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ヘタリア大帝国

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TURN45 サフラン=ヴェーダその十

「ハワイに攻め込む」
「いよいよですね」
「これは予定通りだ。エイリスの植民地、インド洋のそれまでを解放するという戦略目標は達成されようとしている」
 実現の可能性は極めて低かった、だがそれもだったのだ。
「それならその後でだ」
「予定通りガメリカ戦ですね」
「ようやくガメリカに対抗できるだけの力が備わった」
 やはりガメリカを見てだった。東郷の戦略は。
「本格的に戦う」
「ハワイ、そして」
「ガメリカ本土も攻めていこう」
「それもいよいよですね」
 こうした話もしてだった。アラビアに攻め込む準備にも入っていた。そのアラビアではクリオネが極限まで落ち込んでいた。 
 燃え尽きたボクサーの姿勢になって椅子に座りこんなことを言っていた。
「終わったわ。全て」
「おい、燃え尽きたのかよ」
「クリオネちゃんのこれまでの努力が全て」
「おい、自分をちゃん付けかよ」
「いいじゃない。まだ三十歳よ」
「年齢のことは言わないがな」
 だがそれでもだというのだ。イギリスも言う。
「気を取り直せよ」
「そうしたいけれど」
「やっぱりダメージが大きいか」
「立ち直れないかも」 
 姿勢は変わらない。落ち込んだままだ。
「この状況は」
「深刻だな」
「かなりね」
 クリオネは自分でも言う。
「辛いわ、どうしたものかしら」
「アフリカで頑張ってみたらどうだ?」
「あんなまだ未開の場所があってそこに何が居るかわからない場所なんて嫌」
「まあ。暗黒宙域から時々変なのが来るけれどな」
「南アフリカは貴族達が酷いし」
「あれなあ。俺もな」
 南アフリカについてはインドも難しい顔になる。
「困ってるんだよ」
「あそこはどうしようもないから」
「アンドロメダもかよ」
「興味ないですから」
 アンドロメダについてもこうだった。
「北アフリカは砂しかないから」
「インドじゃないと駄目なんだな」
「インド人じゃないけれどインドが好きだから」
 だからこそだというのだ。
「クリオネちゃんショック。東インド会社も倒産したし」
「まあなあ。けれどな」
「けれど?」
「インドは仕方ないさ」
 エイリスにとって永遠に失われた場所になった。このことはもう誰が何をしても覆るものではなくなっている。
「それでも生きてるんだな」
「ビジネスですね」
「とりあえずそうしないとな。それにな」
「それにっていいますと」
「太平洋軍はこっちにも来るぜ」
 このアラビアにもだというのだ。
「ここまで失うとな」
「アラビアにある私の権益も」
「僅かに残ったそれもなくなるぞ」
「わかりました。それじゃあ」
「頑張ってくれるか?」
「シャワー浴びてきていいですか?」
 気分転換にまずはそれからだというのだ。
「お酒も大分残ってますし」
「そういえば凄く酒臭えぞ」
 クリオネの全身からワインの匂いがぷんぷんしている。本来はかぐわしい香りだが今はやさぐれた匂いになっている。
 イギリスはその匂いに辟易しながらクリオネに言った。
「風呂に入ってそれでな」
「お酒を抜いてですね」
「身だしなみも整えてくれ」 
 ただの気分転換ではなかった。
「それからな。じっくりと話そうな」
「わかりました。それじゃあ」
「何度も言うが生きてこそなんだよ」
 イギリスの言葉は率直なものだった。
 
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