見越し入道
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第二章
入道は大きくなった、供の者も同じものを見て幻庵に言った。
「これこそが」
「間違いなくな」
幻庵は見上げ続けつつ応えた。
「見越し入道であるな」
「左様ですな」
「さて、まことにな」
「見上げれば見上げる程ですな」
「大きくなるのう」
「何処までも」
「もう城の櫓や塔より高い」
そこまでというのだ。
「これではじきにじゃ」
「天にまで、ですな」
「届くであろう」
「あの、ですが」
それでもとだ、供の者は言った。
「和上には」
「うむ、考えるところがある」
「左様ですな」
「それを今からしよう」
「と、いいますと」
「こうするのじゃ」
こう言ってだった。
幻庵は目を下にやった、そうして供の者にも言った。
「お主もじゃ」
「それがしもですか」
「目を下にやっていけ」
「和上の様に」
「そうじゃ、そうしてみよ」
「それでは」
供の者は幻庵の言葉に頷いてだった。
彼も目を下にやった、すると。
見越し入道はどんどん縮んでいった、それでだった。
二人が元の高さまで目線をやるとだった、もうその大きさは。
元に戻っていた、それで幻庵は元の大きさに戻った入道に笑って話した。
「見越し入道見下げたり」
「うっ、そう言うか」
「見越して上がるなら見下げれば下がる」
そうなるというのだ。
「そうなるのが道理であろう」
「よくわかったな、お主」
「ははは、考えてみればそれが筋」
幻庵は入道に笑って話した。
「そう考えてじゃ」
「それでなのか」
「そうかと思ったが」
それがというのだ。
「その通りになったのう」
「ううむ、やられたわ」
「してお主正体が見えておるぞ」
幻庵は入道に笑ってこうも話した。
「尻尾がな」
「あっ、確かに」
ここで供の者も気付いた、見れば。
ページ上へ戻る