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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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田舎者

<エジンベア>

元海賊の操る船は、危なげもなく目的の地『エジンベア』へと到着した。
高い城壁に囲まれた町は広くはないが、どことなく上品な町並みに感じる穏やかな造り。
そんな町の中央にそびえる城に向かい歩くアルル達…モニカ以下元海賊達に船を預けて。

「な、なぁ…俺達…浮いてないか?」
「はぁ?ちゃんと地面を歩いてるよ。浮かび上がってないよ」
場違いな雰囲気に怯むカンダタ。
「そう言う事じゃねぇーよ!場違いじゃねぇかって言ってるんだよ!」
「?」
今一ピンとこない表情のリュカ…小首を傾げ不思議そうにカンダタを眺める。

「…さっき思い出したんだけどよぉ…以前、俺の知り合いの商人が此処に行商に訪れたんだが…『田舎者は帰れ』って言われ、城に入れなかったみたいなんだ…」
「変な国!グランバニアじゃ誰でも入れるのにね!?」
「…それはそれで拙いでしょ!」
控えめなウルフの突っ込みに不満があったが、今日は我慢し城へと向かうリュカ。
何も考えて無いかの様に、皆の先頭をビアンカと共にイチャつきながら歩いてく。
「はぁ………悩みとか無さそうな人よね!」
アルルの呟きに、ティミーやウルフ・カンダタまでもが頷いた。



城門を潜り、城の正面入口へ進むアルル一行。
しかし扉の前には頑固そうな門兵が1人…
リュカは気にせずすり抜けようとするが、門兵は両腕を広げて進入を阻止する。
「止まれ!此処は由緒正しきエジンベア城!貴様等の様な田舎者が入って良い場所ではない!立ち去れ!!」
門兵はリュカ達を見下す様な目で睨み付ける。

「い、田舎者………?」
門兵の言葉に反応したのはビアンカだった。
「あ!拙いなぁ…」
呟く様なビアンカの一言に、些かの恐怖を感じるリュカ。
体を震わせ、怒りのオーラを放つビアンカ…
「田舎者って私の事言ってるの!?」
そんな妻を見て、宥める様なジェスチャーで門兵とビアンカの間に立つリュカ。

「まぁまぁ!落ち着いてビアンカ……君の事じゃないよ!こんな絶世の美女を見て田舎者なんて言うヤツ居ないよ!……ね!?」
一生懸命ビアンカを宥めるリュカは、同意を求めるかの様に門兵に問いかける。
今まで門兵には、リュカの体が邪魔をしてビアンカの事がよく見えなかったのだが、同意を求める為、リュカが振り向いた時に絶世の美女を見る事が出来た。
その姿は怒気を孕んでおり、両手には紅蓮の炎が宿っている…
素人目にも分かる途轍もない魔法力だ!

辺りは絶世の美女から沸き上がる炎のお陰で、温度が上がりかなりの暑さになってるのだが、門兵は青くなり震えている。
「ビアンカ…ビアンカ!…落ち着こうよ…こんな所で彼を消し飛ばしても、何の解決にもならない!むしろ問題が増えるだけだ!だから落ち着いて!」
殺意を帯びた瞳で睨みながら、門兵へと1歩踏み込むビアンカ…

「ま、間違えちゃったぁ~!ぼ、僕…寝不足で寝てたみたい!…何か変な寝言、言っちゃいましたか?ご、ごめんねぇ~………あ、あは…あはは…あははははは……………」
門兵は通路の端で小さくなり、うわずった声で一生懸命言い訳をする。

「そ、そうだよね!寝言だよね!大変な仕事だもんね…寝ちゃうよそりゃ…」
そう言いリュカは、門兵を庇う様にビアンカを城内へと進ませる。
門兵とすれ違う際ビアンカは、魔王も怯む視線を投げ付け先へ進む。
アルル一行が城内へ入ったのを見届けた門兵は、力無く蹲り呟いた…
「この仕事…こんなに怖かったけ?」




重い沈黙の中、城内を暫く進むアルル一行。
入口から離れ、誰も居ない空間に来るとリュカが蹲る!
「……くっ……うぅぅぅ………」
「リュカさん、どうしました!!」
アルルが心配で思わず声を掛けた………

「くっくっくっ………あはははははははは!!」
リュカは腹を抱えて笑い出す!
「ふふふ………あはははは!」
それを見たビアンカも同じように笑い出した!
状況の理解出来ないアルル達…
「この夫婦…最悪だ…」
状況の理解出来たティミーとマリー。

笑いの収まったリュカに、マリーが確認の為問いただす。
「お父様…お母様……先程のご立腹は、お芝居ですの?」
「うん。だってカンダタがさ、『田舎者は城に入れない』って言ったじゃん。しかも『俺達見た目が田舎者』とも言ったじゃん。門前払いを喰らう可能性があったからさ、ビアンカと相談したんだ!」
リュカは妻を抱き寄せ、爽やかにキスをする。

「そうなの!リュカがね、『田舎者』って言われたら、両手にメラを灯して怒って見せようって………どうだった、私の演技は?」
そして夫に抱き付きイチャイチャ始める馬鹿夫婦。
そんな夫婦を見て、胃を押さえるアルル…
ティミーはアルルの肩に優しく手を乗せ、常備薬の胃薬を渡した。
ウルフとマリーは声を揃えて呟いた。
「「酷い…」」


城内を暫く探索すると、地下に異様な空間を見つけた。
そこは、それ程広くない通路に大岩が3個…
少し奥の床には、かなりの重量がなければ反応しないスイッチが3つ…

「何だ此処は?」
リュカが不思議そうに周囲を調べる。
「お父様、きっとパズルですわよ!3個の岩に、3つのスイッチ!この岩の重みでスイッチを押すんですわ、きっと!」
マリーが瞳を輝かせ、この仕掛けの謎を解いた。
「何そのめんどくせー仕掛け!?何処の馬鹿だよ、こんなの造ったヤツは!」

「そ、そうは言いますが…結構大変ですよ…この岩、重いですから!」
ティミーが一生懸命岩を動かそうと押している…
それを見てアルルやカンダタも一緒に押すが、あまり動かない…

「…やれやれ………めんどくせーなぁ…」
そう言いリュカは、手近な岩を両手で挟み、いとも簡単に持ち上げた!
「「「え!?」」」

「何で異世界まで来て、奴隷時代を思い出さなければならないんだ!?」
そう愚痴りながら、普段歩くのと同じペースで岩を運ぶリュカ。
それを唖然と見つめるアルル達…

「だからムカつくんだよ、あの人!こんだけ凄い人なのに、普段は何もしない…」
ティミーが小声で父親に悪態を吐く。
妻は夫の凄さを再確認し、瞳を潤ませ更なる恋へと落ちて行く。


3つのスイッチを3つの岩で作動させると、更に奥へと続く隠し通路が現れた。
一行はリュカを先頭に奥へと進む。
其処には古ぼけた奇妙な壺が1つ…

「あれぇ?これが『最後の鍵』?壺じゃないのこれ!?」
リュカは壺を手に取り、中を覗き壺を振る。
「中にも鍵は入ってないよ」
「どういう事ですかねぇ…?」
アルルが壺を受け取り、不思議そうに小首を傾げる…
そんな彼女の仕草を見て、胸が高鳴るティミー…
そしてそれを嬉しそうに眺めるリュカとビアンカ…

果たして最後の鍵は手にはいるのか…
勇者カップルの恋は実るのか…
ウルフとマリーも気になりますね!



 
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