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曇天に哭く修羅

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第三部
  主義主張 5

 
前書き
原作と変えられる場所が少ない。

流れは同じで良いから変えたい。 

 
紫闇は白い空間に立っていた。

目の前には巨大な黒い門。

そこに黒い気体と白い気体が集まってそれぞれが人の形を取り始めた。

黒い気体の方は黒髪の紫闇になった。

何度か会ったことが有る。

紫闇がスイッチを入れると黒い魔晄が噴出して性格も変わるのは彼の影響だろう。

白い方はレイアになった。


「頼む、二人とも」


彼等が門に力を入れて押す。

ゆっくりと開いていく。

気付くと元のスタジアムに居た。


「待たせたな佐々木」


瞬崩は戸惑う。

珀刹怖凍が解除されてから数分しか経っていないのに雰囲気が激変している。

明らかに強くなった。


(何が起きてる……!?)


紫闇の外装、その表面に走っている赤いラインが緑へと変化していく。


七門ノ二(ゼフィス=ヨグ)

混沌の解放(ナル・シュタン)

我は虚無の貌に名を刻む(ヴォルグン・ナル・ガシャンナ)


(珀刹怖凍の詠唱に似ている。けど最初に唱える節が少し違っているな。他は珀刹怖凍のものと同じみたいだが……)


流れ動せし血潮(アヴァタ・ヴェル・ソヴン)


瞬崩は血相を変える。


全てを喰らう(ゼヴァ・イア・ヴェズス)


明らかに珀刹怖凍と違う詠唱。


刻む我が名は(ウルグルイ・ゼェム)


紫闇の血脈が鳴動。


深淵にて蠢く者(ク・リトル・リトル)


詠唱が終わると同時だった。

瞬崩が踏み込み槍を放つ。

黄金の穂先が首に奔る。

しかし紫闇は避けない。


「その必要が無いからな」


溶けて消えた。

槍が触れた途端にだ。

全力で繰り出した一撃だったらしく、瞬崩は勢いが付いた自分と槍を止められない。

やっと止まった時、瞬崩の槍は原形を留めておらず、柄の半分以上が失われていた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「そらよ」


軽くステップしながら瞬崩に拳を振り抜いていく紫闇は溶け残った槍の()で防ごうとする瞬崩を意に介さない。

そのまま柄を溶かすと紫闇の拳は瞬崩の右胸に穴を空け、肺を突き破る。

紫闇と瞬崩が戦い始めてから初めて瞬崩がダメージを負った。

急いで飛び退()いた瞬崩は直ぐに外装を喚び直すと血を吐きながら異能を行使。


「飲み込めッ! 炎龍ッ!」

「無駄だって」


紫闇の傷口から流れて彼を赤く染める血は触手のように伸びると壁を作って炎の龍を受け止め消し去っていく。

瞬崩は瞠目したが無理もない。


「佐々木。お前はさっき【反逆者の灼炎(レッド・リベリオン)】のことを明かした。だから俺も教えてやる。この能力は【融解】だ。さっき使えるようになった」


血液に概念を溶かす力を付与し、思うがままに操ることが出来る。


「反撃させてもらおうか」


右の肺に穴を空けられ動きが鈍る瞬崩に対し紫闇は容赦せず叩きのめす。

あっという間に血達磨。

肌の色を探す方が難しい。

そこまで出血させられる。


「【神が参る者(イレギュラーワン)】、その中でも特別なやつだというのは承知しとった。じゃが、それを考慮しても、どうしてこれ程までにやられるか!?」


瞬崩の、《佐々木青獅》の師である《流永》は何故こうなったのか解らない。


「人は何かを捨てながら前へ進む。捨てたものは自分を形成し支えてくれたものだということを忘れながら。人は何かを捨てることでしか前に進めないくせに捨てるほど弱くなっていく」


《黒鋼焔》が流永に語り出す。


「矛盾してるけど何か捨てないと前に進めないのが人間という存在。だから本当に大事なものは捨てずに取っておくべきだと思う」


それは誰かとの繋がりだったり貫きたい信念なのかもしれないが、青獅と流永はそれ等すらも捨てて前に進み(から)になった。


流永(あなた)という『器』はあたしの祖父、弥以覇を超えていたのかもしれない。けど器の中に入れておくべきものまで捨てたせいで中身は空っぽだったから負けたんじゃないかな」


流永は客席の手すりを握り締めて震え、叫びそうになるほど感情的になっていたが、何も焔に言い返すことが出来なかった。
 
 

 
後書き
_〆(。。) 
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