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夜雀

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第三章

「うむ、言った通りにしておるな」
「どうしてもという時には」
「お経を読みな」
「心を休めるべきですな」
「左様、そしてな」
 そのうえでというのだ。
「落ち着くのじゃ」
「そうすればよいですな」
「人は常に心が静かならば」
「ことを仕損じることもない」
「落ち着いておることじゃ」
 まずはというのだ。
「如何なる時もな」
「それで、ですな」
「今もじゃ」
「この様にして」
「心静かにするのじゃ」
「わかり申した」
「さて、今度はじゃ」
 天海は夜の中に見えるものをさらに話した。
「蝶々が出て来たな」
「噂通りに」
「これもじゃ」
 その無数の蝶々の様なものもというのだ。
「心静かにすれば」
「それで、ですな」
「よい、ではな」
「和上はそのままで」
「そなたはどうしてもならな」
「お経を唱えてですな」
「心静めるのじゃ」
「わかりました」
 僧は頷き無数の蝶々の様なものが出てもだった。
 お経を唱え心を静めた、天海は全く動じておらず。 
 二人は暫くそのままでいるとだった。
 やがて蝶々達はいなくなり声も聞こえなくなった。場は至って静かになった。
 この状況について僧はこれはという顔で言った。
「いや、何時の間にか」
「いなくなったな」
「何も」
「これが夜雀の退治じゃ」
 天海は僧に笑って話した。
「別にこちらはじゃ」
「何もすることはない」
「うむ、そしてな」
 そのうえでというのだ。
「これでな」
「全ては終わりですか」
「左様、あやかしの中にはな」
「こちらが心を静めればですか」
「あちらからいなくなるものもおる」
「それが夜雀ですな」
「そうじゃ、そしてじゃ」 
 それでというのだ。
「よい後学になったな」
「心静めればですな」
「それでいなくなるあやかしもおる、そしてな」
 天海はさらに話した。
「あらゆることにおいてな」
「心静めることですな」
「そうしてことにあたればな」
「何も問題なくてですか」
「ことを収められる」
「そういうものですか」
「左様、では寺に帰るか」
「わかり申した」
 僧は師の言葉に頷いた、そうして共にその場を後にした。そして翌日天海は秀忠にことの次第を話した。
 すると秀忠はこんなことを言った。
「いや、あっさりとな」
「話が終わったと」
「思っておるが」
「あやかしといえども心静かにすれば」
「どうということはないか」
「夜雀も然りで」
 そしてというのだ。 
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