動かなくなった子犬が
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第二章
ミミを見守っていると遂にだった。
ミミは子供を産んだ、その子供達は夫が言った通り七匹だった。
茶色の子、背中が丸い茶色で白い毛の子、頭が茶色い白い毛の子、足の先が白い茶色の子、背中や頭が茶色で腹や足が白い子、白の子、そして背中と頭が丸い茶色の白い毛の子の七匹だった。美和はその子達を見て言った。
「皆生まれたね」
「ええ、今ね」
母は娘に微笑んで答えた。
「生まれたわ」
「皆すぐに動きだしてるね」
「ワンちゃんの赤ちゃんはこうなのよ」
「生まれてすぐになの」
「動きだすの、ただ生まれてすぐだから」
母は娘にこうも言った。
「身体弱いから触らないでね」
「うん、そうするね」
「生まれて少し経ってからね」
それからだというのだ。
「触る様にしてね」
「そうするわね、ただ」
ここでだ、美和は。
背中と頭が丸く茶色のなっている白い毛の子犬を見て言った。
「あの子何か」
「あっ、あの子だけ元気がないわね」
「大丈夫かな」
「沢山生まれるとこうした子もいたりする場合があるの」
「身体弱い子がなの?」
「そうよ、人間も身体が弱い子が生まれたりするのよ」
娘にこのことも話した。
「時々ね」
「だからワンちゃんもなの」
「そうなの」
「あの子大丈夫かな」
「それはね」
どうかとだ、母は娘に言葉を選びながら答えた。
「人間も生まれてすぐに死んじゃうこともあるから」
「だからあの子もなの」
「わからないわ」
見ればその子犬は弱々しくあまり動かず。
やがて動かなくなった、それを見て美和は言った。
「死んじゃったの?あの子」
「そうみたいね、こうしたこともあるの」
「そうなの」
「お墓作ってあげましょう」
母もその子犬が死んだと思って言った。
「そうしてあげましょう」
「うん、わかったわ」
「けれどミミも他の子もずっと見てるから」
その死んだ子をというのだ、見ればミミも他の六匹の子達も皆その死んだ子犬を悲しい目で見ている。
「今夜はそのままにしてあげましょう」
「ミミの傍に置いておくの」
「それで朝にね」
明日の朝にというのだ。
「お墓作ってあげましょう」
「わかったわ」
美和は母の言葉に頷いた、そうしてだった。
この日一家はその子犬のことを重いながら夕食を食べて風呂に入って寝た、そして次の日の朝だった。
父は起きるとすぐに妻と娘に言った。
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