白い癒し猫
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第一章
白い癒し猫
後藤田美咲は親戚の家に法事で行った時にその猫を見付けた、猫は白い毛がボロボロになって痩せていた。
子猫でまだ小さかった、美咲はその猫を見てすぐに一緒にいる母にお願いした。
「お母さん、あの猫ちゃんこのままだと死んじゃうよ」
「身体ボロボロだしね」
「だからね」
「助けてあげようっていうのね」
「うちで飼おう」
こう母にお願いしたのだった。
「そうしてあげよう」
「そうね、お父さんも猫好きだし」
母も猫をどうにかしてあげないとという目で見つつ応えた。
「だったらね」
「それじゃあね」
「ええ、拾ってね」
「法事が終わったらよね」
「うちに連れて帰りましょう」
「それじゃあね」
美咲は母の言葉に笑顔になってだった。
その猫を拾って洗ってご飯をあげて法事の間は親戚の家に置いてもらってだった。そうして家に連れて帰った。
家に連れて帰って白い毛だったのでホワイトと名付けた、雌だったので首輪には鈴を付けた。美咲が十歳の時だ。
こうしてこの猫は美咲の家の猫となった、いつも家族と一緒にいて美咲や両親が声をかけると尻尾を上下にぱたん、ぱたんと動かした。美咲も両親もホワイトが大好きだった。
美咲は成長して高校を卒業して丸い目で黒い髪の毛を後ろで束ねた外見になっていた、背は一六〇位で就職して頑張っていた。
だが入社してすぐにだった。
母にだ、家に帰ってこう漏らした。
「アルバイトとはね」
「また違うでしょ」
「ええ、正社員ってね」
この立場はというのだ。
「何かとやることは多くて」
「気苦労も絶えないでしょ」
「お父さんが言ってたけれど」
就職が決まった時にだ。
「実際にね」
「待遇はやっぱりアルバイトやパートの人と違うけれど」
「気苦労多くて。だからね」
「今疲れてるわね」
「ええ」
実際にというのだ。
「正直言ってね」
「そうよね、けれどね」
「こうした時こそよね」
「頑張らないと駄目よ」
母は娘を励ました。
「いいわね」
「毎日朝から夜まで働いてね」
「確かに気苦労は多いけれど」
それでもというのだ。
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