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ペルソナ3 転生したら犬(コロマル)だった件

作者:hastymouse
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前編

 
前書き
ペルソナ4の陽介 登場です。コメディーです。
前回、P5のモルガナとのコラボを書いたので、次はP4とのコラボで・・・と思っていたところ、たまたま見た「ペルソナQ2」の宣伝番組で、雪子の声優である小清水亜美さんが「陽介が草食べてる~」と非常にウケていました。なんだかそれを見ているうちに、急に陽介をイジってみたくなってこうなった次第です。やっぱり七転八倒してこそ陽介っていう気がしますよね。
 

 
ドアを抜けると、真っ赤な巨大ロボットが待ち構えていた。
巨大と言っても3m足らずだろうが、生身で対すると圧倒されるほどでかい。それに加えて、この圧倒の巨兵は、笑えるほどテレビアニメのヒーローロボっぽかった。ご丁寧にも両肩に『正』『義』と一文字ずつ入っているのがさらに笑える。
「またロボットかよ! しかもわざわざ『正義』とか書いてあるし・・・直斗のやつ、よっぽどこういうのにあこがれてたんだな。」
ついいつもの調子で軽口をたたいてしまう。
【強力な敵だよ。注意して!】りせ が警告してきた。
おっといけねー。
俺は気を引き締めなおした。笑っている場合ではない。
「ようし、行くぜ相棒!」
俺はそう声をかけて、足を踏み出した。

そこは特撮番組に出てくる秘密基地のような建物だった。
白鐘直斗の内面世界ともいうべき「秘密結社改造ラボ」。普段の大人びた言動とはほど遠い「子供っぽさ」に驚かされる。しかし、このテレビの中の世界では、人が隠していた内面がひどく歪んで誇張される。天城や完二や りせ の時もひどいもんだったから、まあこのくらいなら可愛いもんだろう。本人もきっと赤面する思いだろうから、このことについては何も言わないでおいてやろう。
「ジライヤ!」
俺はペルソナを呼び出して疾風攻撃をしかけた。しかし、さしてダメージを与えられない。
相棒が火炎攻撃、里中が物理攻撃、完二が電撃攻撃を放つ。
だが巨大ロボはびくともせず、逆に強力な物理攻撃を返してくる。
「チッ、しぶてぇ!」
俺は敵の攻撃を軽やかにかわして言った。フットワークには自信がある。そう簡単には攻撃を受けはしない。
「少しずつ削っていくしかない。やつの反撃に気を付けろ。」相棒が返してきた。
「わーってるよ。」
俺はそう応えると、再度 ペルソナを呼び出す。
敵は時折、動きを止めて力をチャージし、その後に強烈な攻撃を放ってくる。まともに食らえば一撃で再起不能になりそうな必殺攻撃だ。
こちらも有効なダメージを与えられないまま、しばらく戦闘が続いていたが、ついに敵の反撃を受けて完二が倒れこんでしまった。
さらに次の攻撃に備えて巨大ロボが力をチャージする。
「あぶねー!完二、早く起きろ。」俺は慌てて叫んだ。
敵の強烈な攻撃が襲いかかって来る。危うく完二が転がって避ける。俺も自慢のフットワークでかわそうとしたが、そこで何かに足を取られた。
「あ?」
倒れた完二の手から離れた盾が、俺の足元まで飛んできていたのだ。
「うそーん!!」
バランスを崩してよろける。そこの襲いかかってくる必殺の一撃。
「ぐああっ!」
俺は全身に強い衝撃をくらって吹っ飛んだ。目の前が真っ暗になり、そして俺は意識を失った。

気が付くと床に寝ていた。
体を起こそうとしたがうまく立ち上がれず、手を床についた状態で上半身を起こした。
周りを見回すと、そこは見たことの無い部屋だった。ホテルか何かのロビーのような場所だ。
しかし、何かがおかしい。目の前にソファーセットが見えているが、サイズが妙に大きいのだ。
「コロマル、大丈夫か?」
首をかしげていると、ふいに声をかけられた。
(コロマル?・・・大丈夫って何が?・・・)
振り向くと小学生くらいの男の子がいた。
しかし、やはり妙にサイズが大きい。というより、こちらの体が縮んだような感覚だ。
俺はその子に『ここはどこかな?』と聞くつもりだったが、口から出てきたのは「ワン!」という声だった。
あっけにとられていると、男の子がいきなり「ヨシヨシ」と言いながら、俺の頭をわしわしと撫でてくる。そして目の前にドッグフードの入った皿が置かれた。
(なんだこれ?)
しばらくそれを見つめた俺は、急に腹が立ってきて「犬じゃねーんだから!」と声を上げた・・・つもりだったが、口からは「ワオーン!」と声が出た。

えっ・・・??

あらためて自分の体を見回す。両手が犬の前足のようになっている。振り向いてみると、白い毛におおわれた裸の体が見える。背後に尻尾が揺れている。

犬・・・・????

・・・驚愕!!!!
『なんじゃこりゃー!犬じゃねーか!!』
俺が叫ぶ声は、そのまま犬の遠吠えになった。
いきなり頭をペシッと叩かれる。
「こら、こんなとこで吠えるんじゃない。」
男の子に叱りつけられたが、こっちはパニック状態でそれどころではない。
「僕も、もう学校に行かなきゃいけないんだから・・・大人しくしてろよ。」
彼はそう言うと、走ってドアの方に駆けていく。背中にランドセルが揺れている。
俺は慌てて追いかけようとして、バランスを崩して転倒してしまった。どうも体の感覚がおかしい。
(犬の体で人間のように立ち上がろうとするから、うまく体が動かないんだ。)と気づいた。
そこで(犬だ。俺は犬だ。)と自分に言い聞かせながら、体を起こしてみる。
何とか四つん這いで立ち上がった時には、もう誰もいなかった。
しばらく茫然としたまま立ちすくんだが、とりあえずじっくり考えてみて、頭の中を整理することにした。
(えーと、ちょっと待てよ・・・俺は花村陽介。八十稲葉高等学校の二年生。ジュネス八十稲葉店の店長の息子で、ペルソナ能力を持つ自称特別捜査隊の一員。・・・そうだよな。)
記憶が一気に戻ってくる。
俺は仲間とともに、八十稲葉で起きた殺人事件と、次々起きる誘拐事件を追っていた。
誘拐された人はテレビの中に落とされる。そこは異常な世界で、早く助け出さなければ被害者は死んでしまう。俺たちは身に着けたペルソナ能力で、テレビの中に巣くう怪物「シャドウ」と戦い、そして被害者を救出し続けた。
(あの日、探偵王子の白鐘直斗がテレビの中に入れられたんで、救出の為に「秘密結社改造ラボ」に突入したんだ。途中、真っ赤なロボットみたいな強敵と戦い、俺は相手の攻撃をかわしそこなって・・・それで・・・どうしたんだっけ?)
そこからがどうしても思い出せない。どうして犬なんかになっているのか、わけが分からない。
(・・・もしかして・・・死んだ?)
ふっと頭に浮かんでくる。
(死んで・・・転生した?)
どんどん嫌な考えになってくる。
そこから先は考えたくなかったが、思考がとまらない。
(・・・それで犬に?)
まさか、と思って自分の体を何度確認しても、犬になっているという事実は覆らなかった。
どれだけの間、茫然としていただろう。放心状態で目を泳がせていて、ふと目に入った扉を「トイレかな?」と思ったのをきっかけに、次第に周りの様子に目が行きだした。
(個人の家とも思えないし、ここはどういう場所なんだろう?)
試しに歩いてみる。最初は違和感があったが、次第に慣れてきたのか、自然に四つ足で歩けるようになってきた。
男の子が出て行ったドアの横には、お店にあるような受付カウンターがある。ドアには鍵がかかっているようで、犬が外に出られるような出口も見当たらなかった。今はこの建物から出られそうにない。
カウンターの正面の広いスペースにはソファーセットとテレビが置かれている。その向こうには食堂のような大きなテーブルにイスが並んでいる。
(お店・・・じゃないな。ホテルっぽいけど、どこにも何の案内表示も出てないし・・・何かの施設なのかもしれないな。)
奥の階段も上ってみた。
2階に上がったところには少し広いスペースがあり、イスと自販機が置いてあった。のどが渇いていたが、犬では自販機を使えない。
廊下の奥に進んでみると個室らしきドアが並んでいる。
(・・・寮・・・とかかもしれないな。)
さらに上の階に上がってみたが、同じような構造だ。まだ上もあるようだが、たぶん同じだろう。
ため息が漏れる。
(さて、どうしよう・・・まさか、このままずっと犬ってことはないよなあ。もしそうだとすると、犬の寿命ってどのくらい? 長くて20年くらいかな? ・・・となると、俺、あと数年で死んじゃうんじゃないの・・・。まあ、あの戦闘でもう死んじゃってるのかもしれないんだけど・・・。それに犬のまま長生きするのも辛そうだし・・・。)
考えれば考えるほど気が滅入ってくる。
(いかん、いかん。元に戻れないと決まったわけじゃないし・・・どんな時でもポジティブに考えないと・・・)
慌てて、気を取り直した。
(何か前向きなことを考えよう・・・そういえば腹が減ったな。)
いや、実はずっと空腹ではあったのだが、あまりの衝撃にそのことが気になっていなかったのだ。
(犬でも腹はへるんだなあ。・・・当たり前か。どれくらい食ってないんだろう。少なくとも今日はまだ何も食ってないよな・・・。)
考えているうちになんだか尿意まで、もよおしてきた。しばらくトイレにも行っていないようだ。しかし人間用のトイレには入れないし、かといってその辺の壁に片足をあげておしっこする気にもなれない。後で誰かに怒られそうだし、なにより情けない。
とりあえずそれ以上、建物の探索はあきらめて、1階に戻ることにした。
しかし階段を降りようとして、
(うわっ、こわっ!)
足がすくんだ。四つん這いの前傾姿勢で階段を降りるのはかなり怖い。
結局、カニの横歩きのような無様な姿勢で、恐る恐る降りていく。時間をかけて2階フロアまでなんとか降りて一休みした後、さらに1階への階段に挑戦した。
半ばまで下りてきて、フロアまであと少しと・・・思ったところで、いきなり足を踏み外した。
(うわっ!!!)
俺は階段をコロコロと転がり落ち、床に体を打ち付けて「キャイン!」と悲鳴を上げた。
しばらく痛みにもだえ苦しむ。
泣きたい気持ちで起き上がろうとしていると
「コロマルさん、大丈夫ですか?」と声をかけられた。
声のした方を見ると、そこには金髪の美少女がいた。
(そういえばさっきも「大丈夫か」って聞かれたな。)と思いながらも、少女の姿に目を奪われる。
白いレオタードのような服、首元に大きなリボン、両肩に金属の肩パット。何かのコスプレなのだろうか・・・?。
(ここが何かの寮だとして・・・いるのが小学生と金髪のコスプレ美少女って、なんの寮だかさっぱりわかんねえよ。)
普段なら、軽い調子で話しかけたくなるような女の子だったが・・・こちらは犬。
(犬のナンパはありえねーよな。)
再びため息をつき、すごすごと痛む体をひきずって歩きだした。
元いた場所に戻ると、目の前にドックフードの入った皿と、水の入った器が置いてある。それを見つめているうちに、さらに情けなくなってきた。いくら空腹でも、これに手をつける気にはなれない。
『ああ、はらへったなー。』思わず声が漏れる。
「食べないのですか?」
後をついてきた金髪美少女が、不思議そうに聞いてきた。
『さすがにドッグフードは食えねえよ。』と嘆く。
「なぜ食べられないのですか? 昨日は普通に食べていたようでしたが?」
少女が重ねて聞いてきた。
『昨日は食べていた? ・・・ってことは昨日は犬だったんだ。』と俺は返した。
(俺がこの体に入る前からこの犬はいた。・・・ってことは、もともと犬だった体に、死んだ俺の魂が入り込んだんだろうか?)
こちらが考え込んでいる間、少女は沈黙したまま、まじまじと俺のことを観察している。
そして「今も犬であります。」と結論を出すように言った。
『いや、まあ、そりゃそうだけど・・・そういうことじゃなくて・・・』
俺はそこまで言って、ふいに違和感を感じた。
『あれ? もしかして・・・俺達、今、会話してない?』
「会話はコミュニケーションの基本であります。」
俺の問いかけに少女が答えた。
答えは的外れなものの、やはり会話が成り立っている。
『それはそうだけど・・・俺、犬だよね。』
「犬であります。」
『普通、人間は犬と会話できないよね。』
「人間にはできないであります。」
『それ・・・おかしいよね。君は人間でしょ。』
俺はたたみかけた。
「私は特別制圧兵装であります。そして、オプションとして動物と意思疎通する機能も備わっているであります。」

???????

『機能?・・・なんだか全然わかんないんだけど・・・俺の言葉が理解できるわけだよね?』
「言葉・・・というか、正確に言うと、意思をくみ取ることができるであります。」
まあ、なんでもいいが、とりあえずこちらの意思が伝えられるだけで充分だ。
『実は、俺は犬じゃなくて人間なんだよ。』
俺はわらをもつかむ気持ちで必死に訴えた。
「もうしわけありませんが、私の認識では犬にしか見えません。」
『体は犬だけど、心は人間なの! 』
「見た目は子供、頭脳は大人・・・みたいなものでしょうか?」
『そう、それ! 俺の名前はコロマルとかじゃなくて花村陽介っていうの。わかる?』
「すみません。相手の意思をくみ取っているだけなので、さすがに固有名詞は伝わらないであります。」
ええと・・・つまり人間という概念は伝わっても、花村陽介という名前は伝わらないということか。まあ、意思が伝わるだけでもすごいけどね。それって、どういう力だろう。・・・超能力か?
さっき「機能」って言ってたから、もっと何か機械的な物なのかもしれない。
『そっかー。まあ、いろいろ言いたいことあるし、聞きたいことも山ほどあるんだけど・・・』
俺はそこで少しためらった。
しかし、どうせこっちは犬だ。おまけにそろそろ限界。非常事態だ。いくら金髪美少女相手でも、言わないわけにはいかない。
『あー、それで・・・その・・・実はトイレに行きたくて・・・どこに行ったらいいのかな?』
「コロマルさんのトイレはあそこです。」
俺の問いかけに、すかさず少女が指さす。
示された犬用トイレをしばらく見つめて・・・俺は泣きたくなった。
『あのさー・・・しばらくこっちを見ないでいてくれるかな?』

 
 

 
後書き
さて、とりあえず勢いでここまで来ました。
私はこれまでUPした作品も時々書き足ししていますので、なんとなくこれも後でいろいろ書き足していきそうな感じがしています。まずは最後までは一気に書きあげたいと思いますのでお付き合いください。
 
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