GATE ショッカー 彼の地にて、斯く戦えり
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第8話 イタリカへ!そして新たな問題
前書き
オリジナル怪人募集します!!
ショッカー怪人に限らず、ドーパントでも、ヤミーでも、ゾディアーツでも、マギアでも何でもあり!!
能力や姿などを記載の上、感想欄またはメッセージでお書きください!
GOD州 ニューヨーク GOD秘密警察 本部
執務室では窓ガラスに映るニューヨークの摩天楼を背景に机に座る白いスーツの男がいた。男は机の上の受話器を取り部下に電話をかける。
「私だ。単刀直入に言う。日本世界に送る工作員を3倍に増やせ。例の委員会でついさっき決まったんだ」
『分かりました、3倍ですね。手配します。どの国に潜入させますか?』
「送る国は日本、中国、韓国、北朝鮮、アメリカ、ロシア、それとEU各国だ」
白いスーツの男はリストを取り出して国名を読み上げる。どれも今後の対日外交に影響しそうな国ばかりだ。
「それと工作員とは別にワームを連れていけ……。向こうの世界の各国の政治家や自衛隊上層部、マスコミ関係者に擬態させろ。ただし、国家元首には手を出すな。万が一正体がバレた時にまずいからな」
『了解しました。』
"元"地球外生命体 ワームはクロックアップという人間を遥かに超えるスピードで活動する能力を持っている。しかしワームの真骨頂は人間に擬態する能力であり、襲った人間の記憶や人格、所持品、果ては性癖に至るまでコピーしてしまうのである。
GOD秘密警察ではこのワームの特性を活かして不穏分子の1人に擬態して紛れ込ませ、アンチショッカー同盟中東支部を壊滅させた実績がある。
やがて白いスーツの男は部下に粗方のことを指令した後、電話を切って室内の壁に掛かっていたショッカーレリーフに敬礼した。
「GOD秘密警察の長官としてショッカー大首領の名のもとに………!」
イタリカ フォルマル伯爵領であり、テッサリア街道とアッピア街道の交点に位置した交易都市である。
現当主のミュイは11歳。前当主の急死を受け、他家に嫁いでいた長姉と次妹がミュイの後見人を巡って争っていたのだが帝国の異世界出兵に参加した両家の当主が戦死。
フォルマル家にかまう余裕のなくなった両家が兵を引き揚げた結果、不正がはびこり治安が悪化した。そして―
イタリカは現在、盗賊の襲撃を受けていた。
「クソッ!!引け!引け!」
市民兵の必死の猛攻を受けて盗賊団の頭領らしき男が叫ぶと盗賊達は逃げていく。
「ノーマ、ハミルトン!無事か!?」
「ハァ、生きてま〜〜す。ハァ」
ピニャが叫ぶと騎士ノーマは疲れ果て手を上げて無事を知らせ、ハミルトンは息を荒くしながら答える。
「殿下、小官の心配はしてもらえんのですか?」
「グレイ、貴様が無事なのは分かりきってる」
「姫様〜、どうして私達、盗賊なんかと戦ってるんですか〜?」
「異世界の敵がイタリカ侵略を企んでいると思ったんだ!アルヌスとオ・ンドゥルゴに向かう途中でイタリカが襲われていると聞いてみれば、まさか異世界の敵と戦った連合諸王国軍の敗残兵崩れの盗賊団とは……!!」
ピニャは疲れ果て地面に座り込む市民兵に叱責する。
「お前達!休むのは後だ!盗賊共はまた来るぞ!!3日だ!!3日持ち答えれば妾の騎士団が到着する!!それまで頑張るんだ!!」
それを聞いた市民兵達は疲れ果て死んだような目のまま死体を片付け、柵を補強する。
ピニャはさっきの盗賊の襲撃で破壊された門を直せるかグレイに尋ねる。
「グレイ、どうだ?門の調子は?」
「駄目ですなぁ、いっそのこと材木で塞いで敵が来たら火でもかけますか」
「そうか……グレイ、そなたは休め。妾も館で仮眠をとってくる」
皇帝モルトの5番目の子供であるピニャ・コ・ラーダは側室の子であるが皇位継承権10位を持つ。やんちゃで周りを困らせていた彼女が「騎士団ごっこ」を始めたのは12歳の頃、女優だけの歌劇を見たのがきっかけといわれる。
帝都郊外の使用していない建物で貴族の子女を集めた彼女のごっこ遊びは子供の教育にもいいと回を重ねるごとに親達には好評になり数年後には「訓練」は2ヶ月〜3ヶ月に及ぶようになった。あげくに正規軍教官による本物の軍事教練。
騎士団では自立 規律心 敬愛 愛護 連帯感が育まれ、義理の兄弟姉妹関係を結ぶ儀式さえあって独自の気風が確立されていた。
ピニャが16歳の時の薔薇の咲く頃、男性団員がそのまま軍人への道を進んでいく中、彼女は女性団員を主とする『薔薇騎士団』を設立した。
周囲から儀仗兵のような存在と思われていたがピニャはあくまで実戦を希求。
その騎士団がイタリカへ向かっていた―。
仮眠中のピニャはメイド長に水をかけられて飛び起きた。
「何だ!敵か!?」
「さぁ何とも…。果たして敵か味方か…ともかく東門にてご自身の目でご覧ください」
東門に到着したピニャは扉の覗き窓を通じてそれを見た。
外には千堂達の乗ったショッカーの高機動車が停まっていた。しかし自動車を見たことがないピニャは戸惑う。
「何だあれは?攻城用の木甲車の類か?
前の2台の屋根には長弩があるな……どれも鉄製か?」
「何者だ!?姿を見せろ!!」
城壁の上からノーマが叫んで市民兵達はボウガンを構える。
千堂達は困り果てていた。
避難民達の自立資金を得る為にイタリカに向かい、ショッカーとしてもとにかく異世界の情報が欲しいので偵察のため出向くことになったが状況を最悪そのものであった。
盗賊と戦っていたことなど知らない千堂達でさえ市民兵達の鬼気迫る表情で何が起きたのか察する。
「大歓迎だな……」
「明らかに戦闘か何かあった後ですね…どうします?」
「どうしたものか、今日のところはやめておくべきじゃ…」
「却下」
千堂の呟きをレレイが却下する。
「入口は他にもある。ここがだめなら他に回ればいい。センドウ達は待っていてほしい。私が話をつける」
「えっ!?君が?」
「ちょっと待ってレレイ!」
驚く加頭を他所にテュカが割って入る。
「なんでこの街にこだわるの?私達を助けてくれてるこの人達を私達の都合で巻き込んでいいの?」
「だからこそ行く。私達は敵でないと伝える。恩を受けているセンドウ達の評判を落とさないために。」
「……分かった、私も行く。」
そう言うとテュカは矢除けの精霊魔法を唱えて2人は車から降りた。それに続くようにロウリィも降りる。
それを見た千堂もいても立ってもいられなくなり、車から降りた。
「加頭、俺も降りる。なんかあったらこの小隊を頼む」
「分かりました。お気をつけて」
「誰か出てきたぞーーー!!」
市民兵の1人が叫ぶとピニャが高機動車から降りてきたレレイ達に注目する。
「魔導師…あの杖はリンドン派の正魔導師だ。それに金髪のエルフ……一体、何をするつもりなのだ?もし敵だとしたら精霊魔法はやっかいだ。今の内に弓で――!」
しかし、ピニャは彼女らに続いて3人目に降りてきた少女に驚いた。
「あ……あれは…ロウリィ・マーキュリー!!」
「あれが噂の死神ロウリィですか?」
「あぁ以前、国の祭祀で見たことがある」
「ここのミュイ様と変わりませんな」
「あれで齢900を超える化け物だぞ!使徒に魔導師にエルフ……何なんだ?この組み合わせは……本当に敵ならば――」
すぐにピニャは首を降って最悪の可能性を否定する。
(いや、ロウリィ達が盗賊の味方をしていればとっくに街は陥ちているはず…ということは彼らはまだ敵ではない)
周りの者我驚く中、ピニャは扉のついたてを外す。
(何用で来たかは知らぬが敵ではないのなら強引に仲間にするまでだ!!!)
そうしてピニャは勢いよく扉を開けた。
しかしその扉は突然、何かに阻まれてそれ以上開かなくなった。
よく見ると扉のへりを掌が掴んでおり、丈夫な木製であるにもメリメリとめり込んでいる。
「ヒッ!」
ピニャは思わず後ろに後退った。
そして千堂がヌッと姿を現した。後ろにはレレイ、テュカ、ロウリィを連れている。
「お嬢さん、そんな乱暴に扉を開けたら危ないじゃないか……顔にぶつかったらどうする」
そして千堂は堂々と扉を越えてイタリカに入城した。
「誰か今の状況を説明してくれます?」
千堂以外の全員がピニャを見た。
「妾………?」
ネオショッカー州 ネス湖底 ネオショッカー大神殿
ネス湖は日光が当たらないのでバクテリアが育たず、それに伴って魚などの水生生物がいない。
そんな死の湖、ネス湖底にはギリシャ風の神殿が建っていた。
神殿の中をゾル大佐によく似た軍服を纏い、ヤモリの絵が刻印された眼帯をつけた男が大きめの箱を抱えて神殿奥の巨大な魔神像に向かう。
「ネオショッカー大首領様、貴方様のお好きな人間の耳が届きました。今回はゲルダム州産のようです」
魔神像にひざまずくと魔神像の中に眠る自身の主人、B26暗黒星雲から来たドラゴン型巨大宇宙大怪獣 ネオショッカー大首領に報告する。すると像の巨眼が赤く光り、ネオショッカー大首領が反応する。
「ふむ、そこに置いておけ」
ネオショッカー大首領は魔神像から答える。そして男は魔神像に箱ごと供えると「失礼しました。」と神殿から出ていこうとする。
「待て、ゼネラルモンスターよ。異世界には余程の身の程知らずがいるようだな?」
「ええ、帝国の蛮族共はなかなか降伏しようとしませんね。戦力差を理解しているのでしょうか」
「違う!!帝国のことではない!!!」
ネオショッカー大首領に一喝され、ゼネラルモンスターはたじろぐ。
「ゼネラルモンスターよ、余は怒っているのだ……確か日本国とかいったな?彼の民は我らショッカーを相当に侮辱しているそうではないか?」
ゼネラルモンスターは黙って聞く。
「彼の世界のことは工作員を通じて入ってきておる。マスコミが我々のことをどう民衆に伝えているかもな!『恐怖の独裁国家』?『倫理観が欠落した狂人集団』?ふざけておるのか日本は?」
この時、日本のマスコミの反ショッカー報道はピークに達していた。ショッカーが周辺の村々を占領した際は『ショッカー、村民を虐殺!!』、『村民の強制連行!』などとありもしない戦争犯罪を報道していた。これを知ったショッカー外務省はアルヌスを通じて日本政府に抗議して非公式に政府が謝罪したがマスコミ側は報道の自由を盾に一向に変わる気配を見せない。それどころか最近は先程のように誹謗中傷に近い内容を垂れ流していた。
「それに自衛隊はアルヌスから出ず、帝国と積極的に戦おうとしない。
それに奴らが現れたせいで本来とっくに終わっていたはずの帝国戦に大幅な遅れが生じている!」
ショッカーは日本国とは友好ムードを構築することを至上命題とし、日本と日本世界の国々に警戒されないように注意を払っていた。しかしそれが原因で当初の対帝国戦のプランから大幅に遅れていた。警戒されないようにすることに重点を置きすぎているため、大規模な帝国領内侵攻ができずにいたのだ。
「嘆かわしい限りです。本当なら今頃、人民の入植が始まって人口問題も解決していたはずなのに……」
「その通りである!人口問題解決の為には対帝国戦に時間をかけていられない!!日本が対帝国戦の障害になるなら日本世界ごと征服すべきである!!!」
後にネオショッカー大首領は世界統治委員会の中で日本に反感をもつ同志達を集めて「対日強硬派」と呼ばれる派閥を誕生させるのだった。
後書き
次回予告
ピニャから依頼されて盗賊団からイタリカを防衛することになった千堂達。しかし人数が足りずに増援を呼ぶ……
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