戦国異伝供書
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第八十五話 四万十川の戦いその九
「殿、何を言われますか」
「我等は殿の、長曾我部家の家臣ですぞ」
「そのことは変わりませぬ」
「例え天と地がひっくり返っても」
「当家が織田家に降ってもです」
今の様になってもというのだ。
「その気持ちは変わりませぬ」
「我等は殿の家臣です」
「これまで通りです」
「ここにいさせてもらいます」
「そうか、ではわしはお主達と共にこれからはじゃ」
元親は家臣達の言葉を受けて言った。
「この土佐を万全に治めていこう」
「戦はないですな」
「政ですな」
「そちらを主にしますな」
「そうしていきますな」
「うむ、だからじゃ」
それでというのだ。
「お主達にはこれからも働いてもらうぞ」
「わかり申した」
「これからはこの土佐を治めていきましょう」
「高知に大きな城も築きますし」
「やることは多いですな」
「高知の城は大きいだけではない」
元親は家臣達に笑みを浮かべて話した。
「天守閣も築きたい」
「近頃話題のですな」
「城の本丸に置くとりわけ大きな櫓ですな」
「城全体どころか遠くまで見渡す」
「高い櫓ですな」
「寺の塔の様なな、それを築く」
高知の城にというのだ。
「本丸の中心にな」
「そうしますか」
「当家の総力を挙げて」
「そうしますか」
「そして土佐を今より豊かにし」
そのうえでというのだ。
「民達を幸せにしよう、してわしは新たな主を持った」
「これまでは我等は土佐守護の細川様の下にいましたが」
親泰が言ってきた。
「それがですな」
「うむ、織田家にお仕えすることになった」
「左様ですな」
「これより我等が殿はじゃ」
「織田様ですな」
「そうなった」
信長、彼にというのだ。
「忠義も尽くすぞ」
「わかり申した、そのことも」
「そしてじゃ」
元親はさらに話した。
「殿は官位も朝廷より頂いた」
「殿上人にもなられましたな」
「先の上洛の時にな、それでわしにもな」
元親にもというのだ。
「官位が与えられるという」
「何と、官位をですか」
「朝廷より直々に」
「それは凄いですな」
「殿が官位を与えられるとは」
「夢の様なお話ですな」
「土佐の片田舎におってはな」
到底という言葉でだ、元親は話した。
「官位なぞ夢じゃな」
「はい、到底です」
「我等の様な者が官位なぞ」
「とてもです」
「そんな話はありませぬ」
「しかしですか」
「そのわしがな」
この度というのだ。
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