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森の城

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第六章

 ティターニャは彼等を見てオベローンに言った。
「貴方の言う通りだわ」
「そうだな」
「ええ、まるで自分達の子供を見る様にね」
「月を見上げているな」
「愛しげに、けれど」
「悲しげにな」
 その様にというのだ。
「見ているな」
「そうね、まるで月に自分達の子供がいて」
「永遠に出会えない様な、な」
「そうした風な目ね」
「そうだな」
「不思議な光景ね」
「あの老人と老婆は日本から来たそうだな」
 このことについて言うのだった。
「何でも」
「東洋のあの国から」
「彼等は日本で何かあったのか」
「そのことがなのね」
「気になる、明らかにだ」
 老人と老婆を見ていると、というのだ。
「二人は夫婦でだ」
「そして子供さんがおられたわね」
「そのことは間違いないが」
「例え妖精でもね」
「月にはいない」
 オベローンはこのことを指摘した。
「いるのはあくまでだ」
「この地球と」
「妖精界だ」
「そのどちらかで」
「決してだ」
「月にはいないわね」
「そうだ、しかし」
 それでもとだ、オベローンは日本から来た妖精の老夫婦を見つつ妻であるティターニャに対して話した。
「何故二人は月を見続けている」
「それも愛しげに悲しげに」
「それがわからないな」
「本当にそうね」
「愛情と悲しさ、寂しさ」
「それに懐かしさもね」
「二人の目にはあるが」
 月を見るそれにというのだ。
「一体二人と月の間に何があるのか」
「それが気になるわね」
「だが」
 それでもとだ、オベローンは言った。
「それを聞くことはな」
「すべきではないわね」
「無粋なことはしない」
 オベローンはすっきりとした口調で述べた。
「それが妖精でありだ」
「王であり王妃である私達のあるべき姿ね」
「そうだ、王であるならな」
 そして王妃であるならとだ、オベローンはティターニャに話した。
「やはりな」
「そうしたことはすべきではないわね」
「それぞれ過去がある」
「妖精にしても人にしても」
「それは心だ、心に無闇に踏み込むなぞ」
 それこそというのだ。
「王たる者のすべきことではない」
「王妃であっても」
「ここは聞かずにな」
「私達は私達で」
「この城でくつろいでいこう」
「いい旅だし」
「そうしていこう」
「ではな」
 二人でこう話してだ、それでだった。
 二人は庭を後にした、そして部屋に戻って共に酒を飲んだ。この後も風呂に美酒と美食、景観を楽しみくつろぎ。
 城を去る日になってだ、オベローンは老夫婦に言った。
「楽しませてもらった」
「左様ですか」
「心から癒された」
 こう老人に話した。
「実にいい日々だった」
「満足されて何よりです」
「こうした旅もあるな、ならだ」
「また来させてもらうわ」
 ティターニャも二人に声をかけた。
「これからも」
「そうして頂けますか」
「機会を作って」 
 老婆に微笑んで答えた。
「そうさせてもらうわ」
「それでは」
「また」
「はい、またいらして下さい」
 老夫婦は二人を笑顔で送った、そのうえでだった。 
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