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眠れない夜は

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第四章

「お豆腐もです」
「よく食べるといいのですね」
「はい、どちらもお嫌いですか」
「そうでもないです」
 渋沢が嫌いな食べものは貝類やゼンマイ等山菜だ、それに茸類も嫌いだ。だが牛乳や豆腐はあまり食べないだけでだ。
 嫌いではない、それで医師にも答えた。
「別に」
「ならです」
「そうしたものをですね」
「召し上がられて下さい、そうすれば」
「便秘もですね」
「治ります、若しそれでも無理なら」
 その時のこともだ、医師は話した。
「下剤となります」
「とにかくですね」
「便秘も治されて下さい」
「わかりました」
 渋沢は医師の言葉に頷いた、そしてだった。
 実際に妻と夜の時間を持ち彼女にも話してだった。
 毎日牛乳を飲み豆腐や牛蒡、薩摩芋や人参といった野菜の料理も増やしてもらった。するとすぐにだった。
 便秘の問題も解消された、それでだった。
 渋沢は仕事の後で増田と居酒屋に入ってそこで焼酎やビールを飲みつつ話した。
「いや、もう夜はね」
「寝られる様になったんだね」
「うん、確かに夜はね」
「奥さんとの生活はなかったんだね」
「そうした気持ちがなくなっていてね」
 それでというのだ。
「ずっとなかったしね」
「しかも便秘だったんだね」
「そうだったよ、けれどね」
 それがというのだ。
「奥さんと意識してそうした時間を持って」
「奥さんも付き合ってくれているんだね」
「どうも奥さんの方は待っていて」
「ああ、男は三十代からそっちの欲求はがたんと落ちるけれどね」
 増田は焼き鳥を食べつつ言った。
「けれど女の人はね」
「三十代からっていうね」
「それで四十代でもね」
「結構だね」
「そうだっていうからね」
「それで、みたいなんだ」
「君の奥さんもだね」
「待っていて僕がしようって言ったら」
 それでというのだ。
「付き合ってくれているよ」
「それはよかったね」
「それで牛乳とかお豆腐を食べて」
 そしてというのだ。
「そうしたお野菜も食べる様になったら」
「便秘もだね」
「治ったよ、ちなみに牛乳とお豆腐を食べて」
 そしてというのだ。
「牛蒡とか食べて大根のお汁も飲んだら」
「便秘はなんだ」
「僕の場合は解決したよ、そしてね」 
 渋沢は焼酎を飲みつつ増田に笑顔で話した。
「もう毎晩ね」
「すっきり寝られる様になったんだね」
「そうなったよ」
 増田に満面の笑顔で話した。
「有り難いことにね」
「それは何よりだよ、じゃあこれからも」
「よく寝られる様にね」
「奥さんとの夜の生活も楽しんで」
「そしてね」
 それでというのだ。
「食べものにも気を付けていくよ」
「それで今もだね」
「そう、これを食べているんだ」
 渋沢は増田に笑顔で応えた、そうして肴の冷奴を食べた。それはただ美味しいだけでなく今の彼には福音にさえ思えるものだった。そちらも食べつつ今日もよく寝られる日になるだろうと心の中で思い実際にそうなることが出来て幸せを感じた。


眠れない夜は   完


                2019・12・22 
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