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戦国異伝供書

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第八十七話 元服と初陣その十

「控えるべきかと」
「そうか、しかしな」
「酒はですか」
「どうしてもな」
 今は飲んでいない、だがそれでも言うのだった。
「飲まずにはな」
「いられませぬか」
「うむ」 
 どうにもというのだ。
「それでじゃ」
「そうですか、ですが父上も」
「それでか」
「それがしとしてはです」
「酒のことはか」
「止められぬ」
 絶対にというのだ。
「わしはな」
「ですが」
「わかっておるが」
 興元のことは変わらなかった、その口調も。
「しかしな」
「左様ですか」
「どうしてもな、これではいかんな」
「お言葉ですが」
 そこはあえてと言う元就だった。
「やはり」
「そうであるな、わしは弱いな」
 興元は弟に苦笑いになって応えた。
「わかっていても止められぬとは」
「どうも当家は」
「酒が、じゃな」
「それに祟られますか」
「そうじゃな、だからお主はな」
 元就にはこう言うのだった。
「気をつけるのじゃ」
「今からですか」
「うむ、そしてな」
 そのうえでとだ、弟にさらに言った。
「長く生きるのじゃ」
「酒に溺れず」
「うむ、しかしわしにしても」
 弟に言われていうのだった、話しているうちにどうしてもそのことが気になってそれで、であったのだ。
「少しはな」
「控えて頂きますか」
「そうする様にしよう」
「そこはお願いします」
「それでじゃ」
「それがしはですか」
「父上やわしの様に酒に溺れずな」
 そうしてというのだ。
「そしてな」
「そのうえで、ですか」
「長く生きてな」
「毛利家の為にですか」
「働いてくれるか」
「はい、そのことはです」
 真剣な顔でだ、元就は兄に答えた。
「それがしも心からです」
「そうであるな、だからな」
「酒はあまり飲まず」
「そのうえで他の養生もしてな」
「長く生きていきます」
「頼むぞ」
 こう言った、そしてだった。
 興元は何かあると元就と話してそうして毛利家を強くしていきそのうえで家臣達もまとめていく様にした。毛利家はさらに強くなり。
 安芸全体にもさらに影響を及ぼす様になっていた、だが興元は酒を控えようとしたがそれでもやはり多く飲んでおり。
 それでだ、徐々に床に伏すことが多くなり弟に言うのだった。
「どうもな」
「これからは、ですか」
「わしは長くない」
 こう言うのだった。
「だからな」
「それで、ですか」
「わしが死んだ後は幸松丸がおる」 
 興元の子である彼がというのだ。 
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