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曇天に哭く修羅

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第二部
  Get it back

 
前書き
_〆(。。) 

 
レックスと紫闇が急所を狙い合う寝技を繰り広げている姿を見ている者達。

その中に【龍帝学園】の生徒会長《島崎向子/しまざきこうこ》と【刻名館学園】の生徒会長《矢田狂伯/やだきょうはく》が居た。


「いや~予想外だったわ~。元から強くするつもりだったけど、まさかクリスちゃんがあんなに強くなるとはねぇ。十中八九、レイア君が『改造』したんだろうけど手間が省けたわー」

「向子さんのプランでは容赦なかったですからね。レイア君が手を加えてなきゃクリスちゃんが死ぬ可能性、『大』だったでしょ」


実を言うと今日の【日英親善試合】にテロリストの[人類保全連合(HCA)]が乱入し、そこにイギリスの刺客まで混ざっていたのは向子の仕業だ。


「開催地が日本だったし彼等がここまで大掛かりな騒動を起こそうと思えば日本の権力者が協力しなけりゃ無理ですもんね」


もちろん狂伯もプランに一枚噛んでいるが、本命は《立華紫闇》の強化であり、《クリス・ネバーエンド》の強化はついでにするつもりだった。


「このまま立華君と関わり続けるつもりならクリスちゃんには強くなってもらう必要が有る。先のことを思えばね。だから今回はエリザちゃんに対するトラウマを克服してもらうプランも立ててたんだ。レイア君のお陰で仕事減ったのはラッキーだよねホント」


後は紫闇がレックスに勝ちさえすれば向子の思い通りに事が進むので次の育成プランを考えておかねばならない。


「俺達にとっては立華君が力を制御できるようになってくれれば有り難いけど、途中で潰れたり死んだりしても特に問題ないからなあ」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


馬乗りになった紫闇がレックスの右腕関節を取りに行くがあっさり往なされる。

足を首に絡めて三角絞めを狙うも動きを読まれて回避されてしまう。


(間違いない。レックスは寝技や関節技の受け方・抜け方を熟知してる。それに返しでこっちの左足を極めに来やがった)


上手くて強い。

しかしそれだけでは足りない。

だがレックスは鬼。

ゾクゾクするほど楽しめる。

ルールに縛られた試合では有り得ないほど急所を狙った攻防に当然の如く人体破壊のリスクが常に付きまとうワクワクな展開。


「大人しく死にましょうか?」


レックスは自分がマウントを取ろうと体を動かすが紫闇は主導権を渡す気が無かった。


(立ち技だけじゃない。黒鋼で死ぬほど寝技の修業をやってきてるんだよ)


体術の専門である黒鋼で鍛えられた紫闇に対抗できる信じられない男がレックス。


「けど体術(こっち)では負けらんねぇんだわ」


紫闇はレックスの両腕を掴み取って組み伏せると更にマウントの圧を上げる。

そして大きく口を開く。


噛み付き(バイティング)ですか)


レックスの首を狙う紫闇の口。

しかしレックスは慌てない。

口から針を吹き出す。

紫闇は思わず反射で躱した。

回避が元で拘束が緩んだレックスは軟体動物のようにすり抜け紫闇と同時に立つ。

そこからは打撃の応酬。

更に口論も並行した。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「自分の限界を決め付けてんじゃねぇ! たかだか一回心が折れただけで立ち止まりやがって! この根性無しがぁッ!」

「黙りなさい夢想家」


レックスは苦い顔をする。


「そもそも折れた理由が下らない。命乞いしたからどうした? そんなんで自分に失望してたらきり無えよ。自分の可能性を見限んなッ!」


レックスは紫闇の言葉を止めようとボディーに向かって痛烈な打撃を打ち込む。


「黙れと言っている……」


紫闇は思わず胃液が口へ昇ってきそうになるのを堪/こらえて叫ぶ。


「死んだ母親が今のあんたを見たらどう思うかねぇッ! 良い反応は貰えないだろうよッ! あんたは死んだ母親に顔向け───」


レックスはキレた(・・・)

彼の攻撃が激しくなる。


「お前に何が解る! 母を奪われたッ! 抗っても意味が無かったッ! 貴様に私の絶望を理解できてたまるものかッ!」


何もかも諦めたレックス。

それを否定する紫闇。

言葉だけでは伝えきれず理解できないことが有るから身をぶつけ合って戦う。


「諦めを否定して自分を信じ抜き! 前に進む意志を持ち続けることが出来たのならばッ!! 人は何処までも進めるッッ!!!」


紫闇はレックスが再びクリスとエリザから認められた頃に戻れると信じていた。


「世界はそんな風に出来ていないッ! 全ては運命によって決まっているッ!! どんなに足掻いても変えられないものが有るんですッ!!!」


両者共に引かない。

譲る気は全く無いのだ。

自分を力で押し通し、相手を捻じ曲げる。

そんな想いが原動力となって互いの望む結末を迎える為に今の彼等を動かしていた。
 
 

 
後書き
_〆(。。) 
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