英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第81話
~ロゼのアトリエ~
「最近のエリゼのリィンを見る目が……?一体どういう事だ……?」
「そりゃリィンがエリゼ自身もそうだが自分達にとっての”祖国”のメンフィルと敵対せず、メンフィル側についた事に安心しているし、嬉しさもあるんじゃねぇのか?メンフィル側についた事でリィンは昇進し続けている上、多分だがエリゼは俺の事を内心嫌っているだろうから、そんな人物とリィンが離れる事になって”よかった”とも思っていると思うぜ。」
「エ、エリゼさんがクロウを嫌っているってどういう事だ!?」
複雑そうな表情で答えたメサイアの推測を聞いて不思議そうな表情で考え込んでいるガイウスに疲れた表情で答えたクロウの推測を聞いたマキアスは驚きの表情で訊ねた。
「俺は”帝国解放戦線”のリーダーだった馬鹿野郎だぜ。ただでさえ”テロリストのリーダー”と仲良くするなんて外聞が悪いだろうし、夏至祭では”G”達がエリゼにとって大切な妹のエリスを拉致しようとしたし、内戦が勃発した際はリィン達と敵対してリィンとお前達を離れ離れにしてリィンに辛い思いを抱えさせる”元凶”を作ったのは俺だし、内戦勃発後ユミルを猟兵達に襲撃させて父親に重傷を負わせた挙句エリスを拉致してカレル離宮に幽閉していたカイエンのオッサン達――――――貴族連合軍に協力していた事、2度目のユミルの襲撃の件と、エリゼがリィンや内戦の件で俺を嫌う理由はいくらでもあるだろう?」
「それは……」
「クロウ君………」
苦笑しながら肩をすくめて答えたクロウの話に対して反論の言葉がないアンゼリカは複雑そうな表情で答えを濁し、トワは辛そうな表情でクロウを見つめた。
「でも、それだったらミュゼやアルティナの事も嫌っているんじゃないの?ミュゼは前カイエン公の姪で、貴族連合軍の残党の”総主宰”だし、アルティナはエリスを拉致した張本人だし。」
「それとヴァリマールがメンフィル軍に徴収した際の皇女殿下に対して厳しい態度をとっていた事から察するに、アルフィン皇女殿下の事もあまりよく思っていないかもしれないな……」
クロウの話を聞いてある事が気になり始めたフィーとラウラはそれぞれ意見を口にし
「いえ……今挙げたお三方に対するエリゼ様の態度や様子から察するにエリゼ様はお三方の事については特に思う所は見せていませんでしたわ。」
「ま、ミュゼはそもそも去年の内戦とやらには完全に”部外者”の立場だったし、アルフィンはご主人様の故郷の件で責任を取って皇族を辞めてご主人様の”専属メイド兼娼婦”としてご主人様に誠心誠意仕えている―――要するに”その身をもって罪を償っている”し、アルティナはパンダグリュエルでご主人様と私達がルーファスって男と戦っている間にエリゼがメサイアやステラ達と一緒にアルティナと戦ってアルティナに直接”お仕置き”したからアルティナに対する”怒り”もスッキリしたでしょうしね。実際、あの後頭も冷えてアルティナの事を許した所か、アルティナみたいな幼い女の子相手に怒り過ぎていた事を大人げないと思って反省していたわよ。」
「なるほどね……確かにそれらの件を考えると、エリゼがあの3人に対しては思う所がない事にも納得できるわね。」
「そ、それよりも………今の話が本当だとするとベルフェゴールさんはリィンさん達と一緒にルーファスさんを…………」
「………兄はどういう最後を遂げたのだ?」
「ユーシス……」
メサイアとベルフェゴールの話を聞いたサラは考え込み、ある事に気づいたエマは不安そうな表情でユーシスに視線を向け、静かな表情で兄の最後を訊ねる様子のユーシスをマキアスは複雑そうな表情で見つめていた。
「うふふ、わざわざ殺された兄の最後を知りたいなんて物好きね。別にその程度だったら教えてあげてもいいけど、あのルーファスって男の最後は相当無惨なものよ?それでも知りたいのかしら?」
「ル、ルーファスさんの最後が”相当無惨”って……」
「ユーシスの話だと、ルーファスの遺体は”首を斬り落とされた状態”だって話だから、無惨な殺され方をしたのは確実だろうね。」
「……それでも聞かせてくれ。兄上の弟として……そしてリィンの友として、兄上の最後を知っておきたい。」
意味ありげな笑みを浮かべたベルフェゴールの言葉を聞いたエリオットは不安そうな表情をし、フィーは静かな表情で呟き、ユーシスは覚悟を決めた表情で訊ねた。
「ま、そこまで言うんだったら聞かせてあげるわ。――――――あのルーファスって男は私達との戦いで疲弊した際に、その様子を見てチャンスと判断したセレーネが”竜化”――――――要するに”竜”になって氷の礫が混じった絶対零度の竜の息吹をあの男に浴びせたのよ。」
「ええっ!?セレーネが!?」
「”生身の人間”に竜の息吹を浴びせるって………あの娘もリィン同様、敵には一切の容赦をしない事を決めたようね。」
「うむ……氷の礫が混じった絶対零度の竜の息吹を浴びせたという事は、そのルーファスとやらはその竜の息吹によって氷漬けにされた挙句氷の礫によって全身を切り刻まれ、そこにリィンによって”止め”を刺されたのか?」
ベルフェゴールの説明を聞いた仲間達がそれぞれ血相を変えている中アリサは信じられない表情で声を上げ、目を細めて呟いたセリーヌの話に頷いたローゼリアは真剣な表情で訊ねた。
「ええ。――――――ああ、そういえばあの男がご主人様によって首を斬られた時に『この私が”黄昏”が起こる前にこんな異国の地で果てるというのかぁぁぁぁ―――ッ!』っていう断末魔を上げたから、それがあの男の”最後の言葉”にもなるわね。」
「ええっ!?ちょ、ちょっと待ってください!という事はルーファスさんは……!」
「”最初から黄昏が起こる事を確信していたって事”になるな。」
「”子供達”のミリアムは当然として、レクター少佐やクレア少佐も”黄昏”の事については知らなかった様子だったが……」
「ルーファスはその”子供達”の”筆頭”かつギリアスにとっての”隠し札”でもあったから、”黄昏”の件を含めたギリアス達の”計画”を知らされていてもおかしくない立場だな。実際、お前達の話だとルーファスはリィンがギリアスの息子である事も”最初から知っていた様子”だったんだろう?」
「はい…………”煌魔城”でのルーファスさんのリィンさんに対する発言等を考えると、そうとしか思えません……」
ベルフェゴールが口にしたルーファスの最後の言葉を聞いたアリサ達がそれぞれ血相を変えている中トワは信じられない表情で声を上げ、アッシュは目を細めて続きを口にし、真剣な表情で呟いたガイウスの疑問に目を細めたクロウが答えてアリサ達に確認し、クロウの確認にエマは複雑そうな表情で肯定した。
「………兄上の最後を包み隠さず答えてくれたこと、感謝する。」
一方ユーシスは静かな表情でベルフェゴールに頭を下げて感謝の言葉を述べた。
「え、えっと……話が色々と逸れてリィン様の件に戻しますが、そういう訳でエレボニア帝国人の皆さんには申し訳ないのですが、”実力主義”かつ皇族の権威が強力で、国民達全体が差別を嫌悪する傾向があるメンフィルはリィン様自身にとって”あらゆる意味”でエレボニアよりも”良い環境”なのですわ。」
「要するに大半の原因は”血統主義”の帝国貴族達という訳って事か。今回の件が終わったらエレボニアは根本から変わる必要があるだろうな。そうしないと多分今回の件があってもエレボニアが変わらなかったら、マジでリィンもエレボニアに愛想をつかすと思うぜ。」
「エ、”エレボニアが根本から変わる必要”があるって事は………まさか”血統主義”――――――いや、”血統主義”の一番の原因となっている”貴族制度”をなくすことか?」
「幾ら何でもエレボニアが”貴族制度”をなくすことには色々と無理がある………が、流れている”血の価値”や”身分”で人を差別するような愚かな考えをなくす事はリィンの件がなくても、今後のエレボニアにとって必要だろうな。」
「そうだね……後は貴族達が持つ”力”もある程度弱体化させないと、いつかまた同じ事が起こるだろうね。ただ、その件で一番の障害となると思われる人物はミュゼ君なんだよね……」
「今回の戦争でオズボーン宰相達――――――現帝国政府が倒れたら連合がエレボニアを吸収しようと、エレボニアが存続しようと、連合側についてヴァイスラント新生軍の”総主宰”に就いていた彼女は間違いなく、戦後のエレボニアにとって重要かつ絶大な権力を持つ人物になるでしょうからね。」
「ええ……少なくても、アルノール皇家の方々にとっては頭が上がらない存在になると思うわ。」
話を絞めたメサイアの説明を聞いて疲れた表情で呟いたクロウの提案を聞いたマキアスは困惑の表情で呟き、マキアスの言葉に静かな表情で否定したユーシスは真剣な表情を浮かべて答え、ユーシスの言葉に頷いたアンゼリカはミュゼを思い浮かべて疲れた表情で溜息を吐き、ラウラは複雑そうな表情で、サラは真剣な表情でそれぞれ推測した。するとその時通信の音が聞こえ、音を聞いたベルフェゴールは自分のENGMAを取り出して通信を開始した。
「もしも~し。あら、ご主人様じゃない。ええ、今話は終わった所だからそっちに戻るわね。――――――ちょうどご主人様の方も会議が終わったみたいだし、私達も失礼するわね♪明日はお互いの目的の為にも、頑張りましょうね♪」
通信を終えたベルフェゴールはアリサ達にウインクをした後転位魔術でその場から去り
「それでは私達も失礼しますわ。ユリーシャさん、お願いします。」
「ええ。我が主の交友関係を壊さない為にも貴方達がこの身達に協力関係を持ちかけた件に関してはこの身達の胸に秘めておきますから、ご安心ください。――――――失礼します。」
「貴方達が目指す”第三の道”を見つけられる事、個人的には応援しているわ。――――――それじゃあね。」
ベルフェゴールに続くようにメサイアはユリーシャと共にアリサ達に別れの挨拶を告げた後転位魔術でユリーシャと共に去り、アイドスも別れの言葉を告げた後自身の転位魔術で去って行った。
そしてアリサ達はメサイア達との話が終わるとオリヴァルト皇子に連絡して、レヴォリューションの件を含めた話をオリヴァルト皇子に伝えた。
同日、PM9:50――――――
「そうか………メサイア君達からそのような話を………――――――ありがとう、君達が彼女達から聞けた話は私にとってもとても貴重な情報だったよ。」
「いえ……話が聞けただけで、結局肝心の協力は取り付けられませんでしたから、わたし達の力不足で申し訳ございませんでした。」
端末に映るオリヴァルト皇子に感謝の言葉を述べられたトワは複雑そうな表情で答えた。
「それは仕方ないさ。彼女達はリィン君の為に力を貸しているのだから、当然彼女達にとって一番優先すべき事柄はリィン君だからね。それよりもリィン君が”灰獅子隊”とやらの”軍団長”で”少将”に昇進か……ハハ……もう、気軽に”リィン君”と呼ばない方がいいかもしれないね。」
「幾ら地位が上がったとはいえ、リィンは自分に対する呼び方等気にしないというか、むしろ以前とは違う呼び方で呼んだ方が気にすると思いますけど……」
疲れた表情で呟いたオリヴァルト皇子の言葉にエリオットは戸惑いの表情で指摘した。
「それでも少なくても公の場では、彼に対する呼び方や話し方を敬称に変える必要があると思うよ。――――――それにしても、”レヴォリューション”だったか。メンフィルもリベールの協力で”カレイジャス”のような”アルセイユ”の姉妹艇を開発している話は耳にはしていたが……まさかよりにもよって、このタイミングでそれを投入するとはリウイ陛下達には”してやられた”気分だよ。」
「その…………カレイジャスの開発に関わっていた殿下はやはり、ご存じだったのですか?」
”レヴォリューション”の事を話に出して苦笑しているオリヴァルト皇子の言葉が気になったアリサはオリヴァルト皇子に訊ねた。
「ああ、”カレイジャス”の開発の際に女王陛下達からその存在を開発している話は聞いた事はある。とはいっても、やはりメンフィルに対する守秘義務がある事で、具体的な内容等については教えてもらえなかったけどね。――――――それよりも、ラウラ君。子爵閣下の件は本当に申し訳なかった……こんな事ならクロスベルにも向かって”本来の歴史”の事を一番良く知っているキーア君から話を聞くなり、レグラムの状況をもっと気にするなりしておくべきだったのに、それを怠った私のせいで子爵閣下が……」
「父上の件はどうかお気になさらないでください。レグラムの件は領主の娘である私の責任でもありますし、何よりも父上はその件での殿下の謝罪等は望んでおられません。」
「……殿下。他国のエレボニアに対する反応もそうですが、”協力者”の件はどうなっているでしょうか?」
申し訳なさそうな表情を浮かべたオリヴァルト皇子に謝罪されたラウラは静かな表情で謝罪が不要である事を伝え、ユーシスは真剣な表情でオリヴァルト皇子に状況を訊ねた。
「他国に関しては正直芳しくない反応だよ……ただでさえレン君達に先に手を打たれていた事もあるのに、そこに加えて”焦土作戦”の件があるから、他国の今のエレボニアに対する印象は”最悪”になっていると言っても過言ではないよ。」
「そ、そんな………各国がそんな状況ですと最悪は……!」
「エレボニアとエレボニア以外の各国が連合を組んだ軍がぶつかり合うまさに大陸全土を巻き込む戦争に発展するでしょうね……」
「ラマールで言っていたミュゼが描いた通りの”盤面”に徐々に近づいているね。」
「チッ、あのゆるふわ女、下手したらこの戦争の後の世界の状況まで読んでいやがるんじゃねぇのか?」
重々しい様子を纏って答えたオリヴァルト皇子の話を聞いたマキアスは表情を青褪めさせ、サラとフィーは真剣な表情で呟き、アッシュは舌打ちをして苦々しげな表情を浮かべてミュゼを思い浮かべた。
「……それとその件に関して更に悪い知らせがある。」
「”他国のエレボニアに対する印象の件での更に悪い知らせ”ですか……」
「……もしかして、リベールも正式にメンフィル・クロスベル連合と手を組んでエレボニアと戦争する事を決めたのかしら?」
「あ…………」
「そういえばリベールはエレボニアが異世界にあるメンフィルの”本国”からの支援を封じるために”アルスター襲撃”という”冤罪”を作って、エレボニアと戦争勃発寸前の状況に陥っているのだったな……」
「しかもリベールは既に連合から連合に加わる誘いも受けている上、ユーディット嬢達の口ぶりだと連合も時期を見て何度もリベールに使者を送っているだろうから、例え連合にリベールとの関係を悪化させるつもりがなくても、国防の為にも連合との関係を悪化させない事もそうだがエレボニアとの戦争勃発寸前の状況を不安に感じている国民達の感情も考えるとリベールとしては返事をいつまでも保留にする訳にはいかないだろうな。」
「ただでさえリベールは”百日戦役”で甚大な被害を受けているからな。当然、”百日戦役”を経験したリベールの国民達からすれば今の状況には相当な不安を抱いているだろうな。」
オリヴァルト皇子が口にした言葉にその場にいる多くの者達が血相を変えている中エマは不安そうな表情で呟き、真剣な表情で呟いたセリーヌの推測を聞いたアリサは呆けた声を出し、ガイウスとユーシスは重々しい様子を纏って呟き、クロウは疲れた表情で呟いた。
「ハハ……”不安”どころか”怒り”だよ。――――――戦争に勝つためとはいえ自国の民達を虐殺しようとし、挙句その罪をリベールに押し付けようとしたエレボニアの悪行をミルディーヌ君がクロスベルのオルキスタワーでのヴァイスによる”ラグナロク作戦宣言”の際に公表したから、当然その話がその場に各国のマスコミ達と共に参加していたリベールのマスコミを通じてリベールにも伝わった事でリベールの国民達はエレボニアに対する”怒り”で連合と協力してエレボニアと戦争してエレボニアを”征伐”する事やこれを機に”百日戦役”の復讐することを望む声がリベール国内で連日挙がっている上、国民達同様王国政府、軍部の関係者達の多くからもエレボニアを”征伐”する声が挙がっている上アリシア女王陛下、クローディア王太女以外の唯一のリベールの王族であるデュナン公爵も『リベールを守る為にメンフィル・クロスベル連合と共にエレボニア征伐を行う事も止むを得ない』という考えでエレボニア征伐を望む声に賛同しているそうなんだ……アリシア女王陛下達からも、『近日中に”不戦条約”を提唱した国として不本意な決断をせざるを得ない事になる事』と、『エレボニア征伐を望む軍部の関係者達が暴走する可能性も考えられなくはない為今回の戦争の件が終わるまで”カレイジャス”を含めたエレボニア関係の飛行艇はリベールに近づかない方がいい』と言われたよ……」
「そ、そんな………リベールまで……」
「さすがのアリシア女王陛下達も、国内がそのような状況になった上その中には王族まで含まれているとなるとエレボニアとの”開戦”を決めざるを得なくなってしまったという事ですか……」
「つーか、その件にもあのゆるふわ女が関わっているのかよ。」
疲れた表情を浮かべたオリヴァルト皇子が語ったリベールの現状を知ったアリサ達がそれぞれ血相を変えている中エリオットは辛そうな表情をし、サラは複雑そうな表情で呟き、アッシュは呆れた表情でミュゼを思い浮かべて呟いた。
「フム……確かリベールは”空の女神”によって”黄昏”による”呪い”の影響がリベールにも及ばないように、霊脈に結界を施したという話じゃが……」
「ああ、その点に関してはその場に立ち会ったクローディア王太女とカシウスさん、遊撃士協会の王都支部の受付を担当しているエルナンさん、そして王都の大聖堂の責任者であるカラント大司教が”空の女神”達がリベールの霊脈に結界を施す所を見届けたとの事だから、間違いなくリベールは”黄昏”による”呪い”の影響は受けていないだろう。」
「という事はリベールの件は、”黄昏”等が関係していない”純粋なリベールの怒り”という訳ですか……」
「ま、リベールは”百日戦役”の件があるのに、”冤罪”まで押し付けられて”理不尽な要求”をされたんだから、幾ら温厚なリベールの人達もそこまでされたら頭に来てもおかしくないだろうね。」
考え込みながら呟いたローゼリアの言葉に頷いて答えたオリヴァルト皇子の話を聞いたラウラは複雑そうな表情で呟き、フィーは静かな表情で呟いた。
「……その”百日戦役”の件だが。エレボニアがリベールに理不尽な要求をする理由である”アルスター襲撃”がエレボニアの自作自演である事が公表された事で、軍部や政府、それに国民達の一部からも”百日戦役”が勃発した理由も”アルスター襲撃”同様”エレボニアの自作自演”なのではないかという疑問の声も挙がっているそうなんだ……」
「何ですって!?」
「実際その通りだから洒落になっていないわね。」
「幾ら何でも”ハーメルの惨劇”を知る事はないと思うけど…………今回の戦争が終わっても、エレボニアは内戦と今回の戦争で受けた被害に対する復興に加えて改めて”百日戦役”で犯した”大罪”と向き合わなければならないかもしれないね……」
オリヴァルト皇子が重々しい様子を纏って答えた驚愕の事実を聞いたサラは厳しい表情で声を上げ、セリーヌは目を細めて呟き、トワは悲しそうな表情で呟いた。
「そうだね……その点に関しては私もトワ君と同じ考えだ。――――――今回の戦争の件を終えたら、いっそ”ハーメル”の件を公表するのもありかもしれないとも私は思っているよ。既に各国もそうだがエレボニアの国民達の政府に対する信頼、そして皇家の威光もとっくに地の底に落ちているだろうから、その状況で”ハーメル”の件を公表した所で既に落ちる所まで落ちた”皇家や国の威信”を気にする必要もないだろうからね。」
「殿下………」
静かな表情で語ったオリヴァルト皇子の話を聞いたユーシスは辛そうな表情でオリヴァルト皇子を見つめた。
「……まあ、まだ少し未来になる話の件はともかく、”協力者”の件についてだが少数ではあるが、今回の戦争の件で私達に協力してくれる人達を見つけて来たよ。」
「ほ、本当ですか……!?」
オリヴァルト皇子が口にした朗報に仲間達が血相を変えている中マキアスは明るい表情で確認した。
「ああ、特に今の私達にとって一番必要としていた人材――――――”優秀な技術者”も今、私と共にカレイジャスに向かっている”協力者達”の中にいるよ。」
「技術者まで……ちなみにその技術者はどの技術機関の出身になるのですか?」
オリヴァルト皇子の答えを聞いたアンゼリカは目を丸くして訊ねた。
「”彼女”が務めている技術機関はツァイス中央工房(ZCF)だよ。」
「ええっ!?ツァイス中央工房(ZCF)という事はその技術者はリベール王国出身ですよね……!?」
「よく今のリベールの状況で技術者を引っ張ってこられたわね……」
「しかも”彼女”って事はその技術者は女なのかよ?」
オリヴァルト皇子の話を聞いたアリサは驚きの表情で声を上げ、セリーヌは信じられない表情をし、アッシュは困惑の表情で訊ねた。
「ああ。――――――というか、”彼女”を含めた私が”紅き翼”への協力を取り付けられた”協力者達”はみんな、王国出身の人達ばかりだよ。」
「ほ、他の協力者達もみんな、リベールの人達だなんて……!?」
「一体どんな方達なんでしょうね……?」
(なるほどね………恐らくその”協力者達”は殿下のリベールでの旅行時代で知り合って、”リベル=アーク”に乗り込んで共に戦ったメンバーでしょうね……)
まだ見ぬオリヴァルト皇子が見つけた協力者達が全員リベール出身である事にマキアスが驚き、エマが戸惑っている中既に察しがついたサラは静かな笑みを浮かべていた。
「そういう訳だから、明日の襲撃作戦にもその協力者達には私達と共に君達に加勢してもらう事にも了承してもらっているから、大船に乗ったつもりでいたまえ。そして明日は何としてもセドリックとミリアム君を取り戻そうじゃないか……!」
「はい……ッ!」
そしてオリヴァルト皇子の言葉にアリサ達は力強い答えを口にした――――――
後書き
今回の話でお気づきと思いますが、Ⅶ組陣営にオリビエ達と一緒に加勢する協力者達が追加されます。まあ、その協力者のメンツはどんなメンツなのかは今回の話で大体わかった人もいるかもしれませんがw
ページ上へ戻る