病は気からで
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第二章
ある日定期検診の人間ドッグの診断結果を見てだ、母は家族に暗い顔で言った。
「お母さん癌みたい」
「おい、癌って」
「大変じゃない」
「乳癌。粒位の癌細胞があるってね」
「言われたのか」
「そうなんだ」
「診断で。初期の初期だけれど」
それでもとだ、菜桜子は夫と息子に話した。
「癌なのは事実みたい」
「だったらな」
夫は妻に深刻な顔で言った。
「すぐにな」
「入院してよね」
「癌細胞取ってもらうんだ」
手術でというのだ。
「いいな」
「そうするわね」
「すぐに見付かってよかった」
「そうよね」
「けれど」
息子は暗い顔で言った、もうこの時は高校に進学している。サッカーの強豪校に入れてそこで部活に励んでいる。
「癌って転移とか再発するよね」
「そうよね」
母もその通りだと答える。
「癌は」
「大丈夫かな」
「今そんなこと言っても仕方ないだろ」
父は心配そうに言う息子に返した。
「まずはな」
「手術なんだ」
「そうだ、すぐに取ったらな」
「大丈夫なんだね」
「そうだ、確かに癌は怖いがな」
死に至る、このことは事実だがというのだ。
「しかしな」
「それでもなんだ」
「すぐだったから助かる、安心しろ」
「それじゃあ」
「お前は心配しなくていい」
父は息子を元気付ける様にして話した。
「いいな」
「そうなんだね」
「ああ、心配は無用だからな」
父は微笑んでこうも言った、そうしてだった。
母は手術を受けてそうして癌細胞を無事除去出来た、退院も無事に出来たがそれでも息子は心配で。
退院した母によくこう言う様になった。
「またならない様にだよ」
「注意しろっていうのね」
「本当に再発とか転移あるっていうから」
だからだというのだ。
「食べものに注意してストレスもね」
「ない様にしないといけないわね」
「あといつも診断受けて」
このことも忘れないでというのだ。
「そうしてだよ」
「わかってるわ」
母の返事ははっきりしたものだった。
「お母さんもね」
「だったらね」
「気をつけるわ」
「ニャア」
親子でそうした話をしているとだった、ちゃちゃも母のところに来た。そうして座っているその膝に上に来た。
そのちゃちゃを撫でてだ、母は息子に笑って話した。
「ちゃちゃを見ているとね」
「癌でもだね」
「やっぱりね」
「癒されるんだ」
「凄くね」
そうなるというのだ。
「本当に」
「そうなんだ」
「この娘がいてくれたら」
「いいんだね」
「凄くね」
こう息子に話した。
「お父さんと恭平がいてくれて」
「ちゃちゃもいてくれたら」
「それでね」
「そんなにいいんだ」
「癒されて」
それでというのだ。
「凄くいいから」
「だからなんだ」
「何があっても」
それこそというのだ。
「癌にはね」
「ならないんだ」
「そうしていくわ、病は気からっていうでしょ」
「そうだね」
「だから明るいと」
それならというのだ。
「きっとね」
「よくなるんだ」
「それに確かに癌だけれど」
それでもとだ、母は息子にさらに話した。
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