顔だけの女
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第一章
顔だけの女
八条大学経済学部一回生の福島登志夫は友人達に上機嫌で大学の中庭の四人用の席に座ってそこで話していた、収まりの悪い黒髪をショートにしていて明るい顔立ちの青年だ。背は一七二位で痩せている。脚の長さは普通だ。その彼が言うことはというと。
「俺に遂に彼女が出来たけれどな」
「またその話は?」
「凄く可愛いんっていうんだろ」
友人達はその彼にやれやれという顔で応えた。
「伊志火気有里子ちゃんな」
「コンパで知り合った娘か」
「立憲大学の娘だろ」
「俺達と同じ一回生の」
「ああ、関西の雑誌で読者モデルやっててな」
登志夫はさらに話した。
「顔よし、スタイルよしでな」
「それでだよな」
「インスタもやっててな」
「フォロワー十万超えで」
「動画でも人気なんだろ」
「そんな娘が彼女になったんだぞ」
それでというのだ。
「嬉しくない筈ないだろ」
「彼女いない歴イコール生きてきた歳月のお前がな」
「そうなるなんてか」
「ああ、後はな」
ニヤリと笑ってだ、登志夫はこうも言った。
「有里子ちゃんとな」
「キスしてか」
「そしてだよな」
「ホテルだよな」
「俺もその時が来たんだよ」
卒業、学校のそれとは別のそれを果たす時がというのだ。
「遂にな」
「そうか、まあな」
「そっちは楽しめよ」
友人達はまずは登志夫の幸を願った、だが。
それと共にだ、彼にこうも言うことを忘れなかった。
「けれどお前最近その話ばかりだぞ」
「それしか言ってないぞ」
「彼女出来たことが嬉しいのはわかるさ」
「しかも読モやってる位の娘がな」
「それはいいけれどな」
「そればかり言い過ぎだろ」
こう言うのだった。
「もう他の話題出せ」
「いい加減聞き飽きるだろ」
「お前が幾ら嬉しくてもな」
「他の話題も出せよ」
「じゃあゲームかアニメかラノベか陸上か声優さんか野球か」
登志夫は自分の趣味の話を出した、高校まで部活は陸上部だったのでそちらのことを入れるのも忘れていない。
「そういうのか」
「野球は阪神だよな」
「そっちだよな」
「ああ、だから猫も好きだっていうかな」
ここで登志夫はこうも言った。
「有里子ちゃん猫も飼ってるっていうからな」
「そのこともポイントだよな」
「お前にとってそうだよな」
「そうなんだよ、生きものも大事にする」
このこともというのだ。
「いい娘だろ」
「美人で性格もいいとな」
「本当にいいな」
友人達もそこは納得だった。
「お前もそこ見てるんだな」
「ちゃんとそうしてるんだな」
「当たり前だろ、幾ら顔がよくてもな」
それこそというのだ。
「性格ブスだと意味ないだろ」
「そうだよな」
「そこ本当に大事だな」
「そこも見てか」
「お前は付き合ってるんだな」
「そうなんだよ」
こう言ってだ、登志夫は彼女のことをさらに話したが友人達の返事は辟易しているものだった。そして。
有里子との交際を進めていった、有里子は彼と相性がよくデートは楽しいものだった、ただ金遣いが荒く。
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