提督はBarにいる。
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春を味わう筍料理・4
「それで?筍を使ったボリュームあるメニュー。その上ウィスキーに合う料理なんて……何を作ってくれるのかしら?」
「そりゃお前、出来上がってのお楽しみって奴さ」
「もう、やっぱり提督っていけずよね」
「予め知っておくより、見てビックリ食べてビックリの方が楽しいだろ?」
「まぁ、それもそうね。期待しておくわ」
俺からメニューを聞き出そうとするが、あっさりと引き下がる陸奥。こいつはそうやって俺との駆け引きを楽しんでいるんだがな。聞き出せればそれもよし、聞き出せなくても惚れた男と会話が楽しめる。陸奥にとっちゃあ悪い事がないちょっとした一時。
「さて、食いしん坊が待ちきれないようだし作るとしますか」
「もうっ!!」
頬を膨らませて不機嫌さを顕にする陸奥を横目に、調理開始と行こう。
《美味しくヘルシー!筍のラザニア》※分量4人前
・筍(ゆでたもの):1本
・厚揚げ:1枚
・ベーコン:3枚
・粉チーズ:適量
・パン粉:適量
・イタリアンパセリ(みじん切り):少々
・ピザ用チーズ:適量
(ホワイトソース)
・小麦粉:30g
・バター:30g
・牛乳:400cc
(ミートソース)
・合挽き肉:200g
・玉ねぎ:中くらいの1個
・ニンニク:1片
・オリーブオイル:大さじ1
・赤ワイン:100cc
・ホールトマト:1缶(400g)
・醤油:大さじ1
・塩:小さじ1
・胡椒:少々
※ソースを作るのが面倒な場合は、パスタソースで代用できるぞ!
さて、作っていこう。まずは材料の下拵えから。厚揚げはお湯をかけて油抜きをし、5mmの厚さにスライス。ベーコンは6~8等分の長さに切り揃える。ニンニク、玉ねぎはみじん切りにして、筍は長さを半分にしてから縦に半分に割り、2~3mmの厚さにスライスする。
2種類のソースを作るぞ。まずはミートソースから。フライパンにオリーブオイルとニンニクを入れて炒める。香りが立ってきたら玉ねぎを加えて炒め、しんなりしてきたら合挽き肉加えて更に炒める。肉の色が変わってきたら赤ワインを入れてアルコールを飛ばすように煮立たせる。沸騰してきたらホールトマト、醤油、塩、胡椒を加えてトマトの果肉を潰しつつ、全体をかき混ぜながら水気が飛ぶまで煮詰める。
お次はホワイトソース。牛乳をレンジで沸騰しない程度に温める。フライパンにバターを入れて弱火にかけ、バターが溶けたら小麦粉を入れて木べらで混ぜて、馴染んで液状になるまで
かき混ぜる。液状になったら温めた牛乳を加える度に混ぜつつ、数回に分けて牛乳を加え、とろみがつくまで煮詰める。
ソースが出来たらオーブンを250℃に余熱し、耐熱容器を準備する。耐熱容器に厚揚げ、ベーコン、筍の1/4を敷き詰め、ミートソースを上に敷き詰める。その上にまた厚揚げ、ベーコン、筍の1/4を敷き詰め、ホワイトソースを敷き詰める。これをもう一度繰り返し、ピザ用チーズをかけて、その上から更に粉チーズ、パン粉を散らしてオーブンで15分、こんがりと焦げ目が付くまで焼き上げる。
焼き上がったら仕上げにパセリを散らして出来上がり。
「さぁ出来たぞ、『筍のラザニア』だ。パスタを使っていないから、美味しい上にカロリー控え目だぞ?」
「ふふ、流石ね提督。早速頂くわ……ネルソン達もどう?」
見れば、さっきから陸奥の前に出してやった耐熱容器を、物欲しそうに眺めていたネルソン、ジャーヴィス、ジェーナスの3人。全員がブンブンと首を縦に振る姿は、傍から見てると中々面白い。
「じゃあ提督、4等分に取り分けて頂戴」
「あいよ」
包丁でザクザクと切り分け、それぞれ取り皿に取り分けて出してやると、イギリス組は待ちきれなかったのか即座にフォークを突き入れて口に放り込んだ。
「「「あっふい!」」」
「当たり前だバカ野郎」
熱々のラザニアやらグラタンみたいなオーブン料理を、冷まさずに口の中に放り込めばそうなる。そんなリアクションを見てケラケラ笑う陸奥。そんな陸奥はスプーンで掬うと、ふぅふぅとしっかり息を吹き掛けてから口へ運ぶ。
「あふっ……まだちょっと熱かったわ」
「まぁそのくらいは許容範囲だろ?」
寧ろ、少し熱い位でないとな。冷めたグラタンとか悲しさを助長するぞ。こういうのは熱々をふぅふぅ言いながら食うのが良いんだよ。そして勿論、味も最高だ。ミートソースの酸味を伴った旨味と、ホワイトソースのまろやかなコク、そしてこんがりと焼けたチーズの香ばしさと塩気が、具材に絡まる。そしてラザニアの代わりの筍や厚揚げの食感の違いが、そこに彩りを添える。4人全員がハフハフ言いながらラザニアにがっつき、それぞれの手元に有る飲み物で喉を潤す。やがて皿とグラスが空になると、満足げにぷはぁと息を吹き出した。
「どうだ?美味かったろ」
ニヤリと笑いながら陸奥に訪ねると、
「そうね、完敗だわ」
と、陸奥は満面の笑みを浮かべた。
時刻は午後10時を回った所。ウチの飲兵衛共からすればまだまだ宵の口、といった所だがそろそろ限界が近い者もチラホラ出始める時間帯。カウンター席で頑張っていたジャーヴィスもコックリコックリと船を漕いでいるし、ネルソンを挟んで反対側にいるジェーナスも眠たそうに目を擦っている。
「ジャーヴィス、そろそろ寝たらどうだ?」
「んぅ……やだぁ、もう少しパパとお話してたいのぉ~……」
「あらあら、パパはモテモテなのねぇ?」
そんなやり取りを楽しそうにからかう陸奥。少しイラッとしたが、気にせず話を進める。
「そういう訳にもいかんだろ?明日は確か他の鎮守府に出向いて演習の予定だろうに」
たとえ沈む恐れの無い演習だとしても、寝不足という集中力を欠いた状態でやらせるのは問題外だ。下手な怪我をする可能性もあるしな。
「む~……」
それでもジャーヴィスは頬を膨らませて、動かないとの意思表示を続ける。
「仕方ねぇなぁ……〆にもう一品作ってやるから、それ食ったら寝ろよ?」
「うん!」
現金な奴め、誰に似たんだか……ったく。
《夜中に食べても罪悪感少な目!春雨の酸辣湯麺風》※分量2人前
・春雨:40g
・筍:40g
・キクラゲ(乾燥):2g
・豚挽き肉:50g
・ニンニク:1片
・生姜:1片
・万能ネギ:1/3束
・油:大さじ1
・水:400cc
・鶏ガラスープの素:大さじ1
・紹興酒(無ければ普通の酒でOK!):大さじ1
・酢:大さじ1
・醤油:大さじ1
・オイスターソース:小さじ1
・水溶き片栗粉:小さじ4(片栗粉、水各小さじ2)
・塩、胡椒:少々
・ラー油:小さじ1~
さて、作っていこう。まずは春雨とキクラゲを袋に書いてある通りに水で戻し、春雨は食べやすい長さに、キクラゲも適当な大きさにカット。万能ネギは3cm幅の斜め切り、筍は千切りに。ニンニク、生姜はみじんぎりにしておく。
フライパンに油を引き、ニンニクと生姜を炒めていく。香りが立ってきたら豚挽き肉と紹興酒を入れて炒める。肉の色が変わってきたら、水、鶏ガラスープの素を加えて煮る。
スープが煮経ってきたらキクラゲ、筍を加えて全体をかき混ぜ、酢、醤油、オイスターソース、春雨、万能ネギを加えて更に3分程煮込む。
味見をして塩、胡椒で味を整えたら、水溶き片栗粉でとろみを付けて火を止める。器に盛り付けて仕上げてラー油を垂らせば完成。
「さぁ出来たぞ、『春雨の酸辣湯麺風スープ』だ」
辛いのが苦手だというジェーナスは、ラー油控えめにしてある。
「いただきま~す!」
ジャーヴィスは器用に箸を使い、ズルズルと春雨を啜っていく。最初は『麺を啜るなんてはしたない!』なんて騒いでいたが、最近は随分と日本に馴染んだらしい。
「どうだ?美味いか」
「うん!」
「そっちの2人はどうだい?」
「うむ……少し酸味がきついが、悪くはないっ!」
「ラーメンとは少し違うけど、これも美味しいわ!」
ネルソンとジェーナスはまだ啜るのに馴れていないのか、フォークで春雨を巻き取って食べている。結局酸っぱいだの辛いだのと言いつつ、3人はスープまで綺麗に飲み干した。
「あ~、お腹一杯!お休みパパ-!」
「こら、待たんかジャーヴィス!」
「ま、待ってェ~!」
食べ終わると駆け出したジャーヴィスを追うように、ネルソンが会計をカウンターに投げ出して、ジェーナスと共に駆け出していった。やれやれ、飛んだお転婆娘だぜ。
「提督?」
「なんだ?」
「さっきの酸辣湯麺、私にもお願いね?」
どうやら、陸奥も眺めていたら食べたくなったらしい。
「……あいよ」
「あ、特盛具材マシマシでね?」
「夜中なのに食うなぁお前」
「あら、あんな美味しそうな物を見せつける提督が悪いんじゃない!」
「俺のせいかよ!」
やれやれ、今夜もまだまだ騒がしくなりそうだ。
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