盲目の猫
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第二章
「よくなりましたが目は」
「目はですか」
「はい、見えていません」
「やっぱりそうですか」
「全く」
完全にというのだ。
「見えていなくて」
「それで、ですか」
「そのことはご承知下さい」
「わかりました」
桜子は獣医に確かな声で答えた。
「そうじゃないかと思っていましたが」
「それでもですね」
「飼います、両親も頷いてくれました」
確かにというのだ。
「ですから」
「そうしてくれますか」
「最初から決めていましたから」
「目が見えていなくてもですか」
「そうすると」
その様にというのだ。
「します」
「それでは」
「はい、お家に連れて行きます」
桜子は獣医に笑顔で答えた、そしてだった。
猫を引き取りルナと名付けて家で育てはじめた、やはりルナは目は見えないが耳と鼻はしっかりとしていてだった。
目が見えなくても動けていた、それで桜子は彼女にしきりに声をかけてだった。
ご飯やトイレをさせた、すると徐々にであるが。
ルナは自分からご飯にもトイレにも行ける様になった、桜子はルナがご飯やミルクを入れた皿のところに来たりトイレをする度に褒めた。
「偉いわ、しっかり出来たわね」
「姉ちゃんまたルナ褒めてるな」
「だって出来たから」
それでというのだ。
「褒めてあげないとね」
「それでか」
「そう、しっかりとね」
「ルナを褒めてるんだな」
「そうよ」
まさにというのだ。
「そうしてるの」
「成程な」
「目が見えなくてもね」
そのハンデがあるがというのだ。
「しっかり頑張ってるでしょ」
「それで褒めるんだな」
「出来る様になってるし」
自分でというのだ。
「この娘頑張ってるわ」
「目が見えなくてもな」
「生きようってね。だから」
「それでか」
「私は応援しか出来ないから」
「姉ちゃん手取り足取りやってるだろ」
「最初はね、もうこの娘かなり出来る様になったわ」
まさにというのだ。
「だから今はね」
「応援だけか」
「そうよ、この娘もっともっと出来る様になるから」
だからだというのだ。
「応援していくわ」
「そうか、けれどな」
「けれど?」
「ルナ姉ちゃんに一番懐いてるな」
弟は姉にこのことをここで話した。
「そうなってるな」
「そうかしら」
「ああ、姉ちゃんのところにいつもいるしな」
このことを見てというのだ。
「そもそも姉ちゃんが拾ってきただろ」
「そのこともあるの」
「だからルナはな」
「私に一番懐いてるの」
「そもそも目が見えなくてもいいって言うよな」
「誰だって何かあるから」
姉の返事は何でもないというものだった。
「足が悪かったりとかあるでしょ」
「病気とかか」
「最初から何処か悪い人もいれば後でそうなる人もね」
「いるからか」
「そう、目が見えなくても猫は猫でね」
そうしてとだ、姉は弟にさらに話した。
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