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愛されなかった者同士

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第四章

「かなり治ったよ」
「よかったな」
「飯もどんどん食うしな」
「元気な証拠だな」
「飼いはじめた時周りから色々言われたよ」
「汚い猫飼ってどうするか、とかか」
「病気うつるとかな」
 そうしたことをというのだ。
「言われたさ、けれどな」
「そんなことなかったな」
「獣医の人そんな病気ないって言ってたぜ」
「診察してわかるな」
「ああ、だからな」
 それでというのだ。
「外見だけで判断するな」
「そういうことだな」
「人も猫もな」
「本当にそうだな」
「一緒に暮らしてみたらな」
 ジュリエットを見たままさらに言う。
「人懐っこくて優しくてな」
「いい娘なんだな」
「遠慮がちでな」
「そんないい娘か」
「そうだよ、俺にもよく懐いてくれてな」
「その娘ずっと愛されてなかったな」
 ここでだ、スペンサーはマイヤーに言った。
「そうだったな」
「絶対にな」
「お前もそうだったな」
「ああ、そう言われたらな」
「お前もその娘も同じだな」
「愛されなかった者同士か」
「それが一緒になったってな」
 スペンサーはマイヤーに微笑んで言った。
「それも縁だな」
「そうだな、じゃあな」
「これからだな」
「愛されなかった者同士、お互いに愛情を以てな」
「暮らしていくか」
「そうするな」
「そうしていけよ、今のお前の笑顔いいしな」
 今度は彼の表情を見て話した。
「前はやたら寂しい笑顔出してたけれどな」
「今はどんな笑顔だ?」
「凄く優しい、いい笑顔だぜ」
「そうか、じゃあこの笑顔のままでな」
「生きていける様にするか」
「そうしていくな、ジュリエットもその方がいいよな」
「ニャン」
 ジュリエットはマイヤーの言葉に一声鳴いて応えた、彼の傍で蹲ったまま鳴いたが明るく優しい返事だった、そしてその表情も。
 にこやかなものだった、マイヤーはその表情を見てまたスペンサーに言った。
「こいつとずっと一緒に暮らしていくな」
「そうしていけよ」
 スペンサーもこう返した、そうしてだった。
 二人でジュリエットを見ながら彼女のことをさらに話した、マイヤーは時々ジュリエットを撫でた。するとジュリエットはその度に喉をゴロゴロと鳴らした。


愛されなかった者同士   完


                2020・6・23 
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