ロックマンZXO~破壊神のロックマン~
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第三十話 時間の合間に
前書き
寝坊してしまった。
許してください
ガーディアンベースに帰還したヴァンとエールはプレリーから労いの言葉を貰った。
「六つのライブメタル…ついに揃ったわね。これでセルパン達と渡り合えるようになったかもしれないわ。お疲れ様二人共…あなた達が回収してくれたデータディスクは急いで修復してるから、それまでの間は体を休めていてもらえる?」
「良くやったなお前ら…お前らのおかげでここまで来れたんだ。後は来るべき時まで体を休めておけ…肝心な時に倒れたんじゃ話にならないからな」
プレリーとジルウェの言葉にヴァンとエールは頷く。
「…エール、少し付き合ってくれないか?」
「トレーニング?今日くらい休んだら?」
「いや、そうじゃない。エリアAに行こう…セルパン・カンパニーのビルが見えるあの場所で」
「………分かった」
ヴァンのやりたいことが分かったのだろう。
エールは頷くと一緒にブリッジを出た。
「先輩、バイク借りるぞ」
「ああ、壊すなよ?」
「イレギュラーに襲われなきゃね」
トランスサーバーに置かれてあるジルウェのバイクを借りて装置にまで押していき、エールも自分のバイクを押して装置にまで運んでいく。
そして座標をエリアAに指定して転送すると、バイクに跨がってトランスサーバーの部屋から飛び出した。
「…………」
エールは自分の前を走るジルウェのバイクに乗るヴァンの背中を見つめていた。
何と言うか…モデルOのアーマーの配色があってかなり赤いバイクで走る姿が様になっている。
「エール、イレギュラーだ」
「あ、うん」
バイクの騒音に反応したイレギュラーが飛び出し、ヴァンはアルティメットセイバーを抜くと擦れ違い様に両断した。
エールもZXセイバーを抜くと、ヴァンと同じように擦れ違い様に両断していく。
こうして改めてエールは不思議な気分になる。
昔はただ怯えて逃げるだけの対象だったイレギュラーが自分がセイバーを振るうだけであっさりと破壊されていくのがだ。
そして目的地までバイクを走らせると、目的地にすぐに着いた。
「やっぱり良いな、新しいバイクは…前のオンボロはいつ止まるのか分からなくて僅かなことにもビクビクしてたからな」
「でしょー?アタシも初めて新しいバイクに乗った時、思わず感動しちゃった。それにしてもヴァン、赤いバイクに乗るの様になってるじゃん」
「そうか?」
「うん、昔なら絶対に似合わなかった」
「怒るぞ」
遠慮のない言い合いをするヴァンとエール。
こうして穏やかに言い合えるのは本当に久しぶりな気がする。
「………ここから見える景色は全く変わらないな」
「うん、あの時と全く同じ…変わらないね」
変わったのはあの時と違って自分達がロックマンと言う強大な力を手にしているということだけだ。
「そう言えば助けた人達はどうしてる?」
「ほとんどの人達は元気に暮らしてるよ…ただ、トラウマになった人もいて、家から出ない人もいるみたい…どうやら街の人達にも薄々気付いている人がいるみたい。セルパン・カンパニーが何か悪事を働いてるんじゃないかって」
「そうか…」
無言になって景色を見つめるヴァンとエール。
あの頃と全く変わらない景色でも、見つめている自分達の気持ちが変わればこんなにも違うように見える。
「ライブメタルは揃ったし、後はパスコードの修復を待つだけ。待ってなさいセルパン!絶対にぶちのめしてやるんだから!!」
「そうだな、今までの借りを数十倍にして返してやろうぜ」
セルパン・カンパニーのビルを指差しながら言うエールにヴァンが同意する。
「勿論、今のアタシとヴァンなら絶対にセルパンなんかに負けないんだから!!」
ライブメタルは全て揃った上にヴァンもいるのだから負ける要素などないとエールは確信する。
「モデルV本体の力がどれだけの物なのかによるけどな……なあ、エール…もしも…俺が」
イレギュラー化したらお前が俺を倒してくれ。
そう言おうとしたが、言葉が出なかった。
「どうしたの?」
不思議そうにエールがヴァンを見つめるが、ヴァンは少しの沈黙の後に口を開いた。
「…………いや、何でもない。そろそろ暗くなってきたし…今日はもうガーディアンベースに戻って寝よう」
今こんなことを言ってもエールを不安にさせるだけだ。
不安にさせてエールがやられたら大変なことになる。
「そうねー、アタシももうクタクタ…今日はベッドに横になった瞬間に寝れそう」
「居眠り運転だけはするなよー」
「するわけないでしょ!どれくらいバイクに乗ってると思ってんの?」
軽い口喧嘩をしながら二人は再びバイクを走らせてトランスサーバーのある場所に向かうのであった。
ガーディアンベースへと戻り、二人は疲れを取るようにぐっすりと眠った。
そしてプレリーはフルーブからの通信を受けて、比較的破損が軽かった一枚目のデータディスクを受け取った。
「ありがとうフルーブ、早速中身を確認してみるわね」
部屋に戻って早速データディスクの内容を読むと、それはライブメタル・モデルVの正体に関するレポートであった。
モデルVの正体はプレリーが幼い頃…“お兄ちゃん”や“お姉ちゃん”が健在だった頃に存在した兵器だったのだ。
プレリーは黙々とレポートを読んでいく。
しばらくして全てを読み終わったのか、プレリーはコーヒーを啜った。
「まさかモデルVの正体がお兄ちゃんが壊した衛星兵器の残骸だったなんて……」
ライブメタル達から話を聞いて何となくモデルVのオリジナルについては見当はついていたが、流石にモデルVの基となった物には驚いた。
当時のことを思い出したのか、プレリーの声には疲れが混じっていた。
宇宙空間で崩壊していく衛星兵器…そしてその残骸による流星。
今でもあの時のことは昨日のことのように鮮明に思い出せる。
“お兄ちゃん”がしたことは結果的に後の世にイレギュラーを生み出すことだったのだろうか?
いや、そんなことは決してない。
彼がいたからこそ、今の人間とレプリロイドが共存する世界が生まれたのだから、彼のしたことは決して間違ってはいない。
「そうだよね、お姉ちゃん…」
プレリーの呟きは静かに部屋に響いて、消えていった。
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