戦国異伝供書
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第八十七話 元服と初陣その八
「そのことを申し上げます」
「そうですか」
「そして出来れば」
「長寿をですね」
「して欲しいと考えています」
こうもというのだ。
「私は」
「そうですか、長寿ですか」
「戦国の世では特に難しいですが」
戦の場で死ぬこともある、このことはどうしても避けられない。
「しかしです」
「私に長生きして欲しいと」
「殿は残念なことでしたが」
「その父上のこともあり」
「貴方にはそう願っています」
「左様ですか、では元服してからも酒を慎み」
そしてとだ、松壽丸は杉大方に誓う様に答えた。
「他のこともです」
「養生してですか」
「生きていきまする」
「そうして頂くと何よりです」
「そうして下さい」
「その様に」
「時折酒を飲むこともいいですが」
それでもというのだ。
「日々深酒はです」
「絶対になりませんね」
「そうです、それはなき様に」
「時折飲む位ならですね」
「いいです」
それ位ならというのだ。
「あくまで節度です」
「それが第一ですね」
「そのことも覚えておいて下さい」
「わかりました」
松壽丸はまた答えた、そしてだった。
父の葬儀に出た、全てを取り仕切ったのは兄の興元でありそれは毛利家の主として落ち度のないものだった。
松壽丸もその場で毛利家の者としてつつがなくいた、その葬儀の後で。
興元は弟にこう言った。
「お主には早いと思うが」
「元服ですか」
「うむ、それをな」
是非にというのだ。
「してもらう」
「わかりました」
松壽丸は兄のその言葉に答えた。
「それでは」
「諱であるが」
「そのことですか」
「うむ、それでだ」
興元はさらに話した。
「大内家の方からな」
「烏帽子親のお話がですか」
「来ておるが」
「では」
「うむ、それではな」
「大内様がですか」
「そうなって頂く、それでよいな」
こう松壽丸に言うのだった。
「お主も」
「はい」
松壽丸は一言で答えた。
「そうさせて頂きます」
「それではな」
「そしてじゃ」
「そしてとは」
「当家はこれからも大内家についてな」
そしてというのだ。
「そのうえでな」
「家をやっていきますか」
「そしてじゃ」
そのうえでというのだ。
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