちなみにその”黒の工房の本拠地以外の拠点”は私達――――――”灰獅子隊”だけで潰せるのですか?規模は結社程ではないとはいえ、”黒の工房”は”裏”の勢力の上”魔女”の一族のように遥か昔から存在していて、”黄昏”の件の為に力を蓄え続けていたとの事ですから、万が一”本拠地を放棄せざるを得ない状況”になった時に備えて、”本拠地以外の拠点”は複数存在していると思われるのですが。」
「はい、その指摘通り拠点は複数あります。――――――レン皇女殿下。」
「ええ。――――――これが”黒の工房の本拠地以外の拠点”よ。」
デュバリィの指摘に頷いたリィンはレンに視線を向け、視線を向けられたレンが端末を操作すると映像用の端末が正面に現れた後3つの光が光っている地図が映像に映った。
「光が3つ……という事はもしかして、”黒の工房の本拠地以外の拠点は全てで3個所”という事ですか?」
「はい。ノルド高原の旧共和国に隣接している高原の山岳地帯、クロイツェン州の”オーロックス峡谷”、ノルティア州の”アイゼンガルド連峰”の3個所になります。」
「どの拠点も”本拠地”の時と同様滅多に人がよらない僻地ばかりのようね。」
「というか、ノルドを除けば今回の戦争でメンフィルに占領された領土内か、メンフィル領に隣接しているエレボニアの領土じゃねぇか……」
「ああ……”本拠地”が俺達によって潰されたにも関わらず、そのような所に逃げ込むとはいい度胸をしているな、”黒の工房”は。」
ツーヤの疑問に答えたリィンの話を聞いたエーデルガルトは真剣な表情で地図を見つめ、呆れた表情で呟いたクロードの言葉にディミトリは僅かに不愉快そうな表情を浮かべて頷き
「ちなみにそれぞれの拠点の”規模”はどのくらいなのかしら?」
ある事が気になっていたプリネは質問した。
「”本拠地以外の拠点”――――――まあ、向こうにとっては”予備の拠点”だけど、規模の違いは多少はあるけどどれも”本拠地”の時程ではないわ。”本拠地”のように異空間の中にある訳でもないし、建造物の規模も地下1F~2Fまでの3階層の上大きさも大したことないわ。ちなみに大きさは身近な例で言うと………一番大規模な施設で”パンダグリュエルの半分”くらいかしら?」
「全長約250アージュもある"パンダグリュエル”の半分でしたら、約125アージュ相当の建造物という事になりますから、十分大きいじゃありませんか!?」
プリネの疑問に答えたレンの説明と推測を聞いたその場にいる全員が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中デュバリィが疲れた表情で指摘した。
「アハハ……それはともかく、その3つの拠点を”順番に潰す”か、”同時に潰す”のどちらなのかしら?」
デュバリィの指摘に対して苦笑していたプリネは気を取り直して質問を続けた。
「――――”同時襲撃”になります。」
「”同時襲撃”か……ま、”定石”ではあるが、具体的にはどういう手筈にするとかは考えているのか?」
プリネの疑問に対する答えたリィンの答えを聞いたクロードは考え込んだ後リィンに確認した。
「ああ。基本的には”本拠地”の時と同様だ。まず、3つの部隊に分かれたそれぞれの”主力”が正面で敵の戦力を惹きつけ、その間に少数精鋭部隊が別の出入口から潜入して拠点内のフロアを順番に制圧していき、最後は拠点を完全に制圧する。”本拠地”の時のように敵を惹きつけている主力も精鋭部隊の攪乱によって敵の援軍が途切れたもしくは援軍が現れる頻度が低くなった事で正面から拠点に突入できる余裕ができれば、主力も拠点内のフロアの制圧を精鋭部隊と連携して行っていくという流れだ。」
「ちなみに制圧後の拠点は全員レヴォリューションが回収した後、レヴォリューションによる爆撃や主砲による破壊を順番に行っていく事を考えているわ。」
「フム……そうなると野外戦で”本領”を発揮する私達騎馬隊は敵を惹きつける主力に回った方がいいな。」
「ええ、幸いにも騎馬隊は俺とフェルディナント先輩、それにドゥドゥーの部隊と、騎馬隊だけでちょうど3つの部隊に分けられますね。」
「ならば、騎馬隊と同じく野外戦で”本領”を発揮できる僕達”空”を駆る騎士達も3部隊に分かれた方がいいだろうね。」
「ええ。私の天馬部隊、ローレンツ先輩の鷲獅子部隊、そしてクロードの竜騎士部隊も分散させなければなりませんね。」
リィンとレンの説明を聞いてある事に気づいたフェルディナント、ディミトリ、ローレンツ、イングリットはそれぞれ意見を口にした。
「騎馬隊と”空”の部隊はそれでいいとしても、問題は魔術師と重騎士の部隊が足りない事ですね。」
「そうね。魔術師の部隊はリシテアとドロテア先輩の2部隊で、重騎士の部隊に至っては私の部隊の一部隊だけだもの。」
「ああ。味方を後方から支援する魔術師達に、攻防を兼ね備えている重騎士達……どちらも、”戦場”には欠かせない存在だからな。」
「――――――でしたら、その足りない部分は私達の部隊が補わせて頂きます。」
「そうですね……あたし達の部隊――――――”プリネ皇女親衛隊”は”魔術師”や”重騎士”もそこそこの人数を揃えていますから、それぞれを担当する部隊に不足している部分をある程度は補えるはずです。」
「レンも”灰獅子隊”には重騎士と魔術師の部隊が若干不足している事には気づいていたから、予めパパ達から魔術師達や重騎士達をレンの部隊として融通してもらっているから、その人達も不足している部隊に回すわ。」
ある問題に気づいていたリシテアの意見に頷いて考え込んでいるエーデルガルトとクロードの話を聞いて申し出たプリネの話にツーヤは頷き、レンもプリネに続くように申し出をした。
「敵を惹きつける”主力”は決まったからいいとして……後は肝心の拠点に乗り込んで制圧、攪乱を行う精鋭部隊か。」
「まあ、みんなの話で大半の部隊の担当は決まっているから、精鋭部隊のメンツも自ずと決まっているようなものよね。」
静かな表情で呟いて考え込んでいるドゥドゥーの言葉に続くようにドロテアは苦笑しながらリィンとデュバリィを順番に視線を向けた。
「ええ。俺の部隊――――――”リィン隊”と、デュバリィさん達”鉄機隊”を精鋭部隊の担当と考えています。問題は”鉄機隊”のメンバーが僅か4名と総数40名のリィン隊の僅か10分の1という人数が相当少ない点ですが……」
「無用な心配ですわ。たかだが裏の一勢力―――それも”本拠地”ではなく、”支部”の制圧等私達”鉄機隊”にかかれば、余裕ですわよ。オリエ殿のように私達との足並みを揃える使い手に届かぬ者達の助力等、私達にとってはむしろ足手纏いですわ。」
ドロテアの推測に頷いたリィンがデュバリィに視線を向けると、デュバリィは自信満々な様子で答え、デュバリィの発言にその場にいる全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「精鋭部隊は鉄機隊に一部隊を任せるとして……リィン隊は二部隊の精鋭部隊に分けて、それぞれの拠点を襲撃するという事でしょうか?」
「ああ。一部隊は俺が指揮し、もう一つの部隊はステラかフォルデ先輩に指揮を頼もうと思っているんだが……」
ステラの質問にリィンが答えたステラとフォルデを順番に視線を向けた。
「あー、だったら迷う必要もなくステラに”決定”でいいじゃねぇか。それぞれの得物や戦闘スタイルを考えたら得物が銃であることから後方からの支援が戦闘スタイルのステラの方が俺より”指揮官”として適正だし、何よりも俺が楽できるからな♪」
するとその時フォルデが親し気のある笑みを浮かべて提案し、フォルデの提案にその場に全員は冷や汗をかいて脱力した。
「前者はともかく、後者は完全にフォルデ先輩の私情かつ怠慢じゃないですか……」
「というか、”中衛”の槍使いであるフォルデ先輩も味方の布陣の中心部分を担当しますから、”指揮官としての適正”に関しては場合によっては後衛より上なのですが……」
「やれやれ、君のその怠慢な部分も相変わらずだな。」
「全くだね。戦闘能力は間違いなく僕達同期の中ではトップだった癖に、僕達の中で一番出世していなかったからな、君は。」
「フォルデ先輩がその気になれば、フェルディナント先輩やローレンツ先輩のように今頃”准将”―――いえ”少将”に昇進していたでしょうに、その昇進を嫌がって”本気”を出さないとか、フォルデ先輩のそういう所は相変わらず理解できませんよ……」
「その件については俺も前から気になっていましたが……何か理由でもあるのですか?」
我に返ったリシテアはジト目でフォルデを見つめ、ディミトリは困った表情で指摘し、フェルディナント、ローレンツ、イングリットそれぞれ呆れた表情で呟き、ドゥドゥーは静かな表情でフォルデに訊ねた。
「いや~、昇進すればするほど責任もそうだが仕事も増えるだろう?フランツも自立してくれた事でフランツの世話をする必要もなくなったから、給料はいいメンフィル軍で金を貯めて将来はリィンの親父さんみたいに、辺境に住んで”世捨て人”みたいな生活をして毎日ダラダラしながら趣味である絵を描く事を”理想”としている俺としてはそんな面倒な事、ゴメンなんだよ。」
「察してはいたことけど、案の定聞かない方がよかったような答えね……」
「というか何でそこで俺の父さんを例えに出すんですか……第一父さんもさすがに”世捨て人”と呼ばれる程、”外”の人達との交流を頑なに断っている訳じゃありませんよ。」
「こんなナマケモノが今では廃れた”槍のヴァンダール”の”伝承者”だなんて、”世も末”とはまさにこの事を指すのでしょうね。」
「ア、アハハ……それで、敵を惹きつける”主力”はともかくとして、要となる精鋭部隊がそれぞれ担当する拠点もそうですが、二つに分ける事になるリィン隊のメンバー編成については既に決まっているのですか?」
ドゥドゥーの質問に対して答えたフォルデの答えに再び仲間達と共に冷や汗をかいて脱力したエーデルガルトは呆れた表情で溜息を吐き、リィンは疲れた表情で呟き、ジト目でフォルデを見つめて呟いたデュバリィの言葉を聞いたプリネは苦笑した後気を取り直して訊ねた。
「はい。少なくても俺が率いる部隊にはエリゼとエリスをメンバーに入れて、ノルド方面の拠点を襲撃する事を考えています。」
「?何故リィンさんが率いる部隊にエリゼさんとエリスさんを入れるもそうですが、ノルド方面を担当する事を決めているのでしょうか?」
「クスクス、それは”野暮”ってものよツーヤ♪”シスコン”のリィンお兄さんが二人を自分の部隊に入れる事は”決定事項”なんて、ここにいるみんなはわざわざ説明を聞かなくても”察している事”じゃない♪」
リィンの説明を聞いてある事が気になったツーヤの質問に対してからかいの表情を浮かべて答えたレンの答えにその場にいる全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ
「いや、レン皇女殿下は予め俺の”考え”を聞いているのに、何でそんなことを言うんですか!?というかそもそも俺は”シスコン”じゃありませんよ!」
逸早く我に返ったリィンがレンに指摘し、リィンの指摘を聞いたその場にいるリィン以外のメンバーは再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「フウ……その件の姉妹と”婚約”までしていながらも、未だに”シスコン”を否定する”リィンの往生際の悪さは私達にとっては今更で、どうでもいい”から、無視するとして……先程ルクセンベール卿が仰ったようにリィンの部隊に姉妹を入れる事と、ノルド方面を担当する事にどう関連しているのかしら?」
「あ、ああ。それぞれ襲撃予定となっている”拠点”は本拠地の施設も分けていて、そのノルド方面の拠点が担当している施設は”騎神”や”魔煌兵”と言った大型の人形を研究・開発をしているようなんだ。」
呆れた表情で呟いたエーデルガルトの指摘に冷や汗をかいて表情を引き攣らせたリィンはすぐに気を取り直してエーデルガルトの疑問に対して説明した。
「……なるほど。そういった施設でしたら防衛用の戦力として、”騎神”や”機甲兵”のような大型クラスの人形が出てきてもおかしくありませんから、その対処の為に”騎神”と”神機”の起動者であるリィン達が担当すべきでしょうね。」
「それに”騎神”の研究施設でもあるという事は、もしかしたらそこに手負いの”紫の騎神”もそうですが”猟兵王”もいるかもしれませんから、療養中の彼らに”止め”を刺せる機会でもあるという事でしょうね。」
「そういう事♪――それじゃあ、さっさと部隊の振り分けを決めましょうか♪」
リィンの説明を聞いてそれぞれ納得した表情を浮かべたイングリットとプリネの言葉に頷いたレンは会議に参加しているメンバーを見回した。
その後ブリーフィングを終えたリィン達はそれぞれの部隊の部下達に作戦の詳細を説明した後、作戦を開始した。
同日、PM13:30――――――
~黒の工房・アイゼンガルド拠点・正門~
「―――時間ね。それじゃあ初めてちょうだい、イングリット。」
「ええ。――――――これより作戦を開始する!爆弾投下、始め!」
「イエス・マム!!」
部下や仲間達が森の中に潜んでいる中ENIGMAを取り出して時間を確認したエーデルガルトが通信でイングリットに指示をすると、イングリットの指示によって拠点の上空に滞空しているイングリット率いる天馬部隊が次々と拠点目掛けて爆弾を投下し、投下された爆弾は拠点や周囲に命中すると次々と爆発と共に大きな音を立てた。すると少し時間が経つと猟兵達が慌てた様子で拠点の出入口から現れ
「一斉詠唱・”風”、始めてください!エニグマ駆動――――――エアリアル!!」
「イエス・マム!!」
それを見たリシテアは部下達に指示をして竜巻を発生させるアーツを放ち、リシテアに続くように魔術師の部隊は風や竜巻を発生させるアーツや魔術を一斉に猟兵達目掛けて放った!
「ぐあっ!?」
「ががっ!?」
「くっ、俺達が出てくる瞬間を狙った奇襲か……!一体どこに――――――!な――――――」
リシテア達が放った魔術やアーツを受けた自分の仲間達が怯んでいる中、運良く逃れる事ができた猟兵は周囲を見回してリシテア達を見つけると、リシテア達の傍にいるエーデルガルト率いる重騎士部隊とドゥドゥー率いる重騎馬隊を見つけると絶句した。
「今よ!エーデルガルト隊、進軍開始!!」
「ドゥドゥー隊、乱れた敵陣を更に乱して敵陣を混乱に陥れるぞ!」
「イエス・マム(サー)!!」
一方エーデルガルトとドゥドゥーはそれぞれ号令をかけて部下達と共に猟兵達目掛けて突撃した。
「くっ、手榴弾は味方にも被害が及ぶ可能性があるから、狙撃で味方を援護しろ!」
「ヤー!!」
それを見た屋上に出た事で、魔術やアーツの被害を受けなかった猟兵達はそれぞれ銃を構えて突撃してくるエーデルガルト達を狙撃しようとしたが
「させません――――――セイッ!!」
「がふっ!?」
「ぎゃあああああ……ッ!?」
「なっ!?空からの奇襲――――――それも翼を生やした馬――――――天馬に跨った騎士だとぉっ!?」
「くっ……確かに空からの奇襲は厄介だが相手の得物は所詮近接武器だ!空からの奇襲を警戒しつつ、距離を取って銃で馬か騎手、どちらでもいいから狙え!相手は空を飛んでいるのだから、馬から落とせば連中を殺せる!」
上空にいるイングリット隊が屋上の猟兵達に奇襲をし、イングリット隊の奇襲に猟兵達は翻弄されつつ銃で反撃しようとしたが
「ハッ!!」
「な――――――ぐぎゃっ!?」
「う、うああああああ……ッ!?」
「クソッ、投擲用の槍なんて今の時代じゃ骨董品扱いされる得物まで実戦に投入しやがって……!どこまで俺達を舐めているんだよ、メンフィルは!?」
イングリットを始めとした数人の天馬騎士達が投擲した投擲用の槍が数人の猟兵達に命中して猟兵達を絶命させ、それを見た猟兵達は驚いていた。
~最奥地点~
「くっ……まさかここどころか、他の拠点も全て同時襲撃されるなんて……!一体メンフィルはどうやって居場所を掴んだ――――――!!」
一方その頃、モニターに映っている各拠点での戦いを見ていたゲオルグは自分の拠点も含めた”黒の工房の本拠地以外の拠点”が全て居場所を掴まれた理由を考えた際、ある出来事を思い返した。
ありえない……この工房をハッキングした上、人形達の認識すらもハッキングするなんて……!
「まさか――――――あの時か!?という事は本拠地を襲撃したリィン君達の”真の目的”は”本拠地だけでなく、本拠地を含む地精全ての拠点を潰して地精に地精の施設を使用できないようにして、それらによってオズボーン宰相達への技術による戦力提供を封じる事”だったのか……!」
本拠地での自分の発言を思い返したゲオルグは厳しい表情を浮かべた。
「…………ハハ………まさか、”黄昏”に備えて遥か昔から準備をしてきた地精が僅か数日でここまで徹底的にやられて追い詰められるなんて、本当に君は君にとっていい意味でのとんでもない想定外に恵まれたものだね、リィン君………」
そしてゲオルグは乾いた声で笑った後疲れた表情で肩を落とし
「黄昏の”呪い”を利用した”守護者システム”……本来は”要塞”を守る”杭”の防衛システムとして使う予定だったから、こんな所で使いたくはなかったんだが……それぞれの拠点からの撤退の為の準備時間を稼ぐためにも使うしかないね………ハア……アルベリヒが目覚めてそれを知った時の反応を考えると今から憂鬱になってくるな……」
重々しい様子を纏ってある決断をしたゲオルグはカプセルの中に眠り続けているアルベリヒに視線を向けた。
~拠点内~
一方その頃、拠点に潜入して制圧をする為の精鋭部隊であるデュバリィ達”鉄機隊”は別の出入口から拠点に潜入していた。
「……どうやら、この近辺には人もそうですが人形の気配も感じられませんね。」
「ああ、主力部隊による敵戦力の惹きつけが上手く行っているようだな。」
「ふふっ、それじゃあ始めましょうか、遥か昔から暗躍し、私の”古巣”であったあの”教団”や”結社”すらも手玉に取った”地精”に”止め”を刺す戦いを。」
拠点内に潜入したオリエとアイネスはそれぞれ敵の気配が感じられない事を感じ取り、エンネアは意味あり気な笑みを浮かべてデュバリィに号令を促し
「ええ。――――――”鉄機隊”、黒の工房・アイゼンガルド拠点の制圧を開始しますわよ!」
「おおっ!!」
エンネアの言葉に頷いたデュバリィは号令をかけてエンネア達と共に行動を開始した。
~同時刻・オーロックス拠点・正門~
同じ頃、オーロックス峡谷にある黒の工房の支部も襲撃を受けていた。
「これ以上近づけさせるな……!撃て―――!」
猟兵の指示によって猟兵達は進軍してくるメンフィル軍に銃による一斉射撃、導力砲による砲撃を行ったが重装備かつ身の丈程ある大盾を構えながら前に進む重騎士達には物理攻撃である銃撃や砲撃はあまり意味をなさず、銃撃や砲撃が終わると重騎士隊は戦列を乱さず拠点に向かって進み続けていた。
「む、無傷だとぉ!?」
「幾ら重装備とはいえ、導力砲による砲撃すらも通さないとか、どうなってんだよ、あの鎧や盾は!?」
強く軽く、そして硬いという理想的な鉱石である”ミスリル”製の鎧や盾を纏っている重騎士隊に自分達の攻撃が効かない事に猟兵達が混乱していると戦列の後方にいるレンが魔術師の部隊に指揮をした。
「反撃開始よ――――――一斉詠唱、”暗黒”開始!――――――ティルワンの闇界!!」
「イエス・マイロード!!」
「うわあああああああっ!?ぎゃああああっ!?」
「と、突然目の前が真っ暗に……!?ぐあああっ!?」
「くっ、なんなんだよ、これは!?がああああっ!?」
魔術師達に指示をしたレンは広範囲を暗黒で包み込んで攻撃する魔術を発動し、魔術師の部隊も続くようにそれぞれ敵対象を暗黒で包み込む暗黒魔術を一斉に放って猟兵達を混乱状態に陥らせた。
「今です!重騎士隊、投擲始め!!十六夜――――――”燐”!!」
「イエス・マム!!」
「がふっ!?」
「ぐがっ!?」
混乱状態に陥った猟兵達を見たツーヤが重騎士隊に指示をすると重騎士達はそれぞれ投擲用の槍を構えて次々と猟兵達目掛けて放って猟兵達を絶命させ、ツーヤは広範囲の遠距離攻撃を発生させる剣技で攻撃した。
「ディミトリ隊、敵陣を蹂躙しろ!!」
「イエス・サー!!」
そこに畳みかけるようにディミトリ達騎馬隊は猟兵達に突撃して猟兵達を蹂躙し始めた。
「くっ、これ以上調子に乗らせてたまるか……!」
「大昔の戦争みたいなやり方が、近代兵器相手に通じると思っているのが大間違―――がふっ!?」
一方それを見ていた屋上の猟兵達はそれぞれ銃や屋上に備え付けている導力砲で地上で猟兵達を蹂躙し続けているメンフィル軍を狙おうとしたが、突如空から無数の槍が狙い撃つかのように数人の猟兵達に命中して猟兵達を絶命させた。
「フッ、その”近代兵器という便利さ”によってできた目を曇らせた考えがメンフィルにも通じると思っている方が愚かなんだがね……―――ローレンツ隊、地上の味方を狙う敵達を殲滅せよ!!」
「イエス・サー!!」
部下達と共に投擲用の槍を投擲して猟兵達を絶命させたローレンツは猟兵達を嘲笑した後、部下達に指示をして空からの奇襲を開始した。
~拠点内~
「よしよし……拠点内の戦力は上手い事主力に釣られているようだな。」
「ええ、この近辺に人もそうですが人形兵器の気配もほとんど感じられませんわね……」
主力部隊が敵を惹きつけている間に別の出入口から拠点内に突入したフォルデは敵の気配が少ない事に口元に笑みを浮かべ、メサイアは静かな表情で呟いている中、敵の気配を感じ取っている二人の様子にアルフィンとセレーネは冷や汗をかいた。
「お二人もそうですが、リィンさん達といい、皆さん、どうやって離れた相手の”気配”を感じ取っているのでしょうね……?」
「アハハ……恐らくですが専門的な”武道”を”ある領域”まで極めると、自然に身に着くのではないでしょうか?」
不思議そうな表情で首を傾げているアルフィンの疑問にセレーネは苦笑しながら推測を答えた。
「それで今回の作戦内容は”拠点内全てのフロアの制圧”という事ですが、片っ端からフロアを制圧していくのでしょうか?」
「いえ、城内と言った屋内を攻める際の”定石”通りこの拠点を任せられている責任者の部屋の制圧を目標とします。先に責任者の部屋を抑える事ができれば、拠点内全ての制圧はスムーズに進むはずです。」
「なるほどね……責任者の部屋なら拠点内全てを確認できる端末等が備え付けてある可能性は高いでしょうし、運がよければ幹部クラスの敵を撃破できるかもしれないわね。」
クルトの疑問に答えたステラの話を聞いたアイドスは納得した表情を浮かべて呟いた。
「問題はその幹部クラスもそうだが防衛用の”切り札”とやり合う羽目になった時、どんな相手が出てくるかだが………ま、こっちにはリィンから借りた超頼もしい”助っ人”がいるから、いざとなったら頼むぜ、お二人さん♪」
疲れた表情を浮かべて呟いたフォルデは親し気な笑みを浮かべてメサイアとアイドスに視線を向け、フォルデの発言にその場にいる全員は冷や汗をかいて脱力した。
「フウ……縁戚関係は皆無に等しかったとはいえ、フォルデ大佐も”ヴァンダール”の血を引いている上”ヴァンダール流”の”皆伝者”なのですから、”ヴァンダール流”の”皆伝者”でありながらそのような完全に人任せにするような発言は控えて欲しいのですが……」
「ア、アハハ……どのような相手が出てきても全力でサポートさせて頂きますから、その点はご安心ください。」
「フフッ、貴方達はリィンにとって……そして私達にとっても”大切な仲間”なのだから、全力で守るつもりよ。」
我に返ったクルトは疲れた表情で溜息を吐いて指摘し、メサイアとアイドスは苦笑しながら答えた。
「ふふっ、お二人とも、心強いですね。――――――これより、リィン隊B班黒の工房・オーロックス拠点の制圧を開始します!」
「おおっ!!」
そしてステラの号令の元、セレーネ達はリィン隊に所属している軍人達と共に作戦を開始した!
~同時刻・黒の工房・ノルド拠点・正門~
「撃って撃って、撃ちまくれ!決して弾幕を絶やさず、これ以上奴等を近づけさせるな!」
「ヤー!!」
「重騎士隊、盾を構えて進軍を続けてください!!戦士達に大いなる加護を――――――覚醒領域の付術!!」
「イエス・マイロード!!」
同じ頃ノルド拠点も襲撃を受けており、正門を守る猟兵達は進軍してくる灰獅子隊目掛けて怒涛の銃撃や砲撃を行ったが魔術で重騎士隊を強化したプリネの指示によって重騎士隊が大盾を構えて進軍し続ける事によって銃弾や砲撃の嵐が襲い掛かってきているにも関わらず灰獅子隊は全く被害を受けずに進軍し続けていた。
「クロード隊、一斉射撃、”制圧”始め!――――――二連制圧射撃!!」
「イエス・サー!!」
「が……っ!?」
「ぐ……あ……っ!?」
「な……上からの奇襲だと!?一体何が――――――な。」
「な、何なんだあの連中は!?」
そこにクロード率いる竜騎士部隊が矢の雨を降り注がせて銃撃や砲撃を行っていた猟兵達の攻撃を妨害した。
「今よ!ドロテア隊、一斉詠唱、”雷”開始!――――――審判の轟雷!!」
「イエス・マム!!」
「ぐぎゃあああああ……っ!?」
「うああああああ……っ!?か、雷の雨だ――――――ッ!!」
その時ドロテア率いる魔術師の部隊がそれぞれ雷を発生させる魔術やアーツを一斉に放って猟兵達を怯ませて銃撃や砲撃を完全に沈黙させた。
「好機!フェルディナント隊、突撃開始!野外戦の主力にして”華”たる騎馬隊の底力、敵に思い知らせてやれ!」
「オォォォォォ――――――ッ!!」
「やれやれ、これならばシュバルツァー達の部隊に入っていた方がもう少し楽しめたかもしれないな。」
「お前と一緒の考えなのはムカつくけど、それには同感。」
そしてフェルディナント率いる騎馬隊が電光石火の速さで猟兵達に襲い掛かり始め、それを見て溜息を吐いたレーヴェの言葉に静かな表情で同意したエヴリーヌだったが、二人ともすぐに気を取り直してフェルディナント達に続くように”戦場”へと突撃して猟兵達を蹂躙し始めた。
~拠点・最奥部~
「クッ……!本拠地を落とされた話を聞いた時から、この拠点も長くはもたないとは想定していたが、俺達の想定を遥かに超える速さで襲撃してくるとは……!」
レオニダスは端末に映る灰獅子隊と猟兵達の戦いを見て唇を噛み締めて厳しい表情を浮かべた。
「ハハ、鉄血宰相達に”裏”から支援している黒の工房を徹底的に叩き潰して確実にエレボニアの戦力を消耗させる為にエレボニアとの戦争よりもこっちを最優先したんだろうな、メンフィルは。ノーザンブリアの時といい、3年前の”リベールの異変”の時といい、敵に回したら本当に恐ろしすぎる連中だぜ。」
するとその時ルトガーが苦笑しながら部屋に入ってきた。
「団長……!?まだ傷は癒えていないのだから、休んでいた方が……!」
「こんな状況でおちおち眠っていられねぇよ。――――――連中がここに踏み込んで来る前にゼクトールの”精霊の道”でとっととズラかるぞ。」
自分の登場に驚くとと共に心配しているレオニダスにルトガーは苦笑した後今後の方針を伝えた。
「……いいのか?せめて奴等に一当てくらいはしなければ、”雇い主”が五月蠅いとは思うが。」
「その”雇い主”が今も意識不明で自分自身は何もできない状態なんだから、文句は言えねぇし……――――――それに、メンフィルはゼクトールの起動者である俺をゼクトールごと確実に始末する為にも襲撃してきたようだからな。」
「何……?――――――!別働隊に”灰色の騎士”に”守護の剣聖”、それに金の起動者である”灰色の騎士”と”守護の剣聖”の妹と生身でも騎神ともやり合った異種族の女だと……!まさか奴等はゼクトールとの戦闘も見据えて襲撃してきたのか……!?」
ルトガーの推測が気になったレオニダスはルトガーが視線を向けている方向―――――複数ある端末にリィン達精鋭部隊が別の出入口に近づいている様子に気づくと表情を厳しくした。
「ま、十中八九そうだろうな。新しい得物の調達の目途が立っていないどころか、片腕すら再生できていない今のゼクトールじゃ、ただの図体の大きい案山子のようなものだからな。―――――せめてもの意趣返しに俺とゼクトールに”止め”を刺すつもりで襲撃してきたメンフィルの思惑を少しでも外す為にも、”雇い主”もそうだが”西風”として”誇り”も捨てて大人しく退くぞ。――――――ハーメルでのフィーとの約束を守る為にもな。」
「団長………了解した……!」
ルトガーの指示に複雑そうな表情を浮かべたレオニダスだったがすぐに気を取り直して力強く頷いた。そして二人が部屋から出ていった後その場に空間の”歪み”が現れ、”歪み”が消えるとそこには満身創痍の状態の天使が倒れていた。
「う……っ………皆………私が……計算外の出来事に対応できなかったばかりに………すみません…………今、私も貴方達の……元に………」
床に倒れている天使―――老人の”白髪”のような髪ではなく、雪のような純白の髪を持つ天使は朦朧とした意識で何かを呟いた後すぐに意識を失った。
~拠点内~
「……どうやら、周囲に敵の気配は感じられませんね。」
「ああ、主力部隊による敵の惹きつけが上手く行っているようだな。」
拠点に潜入したエリゼとリィンはそれぞれ近辺の気配を探り、敵がいない事を確認した。
「……今更ではありますが、お二人の気配察知能力は化物じみていますよね。」
「うーん、エリゼさんはともかくリィン少将閣下の卓越した気配察知能力は私にとっても、少々厄介な能力ですわね。――――――何せ”夜這い”をして私もエリス先輩達のようにリィン少将閣下の”お手付き”にしてもらうことは厳しいのですし♪」
「こんな時に、性質の悪い冗談を言うのは止めてくれないかしら?ミ・ル・ディ・ー・ヌ~~??」
「……わかっているとは思いますが、兄様もく・れ・ぐ・れも気をつけてくださいね??」
「はい………」
ジト目で呟いたアルティナの感想に続くように困った表情で答えたミュゼは妖艶な笑みを浮かべてリィンを見つめ、ミュゼの発言にその場に多くの者達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中、すぐに我に返ったエリスはミュゼ、エリゼはリィンにそれぞれ膨大な威圧を纏って微笑み、エリゼに微笑まれたリィンは疲れた表情で答えた。
「…………………」
「あら、もしかしてユリーシャも”夜這い”を考えていたのかしら♪」
一方ユリーシャ真剣な表情を浮かべて考え込み、その様子に気づいたベルフェゴールはからかいの表情を浮かべてユリーシャに問いかけた。
「睡魔の貴女じゃあるまいし、そのような不埒な事は一度も考えた事はありません。………僅かですが気になる気配を感じ取っていて、それについて考えていただけです。」
ベルフェゴールの問いかけに呆れた表情で答えたユリーシャは気を取り直して答えた。
「ユリーシャさんが気になる気配、ですか?私は感じられませんが……」
「俺もだ。一体どんな気配なんだ、ユリーシャ?」
「この身と同族の気配です。…………それもこの拠点内からと”外”の両方です。”外”から感じている方はこの身達との距離は相当離れていると思われますが。」
「”天使であるユリーシャさんの同族”という事はそのユリーシャさんが感じている気配の持ち主も”天使”―――それも一人だけではなく”二人の天使”という事になりますが……」
ユリーシャの言葉が気になったエリゼは不思議そうな表情で首を傾げ、真剣な表情を浮かべたリィンの問いかけに答えたユリーシャの答えを聞いたエリスは困惑の表情を浮かべた。
「……確かに気になる話だな。”外”はともかくこの拠点内にいるという事はもしかして、”黒の工房”に囚われているのか……?”外”にいると思われる天使はともかく、この拠点内にいると思われる天使は出会った時の状況にもよるが、基本的に”保護”することを考えておこう。――――――リィン隊A班、これより黒の工房・ノルド拠点制圧作戦を開始する。本拠地が潰され、更に残りの全ての拠点が襲撃を受けている事に相手が自棄になってこちらの想定外の反撃をしてくることも考えられる為、決して油断せず、着実に作戦を実行するぞ!!」
「イエス・コマンダー!!」
そしてその場で考えて判断を下した後気を取り直したリィンの号令に力強く頷いたエリゼ達やエリゼ達と共にいるリィン隊に所属している軍人達は作戦を開始した!
少し前―――
~ノルド高原・旧共和国方面~
「フムフム……先程の今まで見たことがない生態の魔物やその魔物を倒した際に魔物が消滅すると共に現れたこの僅かな魔力を纏っている石もそうだが、何よりも突如現れた転位門があたしをここに”転位”させた事は”研究者”のあたしにとってはどれも興味深い事だ!”廻天の聖壇”を研究できなくなったのは残念ではあるが、こんなまるで”世界自体が変わった事”のような出来事と比べれば些細な事だな。……む?」
リィン達が拠点内に潜入する少し前、ユリーシャが感じ取っていた気配の持ち主――――――本来ならば純白である翼が半分黒くくすんでいる小柄な天使は自分が迎撃した魔獣を倒した際に現れたセビスを手に取って目を輝かせていたが、自分の耳に聞こえてきた喧騒に気づくとそれを確かめる為に翼を羽ばたかせて空へと舞い上がり、喧騒が聞こえた方向へと飛行して黒の工房の拠点の一つである”ノルド拠点”が襲撃を受けている状況を見下ろしていた。
「何だ、ただの人間同士の争いか。……だが、あの今まで見たことのない材質をした建造物は興味深いね……!いや、よく見れば防衛側の人間達が扱っている”銃”もそうだが”兵器”も、”魔導技術”によるものには見えないが……――――――おや?」
灰獅子隊の主力部隊と猟兵達のぶつかり合いを確認した天使は興味なさげな表情を浮かべたが、すぐに自分にとっては新鮮となるものを見つけると目を輝かせた後、リィン達と共に別の出入口から拠点に突入していくユリーシャとベルフェゴールに気づいた。
「天使もそうだが睡魔も人間達と共に――――――いや、それ以前に”相反する存在である天使と魔族が共に行動をする事”も興味深い出来事だな。――――――彼女達の事をもっと知る為にも直接接触するべきだな。それに運が良ければ同じ天使の好で、今のあたしにとって様々な知りたい事も教えてもらえる事ができるかもしれないね。」
そしてリィン達に興味を抱いた天使はリィン達の後を追う為にリィン達が入った出入口の場所へと降りて拠点に潜入し、リィン達の後を追い始めた――――――
後書き
という訳で今回の話で予告していたコンキスタからの参戦キャラにして二人目の天使枠のキャラクターが判明しました!ついでに予告していなかった同じくコンキスタからの参戦キャラかつまさかの天使枠3人目が同時判明しました(ニヤリ)それとひょっとしたらですが、まさかの天使枠4人目も同じくこの物語に参戦するかもしれません(天使枠、多すぎぃ!)ちなみにコンキスタですが、現在35幕です。ルシエル捕縛する戦闘がある意味一番難しかった……何せゆっくり進軍していたらあっという間にルシエルが悪魔陣営にやられちゃいますから、ある程度悪魔陣営を減らした上でエルヴィールからルシエルに攻撃できないような配置にしないと捕縛する前に倒されますから。(実際、最初エルヴィールのルシエルに対する最初の一撃目がまさかのクリティカルでルシエルが一撃必殺されましたし)それまでにはぐれ魔神二人共捕縛しておいたから、その二人がルシエル捕縛&宝回収の為にホント存分に役に立ってくれました。……というかエウシュリー作品ではぐれ魔神に頼るとかコンキスタが初めてでしたwwあの二人を摑まえる為に最も貢献してくれたユリアーナは間違いなくコンキスタではVIP賞ものだと思いますww
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