犬が来てよかった

「猫の相手するか」
「奥さんと娘さんは」
「ははは、女房は娘ばかりで娘は今ある声優さんに夢中でな」
　それでとだ、課長は狗飼に笑って話した。
「俺のことはどうでもいい感じだな」
「そうですか」
「まあ女房とは夜の方はあるけれどな」
「ああ、そうなんですね」
「だからいいけれどな、しかし女の子の家はこんなものだ」
「世知辛いですね」
「その世知辛いものもいいものだよ」
　笑っての言葉だった。
「これがな」
「そういうものですか」
「ああ、結婚して女の子が出来ればわかるさ」
　その時にというのだ、こうした話をしてだった。
　課長は狗飼と最寄りの駅まで一緒に帰った、そしてだった。
　狗飼は家に帰るとすぐにポチの散歩に出た、すると。
　そこでマキの散歩に行く紅葉と会った、二人で夜の挨拶をしてからだった。紅葉の方から狗飼に対して言ってきた。
「今日もご一緒に」
「散歩しますか」
「そうしましょう、それでお散歩が終わったら」
「その時はですね」
「晩ご飯ハヤシライス作りましたから」
　それでというのだ。
「そちらもご一緒に」
「いつもすいません」
「いえいえ、気にしないで下さい」
　二人で笑顔で話してだ、そしてだった。
　一緒に犬の散歩をした後で紅葉の部屋で彼女が作ったハヤシライスを食べた、その時に狗飼はテーブルの横で自分達のご飯を食べているポチとマキを見た。すると。
　二匹も仲がいい、それで食べつつ楽しそうに話している感じだった。
「ワン」
「ワンワン」
「この子達も仲良くなりましたね」
　狗飼はその二匹を見て笑顔で話した。
「すっかり」
「そうですね、何かこの子達見ていたら」
　紅葉も笑顔で話す。
「癒されますね」
「本当に。犬っていいですよね」
「一緒にいるだけで幸せになれますね」
「そうですよね」
「犬は人の友達ですから」
「そうですよね」
　二人でこんなことを話してだった。
　それぞれの犬を見ながらそうして笑顔で夕食も食べた、そうした日々を少しているうちに。
　狗飼は紅葉と交際する様になって結婚した、これに実家の両親も喜び。
　息子の後で娘が出来た時課長この時は副部長になっていた彼の言葉を思い知った、だがそこでもポチがいてそしてマキもいてだった。
　狗飼は彼等の相手をした、だが紅葉はマキの相手もしていてだった。
　紅葉との絆は続いた、彼の幸せはそのままだった。
　

犬が来てよかった　　　完


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２０２０・６・２１