喫茶店の犬達
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第一章
喫茶店の犬達
東海林美里はかつてはトリマーをしていたが結婚し男の子が三人生まれてトリマーをするだけの時間的余裕がなくなった、だがそれでも夫の稼ぎに加えて他の収入がないと子供三人を育てるには不安を感じてだった。
父親が経営している喫茶店でパートをはじめた、茶色の髪の毛を後ろで束ねて左に垂らしている、おっとりした顔立ちで三十代後半の年齢に相応しく最近目尻に皺が出来てきていて身体全体に肉はついてきている。背は一六〇程である。
その彼女が急に隣の家の一人暮らしの老婆である早乙女文子に言われた。
「ずっと飼っていたうちの子達だけれど」
「ワンちゃん達ですね」
美里は老婆に家に招かれてその話を聞いて述べた。
「あの子達のことですか」
「もう身体が動かなくなって子供達と話して老人ホームに入ることになったから」
「だからですか」
「よかったら東海林さんのところで引き取ってくれないかしら」
「そうですね、あの子達もですね」
美里は老婆の言葉に応えた、ずっと親しく付き合いをしている間柄でお互い助け助けられてしてきた。その義理もある。
それでだ、彼女も親身な声で答えた。
「私でよかった」
「お願い出来るかしら」
「任せて下さい」
「それならね、本当にね」
ここでだ、老婆は。
切実な顔になってそうして美里に頼み込んだのだった。
「可愛がって大事にしてあげてね」
「ワンちゃん達をですね」
「どちらの子も」
「はい、ギンちゃんとシルバーちゃんですね」
「ええ、雄のコーギーの子がギンで」
犬のその名前のこともだった、老婆は美里に話した。
「チワワの子がシルバー、この子も雄なの」
「どちらの子もですね」
「可愛がってあげてね」
「わかりました」
美里は老婆に誠実な言葉で答えた、そうしてだった。
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