大阪のすねこすり
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第一章
大阪のすねこすり
和田静香は八条学園高等部の一年生で陸上部では期待されている、黒のショートヘアに強気な感じの大きな目と髪の毛と同じ色の短い眉に元気のよさそうな顔立ちと明朗闊達で細かいことにこだわらない性格から男みたいに思われている、背は一六四程で胸はかなり大きい。
家は大阪市西淀川区にあり毎日そこから神戸の学校に通っている、登下校は同じ学校で同じ部活でしかも同じ西淀川区に住んでいる長谷部牧水と一緒だ。
牧水は一七〇程の背で痩せた身体をしている、垂れ目で穏やかな顔立ちで黒髪を短くしている。陸上部では長距離走でハードルの静香とは同じ陸上部でも分野が違っている。
その牧水に静香は帰りの電車で隣の席に座りながら明るい声で言ってきた。
「帰りに駅前の八条バーガー行こうか」
「おい、帰ったらすぐに晩ご飯だろ」
牧水は明るく言う静香にこう返した。
「今食ったら晩ご飯入らないだろ」
「そっちも食うから大丈夫だよ」
静香は口を大きく開いて笑って言った。
「だからさ」
「食おうっていうのかよ」
「そうそう、ハンバーガーな」
「部活で腹減ったんだな」
「やっぱり走って跳んでで腹減るじゃない」
静香ははっきりと言った。
「だからさ」
「本当によく食うな」
静香にどうかという顔で言う。
「全く」
「そういう牧水はどうなんだよ」
「僕は別にいいよ」
牧水は静かにどうかという顔で返した。
「晩ご飯あるから」
「何だよ、つれないな」
「つれないって家に帰ったら晩ご飯あるから」
だからだというのだ。
「今はいいよ」
「よく食わないと身体大きくならないよ」
「一七〇あったら別にいいよ」
それだけの背があればというのだ。
「もうね」
「一八七欲しいとか言えよ」
「そんなに大きかったら困るだろ」
「そうかね」
「頭打ったりして」
「背が高いと恰好いいだろ」
「そうかも知れないけれど高過ぎても困るよ」
頭を打ったりしてというのだ。
「だから僕は今位でね」
「丁度いいんだな」
「うん、静香は違うかも知れないけれど」
「あたしはもういいかな」
今の背でとだ、静香は自分のことを言った、短い青の制服のスカートから出ている脚は色気より元気が見える。
「背は」
「もうそれ以上はだね」
「ああ、一六四でさ」
つまり今の背丈でというのだ。
「後は身体が頑丈だったらな」
「それでいいんだ」
「ああ、だから一杯食って」
「身体丈夫にしたいんだ」
「それでハンバーガーもって思ったけれど」
「身体丈夫にしたいなら牛乳とか野菜ジュースがいいよ」
「カルシウムにビタミンか」
「それに水分補給にもなるし」
「ああ、ちゃんと水分も摂らないとな」
静香も言われて言った、学校帰りの電車の中は外は真っ暗でありそこから街の灯りが見える中を走っている。中にいる乗客達は仕事や学校帰りでほっとしているか本を読んでいるかスマホをいじっているかだ。二人はその中で喋っているのだ。
「駄目だよな」
「だからね」
「それに今食うとお腹膨れるか」
「だからね」
それでというのだ。
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