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戦国異伝供書

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第九十一話 会心の夜襲その十一

「そしてじゃ」
「そのうえで」
「戦ってもらう」
「尼子家との戦では」
「そうしてもらう」
「そのことはな」
 まさにというのだ。
「誓ってもらう」
「そうした戦だと」
「是非な」
「当家が滅びるか」
「これから栄えるか」
「そうした戦になる」
「そのことをですか」
「兵達にも伝え」
「戦ってもらう」
「そうじゃ、しかしな」
 それでもとだ、元就はさらに話した。
「わしは確信しておる」
「尼子家にも勝てると」
「さもなければそうは言わぬ」
 決してというのだ。
「だからな」
「戦われますか」
「これよりな、しかしな」
「しかし?」
「わしの謀は今まで成功しておるな」
「お見事です」
 それはとだ、志道も答えた。
「そのことは」
「左様じゃな、だが」
「それは、ですか」
「これまでは並の相手であった」
「並の相手でないなら」
「どうであったか」
 それはというのだ。
「わからぬ」
「左様ですか」
「武田や長尾のご子息」
 それにというのだ。
「そうした御仁達にはな」
「効かぬと」
「そして薩摩のな」
「島津家にはですか」
「効かぬとな」
 その様にというのだ。
「思っておる」
「その謀は」
「そうじゃ、謀略は効く相手にはよいが」
 しかしというのだ。
「効かぬ相手にはな」
「使いませぬか」
「使ってはな」
 その時はというのだ。
「倍に返される」
「そうされるからこそ」
「わしは使わぬ、まして」
 元就はこれまでにない強い言葉で述べた、それはまさに自身の力量を知っているかの様な言葉であった。
「天下人の器を持つ御仁には」
「全くですな」
「使わぬ」
 絶対にという言葉だった。
「謀は恐ろしいものだからな」
「だからこそ」
「謀は返されると倍になる」
 元就は言った。
「だからな」
「迂闊には使えぬものですか」
「見破られた謀は効をなくし」
 そしてというのだ。
「そこからな」
「返されるので」
「倍になるからな」
 返されるものはというのだ。
「それ故にじゃ」
「殿もですか」
「迂闊には使われぬ」
 元就はさらに言った。 
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