普通の人
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第四章
「本当に」
「あなたもね」
「私も?」
「そうよ、付き合ってるでしょ」
友人は自分の言葉に驚いた顔になっている美菜子にこうも言った。
「そうでしょ」
「それは夫婦だから」
「夫婦でもよ、本当に嫌だったらね」
その時はというのだ。
「断るわよ」
「そうするものなの」
「けれどあれこれ言っても毎晩付き合ってるのはね」
それはというのだ。
「あんたもよ」
「普通じゃないっていうの」
「大体お互い毎晩ってのが凄いわ」
もうこの時点でというのだ。
「女の人はそうしたことは三十代からっていうけれどね」
「そんなことも言われるわね」
「けれどね」
「それでもなのね」
「あんたは毎晩だから」
それでというのだ。
「三十代も後半になると体力落ちてそうした元気もなくなるのに」
「私はそれは別に」
「だからそうなること自体がね」
「凄いっていうのね」
「そうよ、かなりのものよ」
「そうだったの」
「そう、けれど夫婦仲がいいことはそれだけでいいことだし」
それでとだ、友人は美菜子に微笑んで話した。
「これからもご主人とね」
「仲良くっていうのね」
「やっていけばいいわ」
こう言うのだった。
「普通じゃない人同士でね」
「私は普通だって思っていたけれどね」
「そう言うけれど誰だって何処か普通じゃないところあるでしょ」
「そう言われるとね」
「だったらね」
それならというのだ。
「私もそうだし」
「あんたも」
「実は競馬好きだし」
「競馬するの」
「そう、旦那には内緒だけれど」
それでもというのだ。
「女だけれどね」
「競馬するのね」
「そんなところもあるし。誰だって普通じゃないところあるわよ」
「人間完全に普通の人はいない」
「そういうものでしょ、だったらね」
「私の場合は」
「そうしたところが普通じゃないってことで」
それでというのだ。
「やっていけばいいわ」
「そういうことね」
「ええ、普通の人同士仲良くね」
友人はここではあえて美菜子も不忍も普通と言った、そしてだった。
美菜子に今度は最近話題のタレントの話題をはじめた、美菜子もそれに乗ったがこの時の二人は普通の人の顔だった。
普通の人 完
2019・11・12
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