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幸せを招く猫

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第一章

                幸せを招く猫
 少し薄い感じの色の黒髪を少し乱れた感じのボブで色白である、中性的な顔立ちで目は垂れ目で全体的に弱い感じだ。
 荒巻壮太はこの時正直落ち込んでいた、それで数少ない友人である同じ大学の同じゼミの伊丹吾郎に携帯で話していた。
「バイト先潰れたよ」
「それはまた災難だな」
「しかも中々就職先見付からないし」
 大学四年で就職活動中だ、それでこちらもなのだ。
「しかも家族がな」
「どうしたんだ?」
「最近親父もお袋も調子悪いらしくて」
「不幸が続くな」
「正直参ってるよ」
 こう言うのだった。
「本当に」
「この前彼女とも別れたんだったな」
「ああ、色々あってな」
「相手の娘が好きな相手出来てだったな」
「しかも相手女の子な」
「やれやれだな、同性愛は悪いことじゃなくてな」
「何て言っていいかわからないよ」
 荒巻は本音を出した、住んでいるアパートの中もどうも暗い。
「色々碌なことがなくてな」
「そうだよな」
「バイト先探さないといけないし」
「就職のこともな」
「それとな」
 さらにというのだ。
「親のこともな」
「正直辛いな、けれどいいこともあるさ」
「そう言ってくれるか」
「世の中雨も降るけれどな」 
 実際に外は雨だ、それで伊丹も言ったのだ。
「晴れる時もあるさ」
「それでか」
「ああ、腐るなよ」
 こう友人に言った。
「いいな」
「そうしたいな」
「今は無理かも知れないけれど出来るだけ笑っていろよ」
 伊丹は友人に言った、そしてだった。
 ここで電話を切った、荒巻は正直これからどうしたものかと電話を終えてからも思ったがそこでだった。
 玄関から声がした、その声はというと。
「ニャ~~ン」
「猫?」
 荒巻はその鳴き声に反応して玄関の方に行った、そうして。
 翌日話を聞いて部屋に来た伊丹、黒髪をオールバックにしている一七〇位の背のがっしりした体格の彼にその猫を見せて話した。
 猫は白くてはっきりした目鼻立ちをしている、目は青緑だ。生まれてまだ二ヶ月といったところだった。
 その猫を見て伊丹は猫を膝に置いて自分と向かい合っている荒巻に言った。
「昨日電話の後でか」
「そのすぐ後になんだよ」
 荒巻は伊丹に話した。
「玄関で鳴き声がして」
「扉を開いたらか」
「この子がいたんだよ」
「そうだったんだな」
「ああ、そしてな」
「そして?」
「この子雄だから大吉って名前にしたよ」
 このことも話した。
「もうな」
「そうだったんだな」
「そう、そしてな」
 それでというのだ。
「うちはペットいいからな」
「飼うって決めたか」
「そうするよ」
「それはいいけれどな」
 それでもとだ、伊丹は言った。
「一ついいか」
「どうしたんだ?」
「猫を飼うのはよくてもな」
 それでもというのだ。 
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