英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~
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第90話
~エリンの里・ロゼのアトリエ~
「リ、リウイ前皇帝陛下……!」
「それにギュランドロスさんも……」
「どうしてお二人が自らこちらに……」
二人の登場にトワとガイウスは驚きの声を上げ、クルトは目を丸くして訊ねた。
「な~に…………そこの”灰色の騎士”のように、本来の”運命”が大きく”改変”された皇太子殿の顔を見たかっただけさ。」
「そ、そんな理由の為だけに皇帝自らがここに足を運ぶって……」
「意味不明過ぎよ……」
「……メサイアから聞いた通り、行動原理が一切読めない人物のようだな。」
ギュランドロスの答えにその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中エリオットとセリーヌは疲れた表情で呟き、ユーシスは真剣な表情でギュランドロスを見つめた。
「まさかとは思いますがお父様も同じ理由なのですか?」
「そんな訳あるか。俺はその男に無理矢理付き合わされてここに来ただけだ。」
「ふふっ、”偶然”とはいえ”エレボニアの第三の風”であるオリヴァルト殿下達の前にこうして連合と新生軍を率いる立場の者達をこの場に集めるとは、もしかして”偶然”ではなく”狙って”この場にリウイ陛下も連れて現れたのでしょうか、ギュランドロス陛下は。」
困惑の表情のプリネの問いかけにリウイが呆れた表情で答えるとミュゼは意味ありげな笑みを浮かべてギュランドロスを見つめ
「あ……っ!」
「……確かに言われてみればメンフィル、クロスベル、そしてヴァイスラントの三勢力のそれぞれの軍の”総大将”が集まっている状況ね。」
「……ま、問題は連中がスチャラカ皇子の話を聞くかどうかだがな。」
ミュゼの指摘を聞いたアネラスは声を上げ、シェラザードは真剣な表情でリウイ、ギュランドロス、ミュゼを順番に見回し、アガットは呆れた表情で呟いた。するとその時オリヴァルト皇子がリウイの前に出て頭を深く下げて謝罪した。
「……お久しぶりです、リウイ陛下。謝罪が遅くなりましたが、メンフィル帝国をエレボニアの内戦に巻き込んでしまった事、そしてリィン君とエリス君、それにセレーネ君という貴国の有望な若者達の貴重な時間を割いて留学させて頂いたにも関わらず、留学後の三人の貴国の待遇について何も相談しなかった挙句三人を我が国の内戦に巻き込んでしまい、誠に申し訳ございませんでした………!」
「僕達エレボニア皇家の不甲斐なさに内戦と関係ない貴国まで巻き込んでしまい、本当に申し訳ございません……!」
「―――申し訳ございません!父が雇った猟兵達によるユミル襲撃を知った時、父を処刑してでも父の身柄と共にメンフィル帝国に自首していれば、メンフィル帝国の怒りがここまで膨れ上がる事もありませんでした……!」
オリヴァルト皇子がリウイに謝罪するとセドリックとユーシスも続くようにリウイに謝罪し
「……………」
「殿下……」
「ユーシス……」
三人の様子を見たリィンは目を伏せて黙り込み、ラウラとガイウスは辛そうな表情で見つめていた。
「……今更謝罪した所で”メンフィルの怒り”は”たかが皇族が謝罪した程度”で治まるような甘い事は”絶対にありえない事”と理解していて謝罪しているのだろうな?」
「た、”たかが皇族が謝罪した程度”って……!少なくてもユミルの件は前カイエン公と前アルバレア公の暴走で、殿下達―――皇族の方々は主犯でないにも関わらず内戦の件でユミルやシュバルツァー男爵閣下達に対して心から申し訳ないと思っているんですよ……!?」
「というか、確かにユミルは2回も襲撃されたけどどっちも幸いにも”死者”は出なかったよね?前から思っていたけど”死者”が一人でも出たならともかく、”死者”がいないにも関わらず戦争を勃発させてまで怒るとか、幾ら何でも理不尽過ぎると思うんだけど、メンフィル――――――闇夜の眷属の”同族を大切にする特殊性”ってのは。」
呆れた表情で答えたリウイの非情な答えを聞いたエリオットは悲痛そうな表情で、フィーはジト目で反論し
「不味い――――――」
「二人ともすぐに自分達の”失言”をリウイ陛下に謝って、今の自分達の言葉を撤回して!今の二人のリウイ陛下への態度は”不敬罪”が成立するよ!?」
それを見たアンゼリカは血相を変え、トワは真剣な表情で二人に警告した。
「へ――――」
「意味がわかんないだけど。」
トワの警告を聞いたエリオットが呆け、フィーがジト目で反論したその時それぞれ背後から襲い掛かったミュラーがエリオット、オリエがフィーをそれぞれ床に叩きつけて抑えこんだ!
「あぐっ!?ミュ、ミュラー少佐……!?」
「っ!?何の為にわたし達にこんな事を……!?」
突然床に叩きつけられたエリオットとフィーはそれぞれ呻き声を上げた後困惑の表情で自分達を抑えつけている二人を見つめ
「エリオット!?フィー!?」
「ミュラー少佐にオリエさん……どうして二人を……!?」
「へえ?さすが遥か昔から”皇家の守護職”を務めてきた一族だけあって、ちゃんと”わかっているわね”。」
「…………………」
「――――――それ以上騒ぐでない!”ヴァンダール”の二人は今のリウイ王に対する二人の無礼な言葉をああしてその身に痛めつける――――――エレボニアの者達が同じエレボニアの者達に”罰”を与える事で”エレボニアとしての誠意”を示して、リウイ王に対する二人の不敬な態度を許してもらおうとしているのじゃろう。よってこれ以上騒いだり、今のエリオットとフィーを助けるような行動はするでない!」
「………ッ!」
それを見たアリサは心配そうな表情で声を上げ、エマが戸惑いの表情でミュラーとオリエに訊ねている中、その様子を見守っていたレンは興味ありげな表情をし、プリネは複雑そうな表情で黙り込み、その時ローゼリアが制止の声を上げて説明した後指示をし、ローゼリアの説明と指示を聞いたサラは二人の担任でありながらも、ミュラーとオリエによって痛めつけられた二人に対して何もできない事に唇をかみしめた。
「――――この場の”発言権”もない所か陛下達による発言の許可もなく、陛下に対する無礼な言葉を口にした二人の陛下への”不敬”……未熟な二人に代わり、自分達が謝罪の言葉を申し上げる事をお許しください、リウイ陛下。――――――誠に申し訳ございませんでした。」
「リウイ陛下もご存じのようにこちらの二人は士官学院生とはいえ、まだまだ未熟の身……その未熟をこうして身に沁みさせる事で、無礼な言葉を口にした二人にどうか陛下の寛大なお心遣いをお願いします。」
「兄上……母上……」
リウイに謝罪している様子の二人をクルトは複雑そうな表情で見つめ
「――――――いいだろう。二人の迅速な対応に免じて、先程の”人によってはその首を落とされてもおかしくないあまりにも愚かな発言”は聞かなかったことにしておいてやる。」
「リウイ陛下の寛大なお心遣い、心より感謝致します。」
「……これに懲りたら、この場での発言の許可もなく発言をしないように心がけてください。――――――当然二人だけでなく、”紅き翼”の他の方々もです。」
「承知。本来なら二人のクラスメイトである我らの役割を代わりにして頂き、申し訳ございませんでした、ミュラー少佐、オリエ殿。」
リウイの答えを聞いたミュラーはオリエと共にリウイに会釈をした後二人から離れ、オリエの忠告にラウラは会釈をして答えた。
(ひ、”人によってはその首を落とされてもおかしくないあまりにも愚かな発言”って、確かに二人に否はあるが、たったそれだけの理由で処刑とか理不尽過ぎないか!?)
(アンタね……忘れたの?メンフィルはゼムリアでは廃れた大昔の様々な文化や制度が”常識”の世界の国の一つよ?ゼムリアだって大昔は王もそうだけど貴族のような上流階級の機嫌を損ねただけでその場で斬殺―――”無礼討ち”されるなんて例もザラにあったって話なんだから、あの二人は言葉通り”命拾い”したわよ。)
(”異世界ならではの文化や常識の違い”だけで、そこまで違ってくるのか……)
小声で呟いたマキアスの文句に対してセリーヌは呆れた表情で答え、セリーヌの小声の答えを聞いたガイウスは複雑そうな表情でリウイとギュランドロスを見つめた。
「―――リウイ陛下、少しよろしいでしょうか?」
「何だ?」
その時ミュゼがリウイに声をかけ、声をかけられたリウイはミュゼに視線を向けた。
「幾らこの場に皇子殿下や皇太子殿下がいらっしゃるとはいえ、この場は非公式の場ですし、この里――”エリンの里”はメンフィルやクロスベルは当然として、エレボニアも認知していなかった領土―――つまりは”どの国にも所属していなかった領土である事から元々は中立地帯に当たる領土です。”今回の戦争の件でエリンの里が貴国と協力関係を結んでいるとはいえ、様々な思惑によって協力関係を結ばざるを得ない状況になり、それを反故することなく守り続けているエリンの里―――魔女の眷属の従順な態度に免じて、皇太子殿下達に限らず他の方々の発言も許してはいかがでしょうか?当然、陛下を含めた連合を侮辱するような言葉を除いてです。ちなみに姫様は今の私の意見についてどうお思いでしょうか?」
「そうね……わたくしもその意見には賛成ね。内戦の時も”紅き翼”の皆さんの様々な意見にわたくしは助けられてきたのだから……」
「当然、俺も文句はないぜ?そもそもオレ様自身が、”王”以前に”人として”バカな事をさんざんしてきた”バカ王”だからな。だぁっはっはっはっ!」
ミュゼはリウイに対する意見を口にした後アルフィンに確認し、ミュゼのリウイへの発言がⅦ組に対する助け船である事にすぐに気づいたアルフィンは静かな表情で頷き、ギュランドロスは豪快に笑いながら答え、ギュランドロスの答えを聞いたその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「自慢げに自分の”恥”を口にするとは、相変わらず理解し難い男だ………――――――まあいい、俺自身も元々口調や堅苦しい事についてそれ程気にしてはいないから、お前達もわざわざ発言の許可を取る面倒はせず、自分達の意見を口にするといい。」
「は、はい……!陛下達の寛大なお心遣いに心より感謝致します……!」
呆れた表情で溜息を吐いたリウイは気を取り直してミュゼの意見に同意してトワ達に視線を向け、リウイの視線に対してトワが”紅き翼”を代表して感謝の言葉を口にした。
「さてと…………話を内戦でエレボニアが我が国に対して犯した数々の愚行の謝罪の件に戻すが、先程も言ったように我らメンフィルの”怒り”は今更皇族が謝罪したくらいでは治まらん。例えその”謝罪の証”として、メンフィルがエレボニアに要求した戦争を回避する為の”3度目の要求”をエレボニアが全て呑んだとしてもな。」
「そ、そんな……どうしてですか!?」
リウイの冷酷な答えに仲間達と共に血相を変えたアリサは悲痛そうな表情でリウイに問いかけた。
「クスクス……むしろ、今の状況に陥っていながら”その程度”で戦争を止められると思っている考えが”筋が通らない考え”だと思うのだけど?」
「そ、それってどういう事なの、レンちゃん……?」
アリサの問いかけを見て意味ありげな笑みを浮かべているレンの指摘を聞いたアネラスは困惑の表情で訊ねた。
「”戦争が始まる前”ならまだ間に合ったでしょうけど、”戦争が始まった以上”、戦争中にエレボニアがメンフィルの要求を全て呑むという申し出をする事は”降伏”を意味しているから、当然”降伏条件”も戦争前の条件よりも厳しくなるという事でしょうね。ましてやメンフィルは今回の戦争で既に莫大な費用を投じているでしょうから、恐らく”降伏条件”の中にはその費用の支払いも含まれる事になると思うわ。」
「おまけにメンフィルが”賠償”として要求していた領土の一部――――――クロイツェン州を焼き払うなんてバカな真似もしでかしているからな。自分達の手で滅茶苦茶にした領土を賠償にして、その領土の復興の為の人手も出さない上復興金も支払わず復興関連は全てメンフィルの自腹なんて事は”中立の立場”である俺達からしても、幾ら何でも虫が良すぎる話だと思うぜ。」
「あ…………」
「………それは…………」
「…………………」
複雑そうな表情で答えたシェラザードの推測と呆れた表情で答えたアガットの話を聞いたエマは呆けた声を出して辛そうな表情を浮かべ、ラウラは複雑そうな表情で答えを濁し、アガットの指摘に父親が深く関わっている事をすぐに思いだしたエリオットは辛そうな表情で顔を俯かせた。
「当然”焦土作戦”の被害を受けたクロイツェン州の復興にかかった費用もそうですが、更には貴国に贈与予定だったクロイツェン州に対して”焦土作戦”を行った事に対する謝罪金も膨大な年数をかけてでも貴国の要求通りの金額を支払うつもりですし、もし許して頂けるのならば復興の為の人材もエレボニアが用意し、派遣させて頂きます……!」
「それと今回の戦争でかかった貴国の莫大な費用も支払う所存です……!ですからどうか、和解にご協力ください……!」
「ハア………―――二人とも頭を上げろ。そもそもお前達は”順序を間違っている。”よって、ここでどれだけ俺達にとって都合のいい条件を出したとしても、”今回の戦争を止める事は不可能だ。”」
頭を下げ続けているオリヴァルト皇子とセドリックを見たリウイは軽く溜息を吐いた後静かな表情で指摘し
「”順序を間違っている。”………どういう意味なんでしょうか?」
「多分だが、エレボニアに戦争を強い続けているギリアス達を何とかしてから停戦を頼めって意味なんじゃねぇのか?」
「ハッ、なるほどな………例え連合が戦争を止めたとしても、肝心のエレボニア自身が戦争を望んでいたら、連合も”敗戦”しない為にも戦争を続けざるを得ないって事か。」
「――――――そういう事ですわ。オズギリアス盆地の時にもお話したように、今のエレボニアは”呪い”によって”エレボニア全てが闘争”に染まりつつある事で、”世界を終焉に導く為に戦争を望むオズボーン宰相達はもはや止められません。”そしてそれを止められる方法は唯一つ。それは――――――」
「”世界を終焉に導く者達全てを呪いごと抹殺する事”で、それが可能なのがかつては”大陸最強”の異名で恐れられていたエレボニアを赤子の手をひねるかのように圧倒したメンフィルの圧倒的な”力”、遥か昔小国だったメンフィルが帝国に成り上がったように自治州から帝国へと成り上がる力強さがあるクロスベル、”国家総動員法”の前提を覆す事でエレボニアの人達に”迷い”を生じさせるヴァイスラント新生軍、そして遥か昔からエレボニアに巣食っていた”呪い”すらも容易に抹殺する力を持つ魔神や神々と言ったディル=リフィーナの”超越者”達だ。」
「リィン君………」
リウイに訊ねたガイウスの疑問に答えたクロウとアッシュの推測に対してミュゼは静かな笑みを浮かべて答え、ミュゼに続くように答えたリィンの答えを聞いたトワは複雑そうな表情でリィンを見つめた。
「それらによって、数え切れない莫大な犠牲者が出るとわかっていながらも、あんたはなお、連合側に着いたの――――――リィン!?」
「はい。――――――仲間や守りたい人達の為ならば、”敵には一切の容赦をしない”――――――それが”今の俺の剣”です………”人を生かす為の剣”――――――”活人剣”ではなく、ただ人を殺す為だけの剣――――――”殺人剣”を振るっている事は俺に”八葉一刀流”を教えてくれた老師には顔向けできない事と理解していますが………」
「シュバルツァー…………」
厳しい表情をしたサラの問いかけに対してリィンは決意の表情で答えた後複雑そうな表情を浮かべ、”師”を失望させる可能性があると理解していてもなお剣を振るうリィンの意志を知ったデュバリィは複雑そうな表情で見つめ
「えっと……それについては心配無用だと思うよ?むしろお祖父ちゃんはクロスベルでの迎撃戦を始めとしたリィン君の活躍を”八葉一刀流”の剣士として高評価しているし、そもそも”剣”はどんな理由があろうとも、相手に振るえば結局は相手を傷つける”力”であることに変わりはないもの。肝心なのは”剣を振るう目的”だと思うよ。」
「アネラス………」
「そうですか……」
リィンの話を聞いたアネラスはリィンにフォローと意味深な言葉をかけ、それを見ていたシェラザードは驚きの表情でアネラスを見つめ、アネラスの話を聞いたリィンは静かな表情を浮かべた。
「リウイ陛下……その………先程”順序を間違っている。”と仰いましたが、具体的にはわたし達が何をすれば、この戦争を止める為の会談のテーブルについて頂けるのでしょうか?」
「――――――”鉄血宰相”と”黒のアルベリヒ”の”首”を俺達の前に持ってこい。そうすれば、連合によるエレボニア征伐の中止についても”本気”で考えてやる。」
「!!」
「オ、”オズボーン宰相と黒のアルベリヒの首を持ってこい”って……!僕達が二人を殺せって事じゃないですか……!」
「まあ、当然と言えば当然の条件だろうね。今回の件――――――”巨イナル黄昏”を利用しての戦争の”主犯”はあの二人と言っても過言ではないからね。」
「うふふ、”頭”がいなくなれば政府や正規軍も混乱してまともに動けなくなるものね。――――――”銅のゲオルグ”や結社の残党は当然として、幾ら”子供達”であろうともそんな状況で混乱した政府や正規軍を纏められるような能力はないでしょうし。まあ、”子供達の筆頭”がまだ生きていたらパパが今言った条件に”子供達の筆頭の首”も追加されていたでしょうね♪」
「そうね……前カイエン公の代わりに貴族連合軍を纏めていたルーファス・アルバレアだったら、オズボーン宰相亡き後の政府や正規軍を纏める事はできたでしょうね。」
「…………………」
トワの質問に答えたリウイの答えを聞いたアリサは目を見開き、マキアスは悲痛そうな表情を浮かべ、アンゼリカは疲れた表情で呟き、意味ありげな笑みを浮かべたレンの言葉を聞いたプリネは複雑そうな表情で同意し、二人の会話を聞いたユーシスは目を伏せて黙り込んでいた。
「ま、待ってください……!陛下はご存じでないかもしれませんが、”黒のアルベリヒ”は――――――」
「ラインフォルトグループ会長、イリーナ・ラインフォルトの夫――――――フランツ・ラインフォルトであり、そこのイリーナ会長の娘にとっては幼い頃に亡くなったはずの”父親”なのだろう?逆に聞くが……―――”それがどうした?”」
その時エマはアリサを気にしながらリウイに意見をしようとしたが先にリウイがエマが答えようとした話を答えて問いかけ
「”それがどうした?”って……!――――――アリサにとっては大切なお父さんなんですよ!?それに”黒のアルベリヒ”はアリサのお父さんの身体を奪っていて、アリサのお父さん自身はまだ生きている可能性もあるんですよ!?それなのに、”黒のアルベリヒ”を僕達の手で殺せだなんて………!」
リウイの問いかけを聞いたエリオットは反論をした。
「それは”お前達だけの事情”だ。何故メンフィルが”赤の他人”――――――ましてや”敵国に所属している者達”であるお前達の事情を鑑みなければならない。」
「………ッ!!」
リウイが口にした冷酷な答えにアリサは辛そうな表情で唇を噛み締めた。
「でしたらオズボーン宰相は!?オズボーン宰相はそちらの”身内”であるリィンの実の父親である事が内戦終結時に判明したんですよ!?」
「その件についてもリィン達から既に聞いている。――――――が、そのリィン自身が鉄血宰相との因縁を断つためにも奴を討つつもりでこの戦争に参加しているのだから、今更鉄血宰相の件でリィンに気を遣う必要もあるまい。」
「……………」
「リィン……」
厳しい表情で反論を続けたサラの指摘に対して淡々と答えたリウイの答えに同意するかのように何も答えず目を伏せて黙り込んでいるリィンをラウラは複雑そうな表情で見つめた。
「リウイ王よ……これは実際に”黒”―――”地精”の”長”とも接触した経験がある妾の予想なのじゃが……恐らく、奴の肉体を滅した所で”黒”自身を抹殺する事はできんじゃろう。遥か昔の”黒”は別の肉体だった事を考えると、”黒”は何らかの方法によって別の肉体に乗り移って遥か昔から生き続けていたと思われるのじゃ。」
「言われてみれば確かにそうね………むしろ”今の黒のアルベリヒ”を滅したりしたら、別の人物の肉体に”黒のアルベリヒ”の”人格”が乗り移る事でそっちにとっては面倒な事態に陥るのじゃないかしら?」
その時アリサ達に対する助け船を出す為にローゼリアがリウイに意見を口にし、ローゼリアの意見を聞いたセリーヌは静かな表情で同意した。
「フム…………ならば、”黒のアルベリヒ”の”抹殺”は最終的にはセリカ達か”空の女神”達に委ねた方がよさそうだな……」
「そこで何故オレ達がクロスベルで出会ったあの人―――異世界では”神殺し”と呼ばれているセリカさんもそうだが、”空の女神”が出てくるのだろうか?」
二人の話を聞いて考え込みながら呟いたリウイの言葉が気になったガイウスは不思議そうな表情で訊ね
「”神殺し”――――――”神をも殺す絶大な力”だったら黒のアルベリヒという存在――――――要するに”魂”を”抹殺”できるからじゃないかしら?”空の女神”は……恐らくだけど、”あんなの”でも”女神”である事を考えると強力な”浄化”の神術の類も修めているでしょうから、”黒のアルベリヒの肉体ごと黒のアルベリヒの存在を浄化”―――要するに”抹消”させるような事もできるのだと思うわよ。」
「どの道、黒のアルベリヒを”フランツさんの肉体ごと消す”事には変わりないという事ですか………」
(”空の女神”を”あんなの”呼ばわりって……一体どういう人物なんですの、”空の女神”は……)
ガイウスの疑問に答えたセリーヌの推測を聞いたアンゼリカはアリサを気にしながら複雑そうな表情を浮かべ、話を聞いていたデュバリィは困惑していた。
「そういえば……先日の襲撃の撤退の際にリフィア皇女殿下が”黒のアルベリヒ”に深手を負わせた様子でしたが……あれ以降の”黒のアルベリヒ”の状態について、メンフィル帝国は何か情報を掴んではいないのでしょうか?」
「ああ、今の所はな。――――――とはいっても、”不死者”の身で”天界光”をまともに受けたのだから、少なくてもしばらく意識が戻ることはないだろう。」
「その……ちなみにその”天界光”という名前の魔術は”不死者”に対してそれ程までに強力な魔術なのでしょうか……?レン皇女殿下から、異世界の神聖魔術――――――”破邪”の魔術は悪魔もそうですが、霊体や不死者に対して特に効果的という話は聞いていますが……」
ミュゼの質問に答えたリウイの話が気になったエマはアリサを気にしつつ訊ねた。
「”天界光”とは”究極神聖魔術”とも呼ばれている事から、まさに言葉通り”神聖魔術の中でも最も高威力を誇る神聖魔術”なんです。」
「しかも魔力の高さは”神格者”にも引けを取らないリフィアお姉様が放ったんだから、威力も当然リフィアお姉様の莫大な魔力に比例しているから、普通に考えたら高位の悪魔でも”瞬殺”できる程だったのよ♪」
「なんと……異世界にはそれ程の強力な”破邪”の魔術も存在しておるのか……」
「しかもそれを撃った術者が最低でもロゼクラスの霊力があるあの皇女なんだから、むしろ”不死者”の肉体を持つ”黒のアルベリヒ”がアレを受けて存在できている方が不思議なくらいだったという訳ね。」
「…………………」
「アリサちゃん……」
プリネとレンの説明を聞いたローゼリアは驚き、セリーヌの推測を聞いて辛そうな表情で顔を俯かせているアリサの様子に気づいたトワは心配そうな表情でアリサを見つめた。
「――――――話を戻す。この戦争を止める事を俺達に本格的に考えさせる条件として”黒のアルベリヒ”はともかく、”鉄血宰相”の首を俺達の前に持ってくる事は変わらん。――――――最も、リィン達と違って未だ”人の命を奪う覚悟”すら持てないお前達にそれを成し遂げるとは到底思えないがな。」
「それは………」
「……………」
リウイの話と指摘に対して仲間達がそれぞれ辛そうな表情で黙り込んでいる中ガイウスは複雑そうな表情で答えを濁し、リィンは目を伏せて黙り込んでいた。
「あの……リウイ陛下。ロレントの大使館でパント臨時大使閣下の話を聞いた時からずっと疑問を抱いていたんですが……メンフィル帝国はリィン君達が今回の戦争にメンフィル帝国側として参加する理由が”メンフィル帝国にとっては敵国であるエレボニア帝国の為”という事を知ってもなお、リィン君達を重用している理由はやはりメンフィル帝国が”実力主義”――――――つまり、リィン君達がこの戦争でそれぞれの有能な部分をメンフィル帝国に示したからなんでしょうか?」
「それもあるが、パント達もお前達に話したと思うが元々メンフィルは内戦勃発後ユミルに軍を送らなかった件で2回に渡る貴族連合軍によるユミル襲撃を許し、その襲撃によって領主が重傷を負った挙句領主の娘のエリス嬢は拉致されて内戦終盤までは幽閉の身、跡継ぎの息子のリィンは自力で早期に脱出する事ができたとはいえ貴族連合軍の脅迫によって自ら貴族連合軍の旗艦であるパンダグリュエルに向かわされて一時的に貴族連合軍によって幽閉の身にされた為、シュバルツァー家に対して様々な”負い目”があった。そこに加えて留学後の待遇――――――特に訓練兵卒業後進路が決まっていたシュバルツァー家の跡継ぎであるリィンの留学後の待遇について本人には何も知らせていなかったからな。それらの”負い目”とエリゼやツーヤのメンフィルで築き上げた”信頼”と”実績”があるから、俺もそうだがシルヴァンもメンフィルと完全に敵対するような行為をしなければ、”多少の独断行動”には”社会勉強”を理由にして”不問”にしてやるつもりだった。――――――それこそ、リィン達がお前達と合流して”紅き翼”としての活動をしたとしてもな。」
「そ、そんな……リィン達の件については”最初から問題が無かった”なんて………」
「俺の時とは違い、既に責任がある立場も任された以上、今の陛下の話を聞いてもなお、お前達に戻る意思はないのだろうな。」
「ああ。襲撃作戦の前日にも言ったように他にも理由はいくつかある。――――――それにだ。リウイ陛下が先程仰った話――――――エリゼもそうだがルクセンベール卿がメンフィルで築き上げた信頼と実績を利用するみたいな二人に顔向けできないような事をする事を俺とエリスもそうだが、セレーネも容認すると思っているのか?」
「それは…………」
トワの質問に答えたリウイの驚愕の答えにアリサ達と共に血相を変えたマキアスは複雑そうな表情を浮かべ、真剣な表情を浮かべたユーシスの指摘に答えた後呆れた表情を浮かべたリィンの指摘に反論できないラウラは複雑そうな表情で答えを濁した。
「おい、”殲滅天使”……テメェ、”最初からリィン達の件で英雄王を納得させる為の理由は必要無かった事を知っていながら”、黙っていやがったな?」
「あ…………」
「確かに今の話を聞けば、そうとしか思えないよね。何せ”殲滅天使は英雄王の娘の一人”なんだから。」
目を細めてレンを睨むクロウの指摘を聞いたエリオットは呆けた声を出し、フィーは厳しい表情でレンを睨んだ。
「クスクス、今パパが言ったリィンお兄さん達の件に関してはレンも”初耳”よ?以前も言ったように、レンは今回の戦争の件での各国との交渉の為に”黄昏”が発動したあの日までは各国を飛び回っていたからリィンお兄さん達の件を気にしている暇は無かったし、そもそもその時点ではリィンお兄さん達はレンと直接の関りが薄かったのだから、興味も無かったもの。」
「ハッ、”本来の歴史”についての情報もオレ達にとって都合の悪い情報しか話さず、オレ達にとって都合のいい情報は黙っていた”前科”があるテメェのその言葉、信用できるかっての。」
「ハア……全くこの娘は……」
小悪魔な笑みを浮かべたレンの話を聞いたアッシュは厳しい表情でレンを睨み、その様子を見ていたプリネは呆れた表情で溜息を吐いて片手で頭を抱えた。
「ギュランドロスさん………クロスベルがメンフィルと連合を組んでカルバードを滅ぼし、エレボニアを滅ぼそうとしているのは”クロスベル問題”が原因なんだろうか?」
その時ギュランドロスの意図がずっと気になっていたガイウスは複雑そうな表情を浮かべてギュランドロスに質問をした―――
後書き
次回はⅦ組がギュランドロスの野望や過去(要するに原作の話)を知る事になりますww
後これは私事ですが、最近ようやく天冥のコンキスタをプレイし始めましたが……周回無しで経験値稼ぎによる適正レベル以上にレベルアップさせて無双するみたいな事はできない仕様は幻燐シリーズやファイアーエムブレムで経験していますから、その点に関してはまあ、コンキスタ独自の戦闘システムかという事で納得はしてます。……が、今回幾ら何でもシナリオに手抜きし過ぎじゃないか!?と思いました。グラセスタの時点で黒の杭ではほぼジェダルとリリカしか会話に参加しない状態でしたが、それでもまだそれ以外のメインシナリオに様々なキャラの出番はあったからよかったのですが、既にプレイを終えた人達の感想を見ましたが仲間にしたネームドキャラたちは以後のメインシナリオに出てこないのは幾ら何でも酷過ぎじゃないですかね……
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