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夢幻水滸伝

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第百三十六話 二度目の勝利その八

 そしてだ、遂にだった。
 芥川の腹を如意棒の突きが、左胸を矢が貫いた。それぞれの一撃には確かな実感があった。
 施は勝利を確信した、しかし。
 芥川はそこにはいなかった、忍者装束の上の部分が人体に似た形の木に上から着せられた形で狐の背にあった。
 それを見てだった、施は何かと思った。
「これは!?」
「移し身の術か!?」
 白澤も声をあげた。
「これは」
「また忍術か、となると」
「まずいで」
「ああ、これは」
 咄嗟にだ、施は警戒した。それは一瞬だった。
 だがその一瞬が命取りだった、一瞬のその驚きに隙が出来たのだ。そしてその隙を衝いてであった。
 芥川が後ろに出た、そうして咄嗟に振り向きつつ間合いを開き一撃をかわした後で矢を放とうとした施の背を。
 大通連で切った、命取りの一撃こそかわしたがそれが決め手になった。
 施は背中を切られるともう一体が消えて一体になった、そうして忌々し気に言った。
「しもた、今ので」
「決まったな」
「ああ、もう闘えん」
 施は自分から言った。
「自分の負けや」
「そう言うか」
「ほんまにな」
 実際にとだ、芥川に話した。
「この一撃は」
「そうか」
「よおやった、今のはな」
 まさにと言うのだった。
「一瞬やが反応が遅れた」
「さっきは幻術を使ってそしてな」
「姿を消してやったな」
「仕掛けたが」
「今度はやな」
「この術を使ったんや」
 移し身のそれをというのだ。
「それをや」
「それでやな」
「一瞬、その一瞬だけでよかった」
「自分を戸惑わせることは」
「その一瞬で僕は自分の背中に出てや」
 そうしてというのだ、見れば芥川は今は忍装束の上着を着ていない、白い装束の下に着る着物洋服で言うシャツを着ている。
「そしてや」
「切ったんやな」
「忍法移し身の術、知ってたやろ」
「一応な、しかしな」
「こうした時に使うと効くやろ」
「ああ、頭を使った戦やな」
「それを使ってな」
 そしてというのだ。
「勝ったんや」
「そういうことやな、土壇場でやられるとな」
「強い術やろ、しかし自分が一瞬でも早く気付いてたらな」
 その時はどうなるかともだ、芥川は話した。
「僕は負けてた」
「まさに紙一重やったんやな」
「冗談抜きでな、いい一騎打ちやったわ」
「ほんまにな」
 負けた施もそのことは認めた、勝敗を決した二人は今は敵同士ではなくなっていた。お互いに健闘を讃え合うだけであった。 
 中里は羅と闘っていた、麒麟に乗る羅は青龍偃月刀を水車の様に縦横に使いつつ術も放つ。そして周りには。
 赤、橙、黄色、黄緑、緑、青、紺、紫のそれぞれの色の七匹の巨大な龍達が荒れ狂い中里に襲い掛かる。中里は鵺に乗ってだった。
 空中を飛び羅の攻撃とその龍の攻撃をかわしていた、鵺は宙を舞って攻撃をかわしつつ中里に言った。
「なあ、正直な」
「ああ、これはな」
「かなりやばいで」
「羅だけでも強いが」
 青龍偃月刀と術で闘う彼もというのだ。 
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