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おっちょこちょいのかよちゃん

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57 昇天後の地

 
前書き
《前回》
 2学期が始まり、かよ子達は始業式の後、杉山達組織「次郎長」や長山、冬田と共に秘密基地へと訪れる。その場で組織「義元」の四人組や森の石松とも再会。そして石松がこの世に戻って来た理由・経緯をかよ子達は聞く事になるのだった!! 

 
 石松は皆に死後の自身の行動を語る事にした。
(石松の物語ってどんなんだろう・・・)
 かよ子は石松についてより知りたくなった。

 金比羅山の参りの帰路の途中、遠江(今の静岡県浜松市)にて都田の吉兵衛に騙し討ちに遭って斬られた森の石松は死後の魂が何処(いずこ)へ向かうか知る由もなかった。
(親分、申し訳ありませぬ・・・)
 石松は自身が騙し討たれ事を情けなく思い、また、親分である清水の次郎長への罪悪感で溢れていた。

 そして、長き眠りの後、石松は目がようやく覚めた。ここは極楽か、それとも地獄か・・・。
「ここは・・・」
「貴方が日本という国にいました『森の石松』ですね?」
 石松の視界に入ったのは二人組の男女だった。
「ああ、そうであるが、お主らは?」
「私はフローレンス。こちらはイマヌエルです。ここは平和を司ります世界。生の世界にて人々への人情と平和と思いやり、いずれかの心を持っていました人物が入ります事を認められています」
「君はその人情が認められこの地に来たのだよ」
「某が、か・・・。親分に取り返しのつかぬ失態を犯したというのに・・・」
「そんな事はございません。貴方の親分、清水の次郎長は貴方を最も信頼しておりました。都田の吉兵衛は貴方の親分によってその仇討ちを喰らいました。親分であります次郎長に感謝なさい」
「ああ、そうであるな・・・」
「ですが、この世界では斬ります事は必要ありません。貴方がおりました日本も文化を変遷させておりまして、ただ人を斬り殺しまして静粛させます時代は廃れつつあります」
「誠であるか!?」
「はい、ただ人を殺害します事は命の尊さを考えません愚かな行為とされつつあります」
「つまり、君も生前の自分とは考えを改めなければならないという事だよ」
「そうか、分かった。某も考えを改めよう」
 石松は自身の考えを変えるべく、己の修行を行う事にした。

 そして、石松は人をあっさり斬る事は人権を壊す事になると知り、斬るためにはまず非人道的な人間のみにする事であると己に悟った。
「よし、己は時代に合わせられた!」
 石松はそう確信した。その時、石松を呼ぶ声がする。嘗て聞き覚えのある声だった。
「石松。元気にしておったか」
「ん・・・?お主らは、大政と小政ではないか!!」
 石松を呼んだ二人組の男は自身と同じく次郎長の子分であった大政と小政だった。
「我々はこの地で以前と生き方を変えたのだ」
「ああ、某もだ。単に斬り捨てるのは時代遅れと聞いた。時代は変わりつつあるのだな。この地でまた共に生き、我々が生きていた世を見守ろうではないか」
「そうだな!」
 そして石松は他の子分仲間とも再会をする事ができたのである。

 だが、あの世は必ずしも間違えた方向に行ってしまった。第二次世界大戦によって、日本は負けた。石松らの親分がいた駿河、今の静岡県・清水も空襲によって壊滅的な被害を受けてしまった。
「ああ、何という事を・・・!!親分が栄えさせた駿河の地を・・・!!」
 石松も、大政も、小政も、悔しがり、大いに泣いた。
「貴方達」
 石松の所にフローレンスが現れた。
「貴方達の国が焼け野原になりましたその悲しみ、私にもよく分かります。祖国が惨めな目に遭います事は誰にでも我慢できます事ではありませんから」
「我々に何とかできぬか?」
 石松はフローレンスに頼み込む。
「この世界の全ての人々もこの大戦に悲観的になられておりますが、多くの人々が安易に現世に向かいます事はあの世のバランスを崩す怖れがあります。私やイマヌエルで何とかやってみましょう」
 フローレンスは石松達の元から去った。
「本当に、我らが国は元に戻れるのか・・・?」
 石松は祖国の復興を願った。

 フローレンスはイマヌエルと対談していた。
「ドイツや日本など、多くの敗戦国が苦しんでおられます。何とかできましたらよいのですが」
「そうだな。我々も動かぬわけにもいくまい。特に日本の壊滅的な被害は私も見ていられない。さらに原爆とか言うものを落とされた地の人間は大いに苦しむ事になるだろう。よし、最大限の尽力をしよう。その為のあの四つのアイテムを授けるのだ」
「あの最上位の能力(ちから)を有しますものをですか?」
「ああ、一時的にだ。あの国には寺とか神社とかいう日本の神や仏を祀るものが多い。そこの神にはここの世界と向こうの世界を繋げる事ができるからな、交渉してみよう」

 石松は本当に日本の再生は成功するのか半ば不安だった。
(どうか・・・。我が駿河を・・・!!)
「石松」
 フローレンスが現れた。
「日本に住んでおられます四人の子供にこの世界の重要な道具を授けました。ご安心なさい。そしてその能力(ちから)できっと日本は復興の道を辿りますでしょう」
「ああ、ありがとう。フローレンス。だが、『重要な道具』とは?」
「それにつきましてはこの世界でも最大の機密情報となります為、お教えはできませんが、ただ一つ言えますのは、この世界でも最上位の能力(ちから)を持ちます道具です。今私達にできます事はそれだけではありますが、その道具で日本の復興を促します道に繋げます事ができますでしょう」
「ありがとう。某もその復興の様子を見守りたいと思う」
 石松は大政や小政、その他の同志達と共に自身の国の復興を見守った。そして人々は食糧難から脱却し、新たな建物が作られ、町は急速に各地の要となる都を中心として発展していき(あちらの世界では高度経済成長というらしい)、江戸、今の東京でオリンピックという国際的な競技が催されるという戦前以上に賑わったのである。 
 

 
後書き
次回は・・・
「敵勢力の出現」
 石松が死後住んでいた世界は平和を司る場所ではあったが、決して安泰ではなかった。ある時、戦争を正義とする世界の人物が襲撃に現れる。石松は彼らがどのような人物か、そして戦争を正義とする世界とはどのようなものか、フローレンスとイマヌエルに質問する・・・。
 
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