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ヘタリア大帝国

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TURN44 インド独立その十一

「だからな」
「はい、今のうちに」
 これ以上攻撃を受けないうちにだった。そう話して。
 エイリス軍は撤退に移ろうとした。しかしここでクリオネが狼狽しきった声で抗議してきた。
「ここで撤退したら東インド会社が!」
「インドを失うからな」
 イギリスがそのクリオネに答える。しかも永遠になることだった。
「だからな」
「そうなったら私はどうなるの!?会社がなくなるのに!」
「アラビアだけでやっていけるか?」
「無理です!」
 必死の顔での言葉だった。
「そんなことは絶対に!」
「やっぱりそうだよな」
「勝たないと!さもなければ!」
「けれど仕方ないだろ」
 イギリスにとってもインドを失うことは辛い。そしてクリオネの気持ちもわかる。
 だが、だったのだ。今の状況となっては。イギリスは全てを承知のうえでクリオネに対しても苦い顔で告げた。
「逃げろ、いいな」
「そんな、それじゃあ私は」
「生きていれば絶対に盛り返せる」
 イギリスはその場に崩れ落ちそうになるクリオネに言った。
「いいな、ここはアラビアまで撤退するぞ」
「あの、新しいビジネスは」
「俺も考えて協力する」
 イギリスはフォローも忘れない。
「だから。いいな」
「・・・・・・わかりました」
 クリオネは何とか我を保ちながら答えた。そうしてだった。
 生き残ったエイリス軍は何とか戦場から離脱した。インドカレーからの撤退はイギリス自身が後詰を務め何とか成功した。だが、
 インドカレーでのエイリス軍の敗北は誰が見ても明らかだった。それを受けて即座にだった。
 インドは独立を宣言し日本を筆頭とした太平洋諸国はそれを承認した。連合国である筈のガメリカと中帝国、それにソビエトも。
 こうしてエイリスはインドという最大の植民地を永遠に失うことになった。イギリス妹から報告を聞いたセーラは玉座から蒼白になった顔で言った。
「そうですか」
「はい、我が軍はアラビアまで撤退しました」
「軍の損害は」
「五十パーセント程です」
 そこまでだというのだ。
「そしてスエズでもです」
「ドクツ軍がですね」
「攻撃の手を強めてきています」
 スエズもまた危機的な状況だというのだ。
「アラビア方面への援軍は難しいかと」
「わかりました」
 セーラは何とか己を保っている声で答えた。
「ではアラビアの祖国殿、そしてネルソンにお伝え下さい」
「何とでしょうか」
「インドでの戦い、ご苦労でした」
 責めなかった。労いの言葉だった。
「そしてアラビアにおいても健闘を祈ると」
「そう伝えるのですね」
「はい。勝敗は戦争の常」
 セーラは無念に思う気持ちを必死に押し殺しながら述べた。
「それならばです」
「わかりました。それでは」
「騎士道に恥ずべきことがなければ」
 騎士を率いる女王、その立場からの言葉だった。
「責を問うことはありません」
「そう仰るのですね」
「そうします。では」
 セーラはすぐにこの命令も出した。
「スエズのモントゴメリー提督にお伝え下さい」
「何とでしょうか」
「スエズを死守して欲しいと」
 こう伝えて欲しいとだ。セーラはイギリス妹に話す。
「そうして下さい」
「わかりました」
「そしてです」
 セーラはさらに言う。
「エイリスを守って欲しいと」
「インドに続いてスエズまで失えば」
「エイリスはアフリカも守れなくなります」
 アフリカもまたエイリスにとって重要な植民地だ。そこを失えばエイリスはさらに苦境に陥ることは間違いなかった。だからこその言葉だった。
 
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