おぢばにおかえり
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第五十八話 入学前のその二十九
「デートみたいね」
「女の人でも?」
「そう、女の人でもよ」
「デートじゃないわよ」
そこははっきりと断りました。
「だって女の子同士よ」
「それはわかってるわよ」
「いや、それでも何か」
「デートみたいよ」
「そうかしら、本当に私はね」
私自身が思うことです。
「別にね」
「そんなこともないのね」
「確かに一緒に遊びに行くけれど」
「それだけだっていうのね」
「そうよ、おかしなことないから」
「それだけなのね」
「ええ、ただあの娘達が言うには」
また妹達のことをここで思い出しました、そのうえでの言葉です。
「怖い人だっていうのよ」
「それは一面ね」
「先輩の?」
「そう、確かにその人に怖い一面はあるわね」
「お母さんもそう言うの」
「ええ、ただね」
お母さんは私にこうも言いました。
「千里が言う面もあるのよ」
「そうなのね」
「凄くいい人なのは事実でも」
それでもというのです。
「怖い一面もあるのよ」
「先輩にそうした一面があるのね」
「ただその人反省してるのね」
「そのお話ご自身でもされるけれど」
その時のお顔はとても辛いものです、先輩がどれだけ反省されて悔やんでいるかはわかります。何があったかは知らないですが。
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