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傍にいてくれている家族

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第一章

                傍にいてくれている家族
 母の佐倉楓が茶色の毛のトイプードル、随分汚いそして不愛想な感じの犬を家に連れて来たのを見て文音はこう言った。
「何、その子」
「さっき山で見付けたのよ」
「山に捨てられた犬?」
「そうみたいね、野良犬になったら可哀想だから」
 それでというのだ。
「うちで飼いましょう」
「そうするのね」
「番犬にもなるしね」
 母は茶色の髪の毛を短くして大きな垂れ目を持つボーイッシュなスタイルの小柄な娘に対して笑顔で話した。文音は小学六年であるが六年生にしては小柄と言われている。
「だからね」
「それでなのね」
「そう、この子飼いましょう」
「番犬ね」
「ええ、用心の為にね」
「この街平和だけれどね」
 文音は自分達が住んでいる街の話をした、人口は六万人程で少し行けば山が連なっている。実際に文音の家のすぐ傍も山だ。母がその山からその犬を連れて来たこともわかった。
「山に猪とか蝮出る位でしょ」
「その猪や蝮よ」
「人里に下りた時になの」
「鹿や狸だって家の畑荒らすでしょ」
「それも厄介よね」
「そうしたのの番犬でね」 
 その為にというのだ。
「この子飼いましょう、吠えてくれるだけでも全然違うから」
「それで鹿とか逃げるから」
「そう、私達も気付くしね」
 そうした獣害を起こす生きものが出て来たことにだ。
「だからよ」
「そのワンちゃん飼うのね」
「そうしましょう、いいわね」
「それじゃあ」
「お父さんとお兄ちゃん達にも話すわね」
 文音の二人の兄にもというのだ、こうしてだった。
 母が拾って来た犬は文音の家の犬になった、名前は上の兄の健祐が雄ということでプー太と名付けそれでいくことになった。
 プー太は家の畑に何か来れば吠えたりするがあまり動かず家族にもあまり懐いていない感じだった、拾ってきた母には懐いたが他の家族にはだった。
 あまり懐かず文音はこう言った。
「私にもね」
「俺にもだ」
「俺にもだよ」
 上の兄も下の兄の建弥も言う二人共母親似の妹と違い父親似で髪の毛は黒く目は吊り目で背も高い。
「何かな」
「お母さん以外には懐かないな」
「挨拶もしないしな」
「普段は寝てばかりだしな」
「ずっとお家のお庭で寝ていて」
 文音はプー太のその普段の話もした。
「それでね」
「ああ、ずっとな」
「そこにいるだけだな」
「まあ畑に鹿とか狸来たら吠えて」
 そうしてというのだ。 
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